第3回「問題意識を身に付け、業務フローを業務改善の材料に」

問題意識とは ~問題意識の高い方、低い方~

株式会社カレンコンサルティング 取締役 渡邊 清香 氏

株式会社カレンコンサルティング 取締役 渡邊 清香 氏

はじめに、問題意識について述べます。

時代の変化が激しい今日は、常に向上心を持ち、日々改善に取り組んでいかないと取り残されてしまいます。多くの企業で、発生した問題を解決するために“改善活動”が展開されています。また、人材採用では問題意識を持った人材が重宝されています。

しかし、「問題意識を持つように」と言われ、皆さんはすぐに問題意識というものを持つことはできますか。「それができたら、苦労をしない」、「問題意識を持つためには何をしたらいいのだろうか…」と思う方もいることでしょう。

問題意識とは、次のような視点を持つことで高めることができます。

問題意識を高めることができる要素

(1) 現状に常に不満を持つ(向上心)

(2) 現場を観察する癖を持つ(注意力)

(3) 仕事に対する熱意を持つ(使命感)

(4) 他にもっとうまいやり方はないか考える(好奇心)

(5) 常識・暗黙ルールへの疑問

(6) 問題とは何かを常に考えている

(7) 失敗を二度と起こさない(再発防止) 等

以上は、代表的なものですが、これらを日頃から意識していることで、問題意識を高め、身に付けることができるようになります。

では、問題意識を持てない理由は何でしょうか。

問題意識を持つをこと妨げてしまう要因

(1) 現状に満足している

(2) 仕事に目的を持てない

(3) 従来の仕事のやり方に慣れている

(4) 今さら言っても始まらないと思っている

(5) 不平不満を言うだけ

(6) 言われたこと以外は仕事ではないと思っている

(7) 環境変化に気付かない

(8) 目標がない

(9) 仕事の具体的なイメージが持てない

(10) 問題の発見方法を知らない 等

以上のようなことが、問題意識を持つことへの妨げとなってしまいます。

 

問題意識を身に付けるためには

めまぐるしい毎日を過ごす中で、問題意識を持ち続けることは大変です。ふと振り返ったときに、時間の経過に流されている自分に気付くこともあるでしょう。

ここで重要なことは、問題意識を持つことを習慣付けることです。そのための第一歩として、目標や目的を設定すると良いでしょう。理由は、設定した目標や目的を達成するためには、どのような行動や判断をしたらよいか考える必要が生まれるからです。具体的には、現場を観察して適切な判断をとることや、より効率的に、よりやりやすい方法を考えてから行動に移すことや、同じ失敗をしないように行動することなどが考えられます。これは、先述した問題意識の高める視点に等しいことです。

 

問題発見の妨げ…的外れな問題発見をしないために

問題意識を身に付けることができると、いろいろと見えてくることがあります。たとえば、「自分の目標を達成するためには、今のやり方では効率が悪く、業務の質も悪い。違うやり方を考えないといけない。」と思ったりします。この場合、なぜ、今のやり方をしていると効率が悪く、結果として業務の質も下げてしまっているのか、その原因となる問題を発見しないといけません。そして、その原因を解決できる違うやり方を考えていきます。ここで大切なのは、的を得た問題を発見することです。的外れな問題を発見してしまうと、解決策も的外れなものとなり、何も解決されません。ひどいときには、余計な業務プロセスが増えてしまうなんてことも起こります。表層的な、一時的な問題ではないか、よく確認をする必要があります。

他にも、注意をしなければならないことがあります。それは、問題を発見できても、その問題は自分では解決できないものだから自分の問題ではないと判断し、目を背けてしまう。権限がない・マニュアルがない・明確な指示がない等の他責で理由づけ、何もしない。決めつけて物事を見てしまう。固定概念を捨てきれない等で何もしない。というようなことが起きないようにすることが求められます。

問題を発見するためには、自責で物事を観察し、決めつけや固定概念を捨てることが必要です。これは、問題意識を身に付けるために大切なことと共通しています。

 

業務フローを見ながら、問題を洗い出す

業務改善をするために、業務上の問題を書き出していく場面を思い浮かべてください。

まずは、業務改善をしたい業務を思い出すでしょう。そして、よくミスが起こる業務プロセスや、やりにくいと感じている業務プロセスが頭に浮かんでくるでしょう。私たちは、その浮かんできたことを付箋紙などの紙に書き出していくでしょう。

果たして、このとき、どれだけ鮮明に日常の業務を思い出すことができているでしょうか。毎日行っている業務の、すべての業務プロセスをきちんと思い出すことができているでしょうか。たまに行う業務の場合は、どうでしょうか。「こうだったっけ?」、「あぁだったっけ?」と記憶が定かではないことのほうが多いのではないでしょうか。

業務改善を目的とした業務の問題を洗い出すときに有効なツールが、業務フローです。なぜなら、日頃行っている業務の流れが見えるように可視化してある業務フローを使うことで、より鮮明に業務プロセスを思い出すことができるからです。また、業務の全体のどこの業務プロセスを指しているのかわかるからです。

業務フローを材料に、日頃の業務を流れに沿って確認してください。何気なく流れていると思っていた業務プロセスも、可視化されていることで流れがおかしいことに気づきます。昔からやってきたことだと言って、何気なく行っている業務プロセスが本当に必要な業務プロセスなのか疑問に思えてくることもあります。業務フローを活用することで、より具体的に問題を発見することができるでしょう。また、他部門の業務に対しても、業務フローを見ながら話ができることで、コミュニケーションが図れて、客観的な問題もより顕在化するでしょう。

図1:業務フローを見ながら問題を洗い出す

図1:業務フローを見ながら問題を洗い出す

業務改善で使える業務フローは、業務プロセスを分解して細かく書いてあるものに限ります。大きな括りで書かれている業務フローでは、問題を洗い出すときには活用することができません。なぜならば、細かい業務プロセスにこそ属人的なやり方やちょっとした工夫があるからです。これは、業務プロセスを分解してはじめて見えてくる部分です。

問題を洗い出すときには、自責で書き出していくことが大切です。たとえば、「情報が流れてこない」ではなく、「管理部門からの社内通知が共有されていない」等です。他の人が見たときにも、「誰が何をどうしたか」ということがわかるように問題を洗い出していきます。また、問題を洗い出しているのに、解決策を書き出してしまうことがよく起こります。問題と解決策をセットで考えてしまう気持ちはよくわかりますが、ここでは問題と解決策は分けて考えていきましょう。解決策は、洗い出した問題を分析してから考えます。分析した結果によっては、問題と解決策が一対一になるとは限りません。

 

まとめ

業務プロセスを細かく書き出した業務フローを使ことで、より具体的かつ客観的な問題を見える化することができます。さらに、ここに問題意識を持ち、自責で考える習慣付けができたなら、的を得た問題を洗い出すことができるようになります。これは、業務改善に限らず、日常の業務を遂行していくうえでも求められるスキルです。まずは、身近な業務を他責や決めつけ、固定概念を取り払って、自責で確認してみてください。意外な問題が、潜んでいるかもしれません。

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本記事の執筆者
株式会社カレンコンサルティング 取締役 渡邊 清香 氏

株式会社カレンコンサルティング

カレンコンサルティングはPlanだけでなく、未来永劫に企業組織が自走できる自立的な組織構築を目指しています。 社員間、社員と経営者の関係性、信頼関係等も重視し、継続的に成長し続ける企業や組織であるためにハード/ソフトの両側面からPDCAの全ての工程に責任を持って関わっていきます。 理論的な知識情報だけに終わらせることなく、実存的な経験情報に基づきご支援をいたします。しかし、そこには明確なアカデミックな原理原則と根拠、方法論を示しながら、組織の学習サイクルにフィードバックしていき定着をはかります。


株式会社カレンコンサルティング
取締役 渡邊清香(わたなべ さやか)


【プロフィール】
  • 新潟大学経済学部経済学科卒業
  • 2005年:株式会社ピーエイ(東証二部上場)入社。事業計画策定、IR業務、決算説明会/株主総会資料作成等)、社内業務コンサルティング、人事制度構築、文書管理システム構築、社内会議体(経営会議、営業会議等)の運営等。
  • 株式会社テムズ :マーケティングコンサルタント 、広告媒体の効果測定、マーケットリサーチ/アナリシス 等
  • 中堅テレマーケティング会社 :経営企画室、コンサルティング事業部 コンサルタント。
  • 2009年:株式会社カレンコンサルティングを設立、同社 取締役。企業の経営・業務コンサルティング、プロセス・制度設計等に携わる。
【著書】
【連載記事】