第5回 物流サービスの変化 ~物流業界を取り巻く環境の変化~

人口減少時代の始まり

今年に入り、各省庁から相次いで日本が人口減少社会に突入したというレポートが発信されました。

世界でも例を見ないスピードでの人口減少と高齢化が進む国として、海外からもその動向と対策が注目されています。

生産年齢人口(15歳から65歳まで)は総人口の減少に先んじて2008年をピークに減少に転じており、多くのビジネス現場では既に影響が浮き彫りになりつつあります。

物流業界への影響も顕著です。

「倉庫に人が集まらない」、「ドライバーが不足している」という声を聞くことが多くあり、更には「賃金が高騰していて、少し残業が嵩むと利益が吹っ飛ぶ」などの悩みを吐露される関係者もいらっしゃいます。

総人口の人口増減数及び人口増減率の推移

総人口の人口増減数及び人口増減率の推移


出典: 総務省統計局(http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2014np/


年齢3区分別人口の割合の推移

年齢3区分別人口の割合の推移

出所: 総務省統計局(http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2014np/

 

物流サービスの高度化

人不足、賃金の高騰などの課題に加え、物流業界はアマゾンショックとも言われるEコマースの増大による課題も突き付けられています。

防災グッズセット、スポーツウォッチ、ツアー旅行券、水、コーヒー豆、事務用品各種、作業机と椅子、花、生鮮食品、靴、ワイン・・・。

ここ数年で私自身がネットで購入したものを上げてみました。

中には温度帯指定の商品もあり、大きなものや小さなもの、精密機械など取り扱いに注意が必要なもの、単価の高いもの低いものなど様々です。

また、日中の受け取りは出来ないため、夜の時間帯での納品指定を行うこともあれば、自宅近くのコンビニで受け取ることもありました。

更には、何らかの理由で返品してしまった商品もありますので、その際には宅配業者に引き取りに来てもらったこともあります。

さて、上記のような購買活動を支えるための物流サービスには、トラック、情報端末、倉庫、国内および海外ネットワークなどのハードアセットに加え、ありとあらゆる情報システムなどのソフトアセット、そして何よりも様々なレベルでのヒューマンアセットが必要です。

人口が減少するという社会現象としてのマイナス面を抱えた中、ますます複雑化する物流業務に対し、どのように取り組んでいくのか。

物流という業務が運営上不可欠な業務である企業にとっては、まさに生き残りをかけて取り組むべき課題となっています。

2020年予測は東洋経済(東洋経済ONLINE 2016年8月15日)

2020年予測は東洋経済(東洋経済ONLINE 2016年8月15日)

(出所)経済産業省

 

賃金を上げても人は集まらない・定着しない

人手不足を解消するためギリギリの線まで賃金を上げて募集をしてみるも、他業種との奪い合いとなり、思うように人が集まらない。

また採用できた場合でも、常に奪い合いの環境にあることには変わらないため、流出するリスクを抱える状態での運営を余儀なくされます。

また、日本人特有とも思える贅沢な悩みもあります。

これまで多数の国で物流システムの導入を経験してきましたが、日本人は海外の人と比較すると、教育レベルの高低に関わらず単純作業を嫌う傾向にあり、作業員レベルにあっても常に改善のネタを見つけてきます。

時にそれが部分最適であり、全体最適からするとマイナス要素を含むネタであったとしても、常に思考することを欲し、自身の価値を高める意欲が強いように感じます。

このため、海外で比較的見られるように、作業の単純化を進めて賃金の上昇を抑制したり人の確保を目指しても、日本では返って逆効果となることがあります。

 

人材の囲い込み・非正規労働者の正社員化など

 

「最高の人材を採用し、育成し、長期間働ける環境を整える。」

 

2014年にファーストリテイリングが従業員制度改革に乗り出した時の柳井会長の言葉です(クローズアップ現代 2014年6月11日放送)。

この改革では、全社で90%を占めるパート従業員を正社員化すると発表されました。

多くの人手を必要とする、労働集約型産業の代表のような物流業界にとっても、注目に値する取り組みと言えます。

人は「集める」時代から「育てる」時代に明らかに移行したと思われます。

 

日本における物流の社会的地位は向上するか

今から16年前の2000年、16年間暮らした豪州シドニーから日本に帰国後、常に疑問に思っていることがあります。

それは、「何故日本では「物流」の社会的地位が低いのか」という疑問です。

物流とは、物を扱う企業にとってなくてはならない業務であり、同業務の良し悪しが企業経営に大きく影響を及ぼします。

しかしながら、「物流コストは安くて当たり前」、「商品が納品されて当たり前」というような捉え方をされることもあり、必ずしも適正な評価をされてきたとは思えません。

しかし今、物流の重要性が再認識されつつあると感じています。

企業経営上、物流が見直されるきっかけとなったのはやはりアマゾンの存在があるのではないでしょうか。

アマゾンの神髄は物流基盤です。

物流基盤さえ整えば、その上に流通させる商品は何でも良いと言わんばかりに、今やアマゾンで買えないものは無いほどの商材で溢れています。

これまで比較的冷遇されてきた物流分野にどのような人材を確保できるか。

背景的に見ても物流ノウハウがある人材プールは日本では必ずしも潤沢ではなく、また物流バックグランドでマネージメント能力のある人材やシステム関連能力がある人材は更に手薄な状況です。

このような人材難の中でどのように人材を引き付けていくかというテーマは、トップマネージメントの重要なミッションの一つと言えます。

 

システム化の前に現場力の強化

人を「集める」から「育てる」に移行する前提には、「育てる」ことが出来る環境作りが必要です。

これにはトップマネージメントの強力なバックアップの元、イノベーター(改革者)の存在が必要になります。

このようなイノベーターの元、物流現場を「集めて」「処理する」業務から、「育てながら」「処理し」「改善する」業務に変革することにより、現場力が強化されていきます。

では、「現場力の強化」とはどのように行っていくのか、強化された現場はどのように今後の高度化する物流サービスに寄与していくのかという点については、次回のテーマとして触れてみたいと思います。

 

→ 第6回「高度化する物流サービスへの対策(1)」(予定)

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本記事の執筆者
株式会社イノベーティブ・ソリューションズ

株式会社イノベーティブ・ソリューションズ

ITコンサルティングとソフトウェアの提供サービス、また、ウルグアイの製品であるジェネクサスという開発ツールを使ったシステム開発を行い、独自のソリューションを作ってユーザーに提供しています。コンサルとITを融合したサービス提供会社です。


木下 雅幸(きのした まさゆき)
株式会社イノベーティブ・ソリューションズ 取締役

【得意分野】
・物流・製造
・サプライチェーンマネジメント