問題がないのではなく、問題意識がない!
業務改善はトップダウンで行われることが多いものです。
「業務改善をやれ!」と社長や経営陣に指示されることで業務改善プロジェクトは動き出ます。最近では「RPAを導入しよう!」「働き方改革!」のようなビッグワードが業務改善に先行して掲げられるケースも多くあります。
ところが、いざ業務改善を始めようとしても、何から始めればいいの?どの業務をどう改善すべきか?採算は取れるだろうか?と悩みは尽きません。
改善すべき対象を把握するために多くの会社が現状調査を行うのですが、問題は見えない・・・。では現場の実務担当者に直接話を聞けば問題が分かるだろう、ということでヒアリング調査をします。
そこで出てくるのは・・・愚痴の嵐。
「課長の指示の仕方が悪いんだよ」
「取引先の担当者の話し方に腹が立つ」
「隣の部署の声がうるさい」
などなど。
業務改善の対象となりそうな話はなかなか聞けそうもありません。(職場環境の改善余地はありそうですね!)
実は、業務の実務担当者は必ずしも具体的な問題を意識して仕事をしているわけではないのです。ですが、それは「問題がない」ということではありません。問題が潜んでいる業務を、問題とは認識せずに行っている場合がほとんどです。
よく見かけるのが、伝票を手で起票して、それを入力するような業務。
「どうして直接入力しないでわざわざ起票しているのですか?」と聞けば、
「そのように引き継いだから」と返ってきます。
あとで調べたら、その伝票はシステムが導入される前の業務の名残で、特に何の証憑(エビデンス)にもなっていませんでした。このように、本来必要のない業務を、なんの疑問も抱かずに習慣としてやり続けているケースが数多くあります。
会社の中には、改善されるべき業務がたくさんあるのです。業務改善の必要が無い、という会社は有り得ません。なぜならば、仮に完璧に業務改善を行ったとしても、改善された状態を維持し続けることは非常に困難だからです。組織変更や人事異動などの内部事情の変化、取引先の増加や取引条件の変更といった外部事情の変化など、さまざまな理由によってビジネスは変化します。そうしたビジネスの変化への対応の中で、業務プロセスが非効率化したり煩雑化したりします。業務は変わり続けるため、業務改善も常に必要となるのです。
しかし、実務担当者に問題意識がなければ、ヒアリングしたとしてもこうした業務上の問題は出てきません。そもそもヒアリングに対してネガティブなイメージを持たれているケースもあります。根掘り葉掘り聞かれて、結果的に仕事を取られてしまうのではないかとか。それこそ犯人の取り調べみたいで雰囲気が悪いまま進むこともあります。そのようなヒアリングでは尚更、問題を把握することは難しくなってしまいます。
問題の把握をするために大切な3つの観点
それでは、業務改善をはじめるにあたって、問題をどうやって見つければ良いのでしょうか。ここでは問題把握に必要な3つのポイントをお教えします。
1.業務をもっと短い時間でできないか?(効率化)
効率化は「インプットを変える」「スループットを変える」「アウトプットを変える」ことで実現します。
例えば、システムに受注内容を入力する業務があり月に50時間かかっている場合、
・システムの設定の変更で入力項目を削減できないか(インプット)
・工程を省略して生産性を上げられないか(スループット)
・作成する帳票を減らすことはできないか(アウトプット)
等の観点で確認をします。業務上求められるアウトプットの「量」と「質」を意識することで、効率化の余地を見つけていきます。
効率化によってもっとも恩恵を受けるのは「負荷の高い業務」です。例えば同じく「業務の時間を5%削減する業務改善施策」であっても、負荷の高い業務と負荷の低い業務ではその投資対効果はまったく変わってきます。せっかく業務改善に取り組むのであれば、効果の大きい業務を対象にしたいですね。
この業務は今どれくらいの時間をかけて行っているのか、どういうインプットが必要でアウトプットはなにか、時間のかかる手順や手間のかかる手順はないか、等を確認していくことで効率化の余地を探します。
2.業務をもっと簡単にできないか?(簡素化)
業務改善と言えば、どうしても効率化の話になりますが、実は、簡素化もポイントなのです。では、なぜ簡素化が重要なのか。それは、業務を簡素化することによって、高スキルの人から低スキルの人にシフトできるからです。
例えば正社員のやっていた業務をパート・バイトへ移管する、外部のアウトソーシング業者へ委託する、もしくはRPAやシステムへ移管して自動化する・・・。これらの改善施策は、「複雑な業務」のままでは実現できません。簡単な業務へと変えていくことで、業務改善の施策の幅が飛躍的に広がります。
業務調査をすると、本来は簡単な業務をわざわざ複雑な工程で取り組んでいるようなケースも存在します。業務マニュアルの作成や整理を行うだけで簡素化ができる場合もあります。
今の業務はどのようなプロセスで行っているのか、実務担当者は誰か、他の人が(たとえば新入社員が)同じ業務を遂行出来るようにするにはどうすればいいか、それらを確認することで業務簡素化の余地を探っていきます。
3.今の業務は本当にやらなければならないのか?(廃止)
業務の優先順位がわからず、「今やらなくても良いことをやっている」場合はありませんか?また、コアな業務とノンコアの業務の区別がなく、「ノンコア業務に追われてコア業務の時間が圧迫されている」場合はありませんか?
不要な業務を廃止する、というのは最も簡単でかつもっとも効果の出やすい業務改善です。
ビジネスの変化によって既に必要なくなっている資料を作り続けていたり、目的が形骸化した会議を毎月招集していたりと、業務が「習慣」になってしまうことで目的を失った後も業務だけが残ってしまうケースがあります。業務の目的は何か、成果物は何か、その成果物を使っている業務は何か、を確認することで、不要な業務を発見できるかもしれません。
いかがでしょうか。上記の3つのポイントを意識するだけでも、現状調査やヒアリングが業務改善にとって有意義なものへと変わっていくはずです。