第4回 業務フローはだれが作るのか

さて、「業務フローが無いと何が困るのか?」という視点で業務フローの重要性を第2回第3回と書いてきましたが、今回はその重要なドキュメントを誰が作るのかというポイントを書いてみたいと思います。

 

・・・物流担当役員との打ち合わせ・・・

役=担当役員 部=物流部長

役:倉庫の業務プロセスをドキュメント化しておくことは次回のWMSプロジェクトを見据えても必要だ。早急に着手するように。

部:了解しました。

 

・・・上記を受けて物流部内での会話・・・

部=物流部長 セ=センター長

部:既存業務のプロセスフロー作りを行う必要があるが、適任はいるか?

セ:いますが、現業に追われてドキュメント作成に割く時間はありません。

部:外部ベンダーに頼むしかないかあ。

 

現業に忙しいリーダーたち

業務フローの整備は現在行われている業務プロセスを記述していくことから始まりますので、現業に精通している業務チームから人員が選定されると考えるのが普通のように思えます。

しかし、現実的にはそうならないことが多いのです。

倉庫内には大きく分けて、「入荷」、「格納・補充」、「補充・集品」、「流通加工・検品」、「積込・出荷」、そして「業務事務」などの工程があり、それぞれで持ち場ごとにリーダーが配置されていることが一般的です。

これらのリーダーたちは、それぞれの持ち場の業務が滞りなく行われているか、パートさんや派遣会社からの要員を管理しつつ、前後の関連業務との連携にも気を配りながら、品質と生産性を高める役割を担っています。

このような役割を担っている要員は必然的に業務に精通するようになり、日々現場レベルでの改善活動などにも力を発揮されていることが多く、会社からすると非常に心強い社員となっていると思われます。

往々にして問題となってしまうのは、これが裏目に出るケースで、「現場がリーダーなしでは機能しなくなる」状態を作ってしまうことです。

実際のところ、業務フローの整備や、WMSの導入プロジェクトなどが行われる際にも、これらの要員は大きな戦力になるはずですが、上記の例にあるように、「時間が割けない」といった状況になることが多くあります。

その結果、「外部ベンダーに頼むしかないかなあ」という上記のやり取りでのセンター長のコメントのように外部依存への流れが出来ていくというのをこれまで多く見てきました。

 

「属人化」のトラップ

上記のように、「現場がリーダーなしでは機能しなくなる」状況は業務の「属人化」に陥っている可能性が高く、時に改善活動を阻む要因になることがあります。

例えばこんなことがありました。

ある改善プロジェクトで、まずはAs-Is業務プロセスの整理のためにヒヤリングを開始したのですが、なかなか現場リーダーAさんが多忙で時間が取れず、情報集めが進まない。

しかしながら、特定の業務に関してはAさんがキーマンになっていて他の人は業務内容を把握していない、というような状況です。

倉庫における通常業務であれば特に深くヒヤリングすることなく現場視察で十分把握できることが多いのですが、イレギュラー業務などについては倉庫外の業務である調達や受注プロセス等と関連するケースも多く、より広範囲且つ詳細レベルで業務ヒヤリングする必要があります。

 

外部ベンダー+新しいリーダーの登用

会社側からしてみると、折角現場リーダーが育ったのに、それが返って「属人化」を生んでしまうというのは大きな損失です。

このトラップに陥らないためのポイントは、やはり業務プロセスを整理し、イレギュラー業務などを含めてドキュメント化するところにあると考えています。

しかも、これらをリーダーの元で行い、ドキュメント作成後もリーダーが維持・更新を行うことが改善活動を継続的に行う上で重要です。

では、実際のところどのようにリーダーの元でドキュメント化していくのか。

私の経験上、熟練した現場リーダーはデスクワークが比較的不得意だったり苦手だったりする人が多くいらっしゃいました。

このような現場で業務プロセスを整理しドキュメント化するには、プロフェッショナルの力が必要になります。

しかしながら、外部の力を借りて作ったものは往々にして早い段階で形骸化して活用できないドキュメントとなります。

折角作成した業務フローを維持し適時更新し、改善の土台としていくには、適性が合う新しいリーダー候補を選任し、外部ベンダーと共に作業を行わせることが一つの方法です。

 

取組の成功要因・失敗要因

クライアントの理解を得られ、選任されたリーダー候補と共に業務フローの作成に入ってからも色々と課題は出てきます。

物流は常に流れているため、リーダー候補たちを実務から完全に切り離すことは困難です。

また、コンサルタントやSE上がりの人たちは、業務プロセスを整理したりフローを作成したりすることに慣れてはいますが、物流現場に従事している人たちはそのような業務を行うことに慣れていないという点もあり、なかなかスムーズに進まないという経験も多々ありました。

比較的に取り組みがうまくいった例では、担当役員の号令の元、思い切ってドキュメント整備と改善活動の専任者を数名選任し、日々の現場業務からは切り離したクライアントの倉庫現場です。

この現場では選任された数名で改善チームが組織化され、生産性向上や誤出荷率低減などのKPIが設定され、取り組みが行われました。

また、この改善チームは1年ごとにメンバー交代が行われ、順次現場での実務経験とドキュメント作りを含めた改善活動とのバランスを取った育成方針を取られていました。

 

マネージメントレベルの「問題意識」

この例に挙げた会社は中堅の某物流企業でしたが、数年前から社員教育の一環で業務フローを作成する活動をされていました。

開始当時は、「自分の職場で行われている業務への理解促進のため」という名目でスタートしましたが、その背景には「団塊の世代の退職」や「リーダー層の転職」への懸念があったそうです。

その懸念への対策の一つとして取り組んだ「業務フローの作成」でしたが、やはり思うように業務フローの整備は進まなかったそうですが、一部の社員から部分的ではあるものの業務課題がミーティングで上がってくるようになったそうです。

実は、この「一部の社員」は現場では比較的目立たない社員であったため、それならば「ドキュメント作成の選任にしてしまおう」という思い切った登用をしたことが、上記のような取り組みを行うきっかけとなったそうです。

 

うまくいかなかった例と解決のキーポイント

一方うまくいかなかった例では、

現場のリーダー層の不足が理由で、結局は現場作業に従事してしまいドキュメント作りなどに時間が十分に取れない。

ドキュメント作りなどのデスクワークに興味が持てないため、ついつい現場業務に没頭してしまう。

上記の例に限らず、うまくいかない要因は単一ではなく複合的なものであることが通常ですが、「業務フローの整備」のような地道な活動を継続的に行うためにはマネージメントレベルにおける「問題意識」が一つのキーポイントとなっている気がしています。

前出の例に上げた企業における「団塊の世代の退職」や「リーダー層の転職」への問題意識は、少子化が進む日本国内においては今後より一層深刻化していくと考えられています。

このような課題に対して積極的に何かしらの手を打っている企業とそうでない企業とのギャップは今後より一層開いていくような気がしています。

次回のコラムでは、少し「業務フロー」から離れて、本文でも触れた「少子化」という社会的な環境の変化が物流業界に及ぼす課題やそれに伴う物流サービスの変化について書いてみたいと思います。

 

→ 第5回「物流サービスの変化」

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本記事の執筆者
株式会社イノベーティブ・ソリューションズ

株式会社イノベーティブ・ソリューションズ

ITコンサルティングとソフトウェアの提供サービス、また、ウルグアイの製品であるジェネクサスという開発ツールを使ったシステム開発を行い、独自のソリューションを作ってユーザーに提供しています。コンサルとITを融合したサービス提供会社です。


木下 雅幸(きのした まさゆき)
株式会社イノベーティブ・ソリューションズ 取締役

【得意分野】
・物流・製造
・サプライチェーンマネジメント