
フローチャート(フロー図)には、業務手順、担当者間の受け渡し、システム処理、データの流れなど、表したい内容に応じて複数の種類があります。
ただし、「何を表す図なのか」という用途と、「どの記号・ルールで描くのか」という表記法は別のものです。ここを分けずに選ぶと、作成者には分かっても読み手には伝わらない図になりがちです。
この記事では、代表的な6つの表記法の特徴とサンプルに加え、目的に合うフローチャートの選び方を解説します。
フローチャートの種類は「用途」と「表記法」を分けて考える
フローチャートを選ぶときは、最初に「何を可視化したいか」を決め、その後で表記法を選びます。たとえば、担当部署をまたぐ業務の流れを共有したい場合と、システム内のデータ移動を整理したい場合では、適した図が異なります。
※スマートフォンでは、表を横にスクロールして確認できます。
| 表記法 | 主な用途 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 日本産業規格(JIS) | 処理手順・アルゴリズム | 処理や判断の順序を統一記号で示す | 担当者や部門間の受け渡しは表しにくい |
| BPMN | 業務プロセス | 部門・関係者をまたぐ業務の共有や分析 | 詳細に描くほど記法の学習が必要 |
| データフロー図(DFD) | データの流れ | システム分析や要件定義 | 処理の時間順序を示す図ではない |
| NOMA方式 | 事務手順 | マニュアルや業務改善 | 説明文が多いと図が大きくなりやすい |
| 産能大式 | 詳細な事務工程 | 帳票を含む細かな業務手続の整理 | 記号とルールの習得が必要 |
| 業務フローチャート | 社内業務の共有 | 現場への説明や改善活動 | 独自ルールに偏ると他部署へ伝わりにくい |
迷った場合は、読み手が理解できる範囲で最も簡単な表記法を選びます。図を精密にすることより、目的と読み手に合っていることの方が重要です。
【1】日本産業規格(JIS)

JIS X 0121:1986「情報処理用流れ図・プログラム網図・システム資源図記号」では、処理、判断、入出力などを表す記号が定められています。処理手順やアルゴリズムを、共通の記号で表したい場合に向いています。
JISの正式名称は、2019年7月1日の法改正により「日本工業規格」から「日本産業規格」に変更されました。JIS X 0121という規格番号と、1986年版である点は変わりません。
業務フローに応用することもできますが、担当者、部門、顧客との受け渡しまで表したい場合は、BPMNやスイムレーン型の業務フローチャートの方が適しています。
1)フローチャートの書き方
http://www.ced.is.utsunomiya-u.ac.jp/lecture/2005/prog/common/flow_guide.pdf
3)ざっくりわかる!プログラミングのためのフローチャートの書き方
【2】BPMN形式

BPMN(Business Process Model and Notation)は、業務プロセスを共通の記号で表す国際的な表記法です。業務の開始と終了、担当者や部門の役割分担、判断、例外処理、顧客や外部組織とのやり取りなどを表現できます。
OMGが公開している正式仕様の現行版はBPMN 2.0.2で、ISO/IEC 19510としても標準化されています。業務担当者とシステム担当者が同じ図を使って認識を合わせたい場合に適しています。
- 概要レベルから詳細レベルまで、目的に合わせて表現できる
- 部門や関係者ごとの役割をスイムレーンで分けられる
- 詳細なモデルは要件定義やBPMシステムへの連携にも利用できる
モデリングについては3つのレベルが想定されており、目的により使い分けることができます。
- レベル1 主な業務(正規系の業務)の流れを表現し、業務フロー図として、俯瞰的な検討を主目的とするレベル
- レベル2 イレギュラーな業務の流れも含め業務を詳細化し、シミュレーションなどによる定量な分析を目的とするレベル
- レベル3 上記レベル2に加え、プロセスデータや外部システムとの連携を考慮し、プロトタイピングや実装を目的とするレベル
【3】データフロー図(DFD)

情報システムを通るデータの流れをグラフィカルに表した図です。データを処理するプロセスを丸(バブル)で表すため、バブルチャートとも呼ばれています。1970年代後半に提唱されてから現在まで、その歴史は古いです。
使用用途・目的としては、構造化システム分析・設計などで用いられます。
作図上の特徴としては、下記が挙げられます。
- 対象業務の範囲を点線の楕円で示し、その業務が外部の組織・ひと・もの・システムとどうつながっているかについて明らかにします(楕円の内側が対象業務の範囲となります)。
- データフロー図は「プロセス」(円または角丸の多角形)、「データストア」(2本の平行線)、「ビジネス上(または他のシステム)の外部実体」(四角形・楕円)、それらを結ぶ「データフロー」(矢印線)から構成されます。
- 記法、ルール(例:プロセスは、データに何らかの変更を加え出力しなければならない 等)が存在します。
- システムの入力と出力がどんな情報なのか、データがどこから来てどこに行くのか、どこに格納されるのかを示すものであって処理の順序・タイミングを示すものではありません(互いに影響する関係にない処理の並行性は表現します)。
データフロー図 – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/データフロー図
DFD(でぃーえふでぃー) – ITmedia エンタープライズ
https://www.itmedia.co.jp/im/articles/0602/14/news089.html
データフロー図 (DFD) の概要
https://www.ogis-ri.co.jp/otc/swec/process/am-res/am/artifacts/dataFlowDiagram.html
1)超上流から攻めるIT化の事例集:要件定義:IPA 独立行政法人 情報処理 …
https://www.ipa.go.jp/sec/softwareengineering/tool/ep/ep2.html
2)データフロー図(DFD) – SE学院
【4】NOMA方式フローチャート

工場の工程分析表をもとに元日本経営協会(NOMA)理事の三枝氏がまとめた作図方式です(したがって、NOMA(方)式と呼ばれます)。フローチャートの知識がない、馴染みがないという方にとって、NOMA方式の簡単な記号と説明文の組み合わせは読み易いと言えるでしょう。
使用用途・目的としては、事務フロー、マニュアル、業務改善、上場申請書類の「Ⅱの部」 の業務フローなどで用いられます。
作図上の特徴としては、下記が挙げられます。
- 縦書きのフローで、工程を“上から下”の流れで表現します。
- 記号の種類が少なく、覚えるのにそれほど時間が掛かりません。(記号が少ない分、説明文の追加が必要となるというデメリットがあります。)
2)NOMA式モデリングテンプレート | QPR ProcessDesigner
【5】産能大式

日本で一番歴史があり、一番有名とも言える業務フローの作図方式です。2008年の内部統制制度化以前は、上場申請書類の「Ⅱの部」 の業務フローを作成するのに欠かせない作図方式でした(内部統制制度化後、より簡便な業務フローの作図方式が普及していきました)。記号やルールを覚えるのに苦労しますが、マスターすれば余計なコメントなどを記載せず、記号だけでフローチャート図が書けてしまう点がメリットです。
使用用途・目的としては、事務フロー、マニュアル、業務改善、システム分析等、幅広い目的で活用されています。粒度の細かい事務作業や業務手続を書き表すのに適していると言えるでしょう。
作図上の特徴としては、下記が挙げられます。
- 横書きのフローで、工程・時間経過を“左から右”の流れで表現します。
- 記号(図形)は大きく分けて「工程記号」「帳票記号」「現物記号」の3つ + 「線」(接続線)の区分が存在します。(「工程記号」には4つの基本形があり、基本形に色・マーク・向き・二重化などの特徴を施し、定義づけされた「詳細記号」の形となります。)
- 帳票記号の書き方が特徴的です。はじめてフローにあわられた帳票は“大きな四角”、二度目以降に現れた帳票は両端が丸い“短冊型”で表現。この使い分けによって、どこで新規帳票が作成され、それを使って回付や追記されている流れが明確になります。
2)業務フロー.産能大式[業務フロー図] – 株式公開入門Navi
【6】業務フローチャート形式

業務フローチャートの特徴としては、どの図形がどんな意味を持つのか覚えなくてもよい、または考え込ませないといった、読み手のスキルに合わせたシンプルな構成になっている点です。
実は業務フローチャートの書式としては、これと言った定められた共通ルール的なものはありません。
一番単純なものは、使用する図形は四角い図形のみで、それらを接続線で結ぶだけのフローチャートで作られていたりしますが、判断図形やシステム図形、他プロセスへの接続図形など数種類の図形を追加した形で作り上げていく記述ルールがよく採用されています。
目的別に選ぶフローチャート
簡単な手順や判断の流れを表したい
処理と判断を中心にした一般的なフローチャート、またはJISの記号を使います。読み手が記号に不慣れな場合は、図形の種類を増やしすぎず、各工程に短い説明を入れます。
複数部門の役割分担や受け渡しを表したい
BPMNまたはスイムレーン型の業務フローチャートが適しています。部署や担当者ごとにレーンを分けることで、誰が何を行い、どこで仕事を引き渡すのかを確認できます。
システム内のデータの流れを整理したい
データフロー図(DFD)が適しています。データの発生元、処理、保存先、出力先を整理できます。ただし、処理の順序や所要時間を示す図ではありません。
帳票を含む細かな事務手順を整理したい
NOMA方式、産能大式、または自社向けの業務フローチャートを検討します。社外共有や他部署展開を想定する場合は、使用する記号の凡例も付けます。
フローチャートの種類についてよくある質問
フローチャートには何種類ありますか?
分類方法によって数は変わるため、「全部で何種類」と一意には決まりません。この記事では、日本の業務やシステム整理で使われる代表的な6つの表記法を紹介しています。
初心者はどの種類から始めればよいですか?
四角形で処理、ひし形で判断を表す簡単なフローチャートから始めるのが現実的です。最初から記号を増やすのではなく、読み手が迷う箇所だけ表現を追加します。
JISとBPMNの違いは何ですか?
JIS X 0121は、主に情報処理の手順やアルゴリズムを共通記号で表す場合に向いています。BPMNは、担当者や部門、外部組織をまたぐ業務プロセスを表す場合に向いています。
業務フローには決まった書き方がありますか?
すべての業務フローに共通する一つの書き方があるわけではありません。重要なのは、目的、対象範囲、読み手、使用する記号の意味を最初に決め、同じ図の中でルールを統一することです。
【まとめ】フローチャートの種類と特徴
以上、代表的な6つのフローチャートの表記法を紹介しました。
選ぶ際は、最初に「何を可視化するのか」と「誰が読むのか」を決めます。そのうえで、目的に合う表記法を選び、同じ図の中で記号や粒度を統一してください。
- 日本産業規格(JIS)
- データフロー図(DFD)
- BPMN形式
- NOMA方式
- 産能大式
- 業務フローチャート(業務可視化・改善、内部統制)
迷った場合は、最も高機能な表記法ではなく、読み手が理解でき、更新を続けられる表記法を選ぶことをおすすめします。
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「フローを書けと言われたが、どのように書いて良いのか分からない」
「検索してみたけれどフローチャートと言っても種類が沢山あるみたい」
「どの記法が良いのか分からない」
「何種類のフローがあって、それぞれどのような特徴があるのだろう?」
「各フローはどのような人や目的に適しているのだろう?」