第3回「クリティカル・パスを導出する」

クリティカル・パスを導出する

仰星マネジメントコンサルティング株式会社 金子彰良 氏

仰星マネジメントコンサルティング株式会社 金子彰良 氏

前回(第2回「プロジェクト目標を設定する」)に引き続き、連載3回目の今回は、決算早期化作業の課題設定の中で最も重要な「クリティカル・パスの導出」について説明します。

 

 

 

早期化作業とQCD

一般に製造業でいうQCDは最終的なアウトプットである製品に対して、企業内の各部門が 品質 (Quality)、コスト (Cost)、納期 (Delivery) に対して責任を持ちます。

このQCDに照らして「決算早期化」というプロジェクト活動を考えますと、最終的なアウトプットである財務情報・開示情報に対して、親会社経理を中心として、これら情報の生成に関わる全てのグループ内関係者が、その有用性(品質)と適正な体制(コスト)を確保したまま、決算日から決算発表日等の目標日までの所要日数(納期)を短縮することに焦点をあてた活動であると言えます。

 

早期化上の課題とは

この日数を短縮する=業務のスピードアップを図るという観点で業務を分析し、どのプロセスがボトルネックになっているかをとらえるのが決算早期化の課題設定の特徴です。

自社の業務に精通している人が「この業務に問題がある」と言っても、詳細に分析してみると決算作業全体からは改善による日数短縮の期待効果は出ないプロセスであったり、多くの関係者にヒアリングをして色々な問題を抽出しても、同じように日数短縮に結び付くものはその一部であったりします。

もちろんこうした「特定プロセスの問題」「総花的な問題」も先の業務品質やコストの観点からみれば課題となるものが含まれていると思います。しかし、プロジェクトの目的は「早期化」ですので、優先順位を考慮せずに、その目的に適合しない課題も一緒に取り組むことはプロジェクト運営上、非効率なものとなります。

それでは偏りなく、また手戻りがないように、ボトルネックとなっているプロセスを特定するにはどうすれば良いでしょうか。

 

PERT図の活用

決算作業の一連のプロセスも人の「アクティビティ(作業)の連鎖」です。

早期化の課題設定の特徴からは、

  1. 決算がどのようなアクティビティの連鎖からできているか
  2. それぞれのアクティビティの所要期間(時間)はどのぐらいか
  3. 決算作業全体の中でどのつながりが最も重要な連鎖(クリティカル・パス)

となっているかをおさえることが必要になります。

このクリティカル・パス上に決算の遅延要因となっているアクティビティがありますので、その原因を分析し期間短縮すれば、全体としても期間短縮の期待効果を見込むことができます。

言い換えれば、いくらクリティカル・パス上にないアクティビティを改善しても、全体の期間短縮には寄与しないことになります。

このアプローチは一般にプロジェクトマネジメント分野で「クリティカル・パス法」と呼ばれるものをベースにしています。弊社ではクリティカル・パス法の一つであるPERT(Program Evaluation and Review Technique)分析で使用されるアロー・ダイヤグラムを、決算作業の可視化とクリティカル・パスの導出に応用しています。コンサルタントが実際のプロジェクト現場で改良を加え、その有効性を確認してきた言わば『手技法』です。

業務を可視化する(ドキュメントを作成する)作業には、一定の時間とコストがかかります。しかし、万が一クリティカル・パスをおさえずにプロジェクトを進めた場合に手戻りが発生したり、目的を達成できないリスクを考えれば、必要な作業ステップではないでしょうか。

 

次回最終回は今回の続きで、PERT図を使用して目標と現状のギャップを把握し、課題設定へのつなげ方をお伝えしたいと思います。

(仰星マネジメントコンサルティング 金子)

 

→ 第4回「目標と現状のギャップを把握する」

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