第1回「物流現場に業務フローがないのは何故か」
~物流現場の業務プロセスフロー事情~

 

・・・ある物流システム導入プロジェクト開始前の会話・・・

私=私(システムベンダー) ク=クライアント様

私:現行の「業務プロセスフロー」はありますか?

ク:「業務フロー」のことですか?

私:はい、既存の業務プロセスを記述したドキュメントです。

ク:ないですね。

以前WMSのリプレースメントプロジェクトの際にシステムベンダーさんが作成されたものはどこかにありますが、メンテナンスしていません。

私:何らかのドキュメントはありますか?

ク:「マニュアル」的なものなら幾つかあり、それらは今も使っています。

 

日常的な業務ほど、業務プロセスフロー化に対する現場の意識が薄れる傾向に

ITプロジェクトや業務改善プロジェクトを開始する際、多くの物流現場で直面する最初の課題が、現行の業務の流れを定義したドキュメントがないことです。

一般的に「業務プロセスフロー」と呼ばれているドキュメントですが、プロジェクトの対象となっている倉庫内の業務や、調達プロセス全般にわたる業務など、それぞれの範囲における業務を整理・分解し、具体的に誰が・いつ・何を・どうするのかということが記述されていることが求められます。

プロジェクト開始前に物流現場を訪問すると、ほぼどの倉庫にも非常に業務内容に精通した熟練者がいらっしゃいます。

プロジェクト開始前後にサイトビジット等でお伺いした際に、これらの方に倉庫内をご案内頂けると、非常に細かいレベルまで教えて頂けるので、一通りの業務内容を把握するのにとても効果的です。

但し、それらの業務内容を記述したドキュメントがないことが多いのです。

「サイトビジットの前に大枠を掴んでおきたい」、「サイトビジット後にも振り返りをしたい」という理由で、ご説明された内容が記述されたドキュメントを共有頂きたいという依頼に対する回答は、「ありません」ということが多くありました。

何らかのプロジェクトでも実行されていない限り、物流業務は日々の販売・調達・生産業務の一環で、常に活動が行われています。

熟練者を中心に適切に業務が遂行されている限り、これらの日常的に行われる業務を改めてドキュメントに落とすような必要性が特に現場レベルでは感じられることがないというのが、実際のところのようです。

 

業務プロセスフローとして代替物と、その網羅性についての課題

前出のクライアントとシステムベンダーとのやり取りは、プロジェクト開始前に頻繁に起こるやり取りの一例ですが、一部の業務範囲においては各種マニュアルが例外的に準備されている場合もあります。

例えば一部システム機能の操作手順書だったり、返品工程の再生処理の作業手順書だったり、非常にきめ細かい処理を必要としている業務で、実務にあたって参照すべきものが必要な業務については、システムベンダーや熟練作業員が予め用意することもあります。

しかしながら、これら「マニュアル」が対象とする業務範囲は非常に限定的で、例えば倉庫業務全般から見た場合の網羅性には欠けてしまいます。

私がこれまで多く携わってきたのは倉庫業務ですが、倉庫内で行われる業務は多岐にわたっており、またそれら前後の関連性も高く、複数の階層にわたって構成されています。

その中で「マニュアル」と位置づけられているドキュメントは、粒度の細かい部分を記載したものとなります。

 

業務の粒度と業務プロセスフローの位置づけ

表1:業務プロセスの階層と記述粒度の関係について

       記述粒度       記述単位例

第0階層   外部との関係性    事業間の物/情報/お金の流れ

第1階層   自社内の役割の関係性 販売と物流、調達と物流などの流れ

第2階層   業務概要        輸送、入荷、在庫管理、出荷、加工、包装など

第3階層   業務詳細        入荷検品、ピッキング、棚卸

第4階層以下 業務手順        検品再生作業、ソーター投入手順

表1は業務プロセスの階層と記述粒度について、倉庫業務を例にして記載したものです。

「マニュアル」の位置づけは第4階層以下となり、主に「手順」を記述したドキュメントです。

一方の「業務プロセスフロー」は第3階層以上の粒度でそれぞれ対象の業務を記述したドキュメントを指していますので、それぞれの位置づけは粒度の違うものです。

上記のように、物流現場では習熟困難な特定の業務においては手順書レベルのドキュメントを必要としている一方、通常業務・主要業務においては業務プロセスを記述したドキュメントは必要としていないということが、私がこれまでの経験上感じてきたことです。

 

業務プロセスフローがないことによる弊害を考えてみる

では、「物流現場に業務プロセスフローがない」ことで何が実際のところ困るのでしょうか。

実際、上記で記載したように、多くの物流現場では「業務プロセスフロー」が無い状態でも業務は実施されており、企業活動は継続されています。

ここで立ち返りたいのは、「何故、物流現場は変わらないのだろう」、更には「何故、物流現場ではカイゼンが思うように進まないのだろう」という「始めに」で投げかけた疑問です。

「業務プロセスフロー」の存在が、これらの問いに対する何らかの答えを導いてくれるのではないか。

ここ何年間はそんな感覚を元にプロジェクトを組み立てクライアントと共に取り組んできました。

 

次回のコラムでは、実際のプロジェクト現場で「業務プロセスフロー」が無いことによりどんな弊害があるのかについて体験をベースに書いてみたいと思います。

→ 第2回「業務フローが無いと何が困るのか(1)」

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本記事の執筆者
株式会社イノベーティブ・ソリューションズ

株式会社イノベーティブ・ソリューションズ

ITコンサルティングとソフトウェアの提供サービス、また、ウルグアイの製品であるジェネクサスという開発ツールを使ったシステム開発を行い、独自のソリューションを作ってユーザーに提供しています。コンサルとITを融合したサービス提供会社です。


木下 雅幸(きのした まさゆき)
株式会社イノベーティブ・ソリューションズ 取締役

【得意分野】
・物流・製造
・サプライチェーンマネジメント