第2回 問題解決策を対処療法にしない

株式会社カレンコンサルティング 代表取締役 世古 雅人 氏

株式会社カレンコンサルティング 代表取締役 世古 雅人 氏

前回(第1回)の最後に、「私たちは多くの問題に直面する際に、現象として現れていることを問題だと錯覚しがちです。問題に対して対策を講じるのと、現象に対して対策を講じるのとでは、解決策が全く異なります。本質的な解決に至らないその場しのぎの対処療法に陥ってしまいます」と書きましたが、今回はその続編となります。

 

陥りがちな問題解決策

図1をご覧ください。問題発見として2つ挙げています。まず、問題①として「現場からの問合せが後を絶たない」、そして問題②として「時間がない」です。どこの組織においても「あるある」の問題かもしれませんが、これを例に問題解決として陥りやすい解決策を考えてみましょう。

図1 陥りがちな問題解決策

図1の右側に、2つの問題に対して、それぞれ3個と2個――解決策(らしきもの)が書かれています。ここで挙げられた解決策をご覧になられて、皆さんには「こんなの意味ないじゃん!」と思っていただきたいのです。もちろん、この5つの解決策全てがダメというわけではなく、場合によっては「これしかない」というものもあるでしょうが、その結論に至るまで熟考したかどうかが大事です。

「なぜ、問合せが発生するのか?」「なぜ、時間がないのか?」をきちんと考えなければなりません。

「考えるプロセス」=「原因分析」をスキップさせてはいけない

前回、「問題解決策は言葉の裏返し(=問題の裏返し)」を繰り返していると社員は馬鹿になり、思考停止人間ばかり増えてしまうと書きましたが、「昨今、どこの企業でも顕著に見られ、憂うべきことだと感じます。」

その原因の1つには、現場が常に時間に追われ、十分考えるだけの時間すらとれないという現状もあります。しかし、即座に答えを出さないといけないとなれば、安易な問題解決策になるのもうなずけます。ただし、ここで言いたいことは「考える時間が無いから考えない(考えることをやめる)」とならないでいただきたいのです。

時間がなくとも、経験豊富なベテランであれば「こうすればいいのでは?」が当たらずしも遠からずの解決策は比較的出てきます。また、問題に直面してから考えるのではなく、常に疑問を持ち、考え続けている習慣を身につけている人も同様です。この場合は経験や年齢問わず、問題解決のアプローチが上手で、解決策も1つではなく、複数出てくる場合も少なくありません。

図2のように、問題発見と問題解決の間に、「考えるプロセス」を入れる習慣づけをしましょう。これが後の業務改善における「原因分析」において、重要になります。原因分析をスキップさせると、ろくでもない解決策ばかり出てきます。

 

図2 「考える」ために「原因分析」が重要

 

便利な言い訳:「時間がない」を考えてみる

さて、図1の問題②で「時間がない」ということを挙げましたが、万国共通の便利な断り(言い訳)文句は今も昔も変わりません。

我々が企業のコンサルティングで業務改善のお手伝いをしていると、「時間がない」という言葉は、発言者の都合により表現や言い回しは少しずつ変化します。「時間がかかる」「手間がかかる」「めんどくさい」などです。
図3をご覧ください。

図3 「時間がない」を例に…近い表現・言い回しに注意

3つ挙げ、どれも似たようなことを言っているように聞こえますが、より掘り下げて聞く・確認をしていくと、表現や言い回しの微妙な違いを使った真意が見えてきます。

ここでは、「時間がない」ことの原因として、人のスキル・経験・知識・習熟度の差、システムや装置の不具合などを除外し、業務プロセスの視点で「原因分析」としてじっくり考えてみます。「時間がかかる」「手間がかかる」は業務フローがあれば一目瞭然でしょうし、業務プロセス上の問題であれば必ず解決策はあります。

しかし、3つ目の「めんどくさい」については、2つ目の「手間がかかるからめんどくさい」という理由以外は、本人の問題であるため、先の2つと問題と明確に切り分けができます。
この微妙な言い回しの違いを見落とさないようにしましょう。怪しかったら再度、確認をしましょう。そして次に考えるのは、「なぜプロセスが長いのか?」「なぜやり取りが複雑なのか?」と原因を掘下げていくことが求められます。これについては次回以降、詳しくお伝えします。

「現象」と「原因」を切り分ける

もう1つ、注意していただきたいことは「現象」と「原因」を切り分けるということです。

図4をご覧ください。ある工程で「時間がかかる」ことが問題のようですが、ここでは時間を全部で4つ(T1~T4)に分解しています。このように、どんな時間がかかるかのか?と分解をすることが重要です。

図4 時間がかかる種類と要因の切り分け

「時間がかかる種類が4つある」ということと、「時間がかかる要因」としても4つ、示しています。これら、「時間がかかる種類(図の上側)」と「時間がかかる要因(図の下側)」がお互いに複雑に関わり合っている場合がほとんどです。

図4では、図3で除外した“人の問題(仕事が遅い→個人のスキル、経験等)”を入れています。もちろん、“業務プロセス”の問題もあります。ここで書かれていない“組織の問題(責任や権限など)”も潜んでいるかもしれません。業務改善においては、業務プロセスだけで解決できない問題も多々あることは、一度でも改善に携わったことがあれば明白です。

さて、2回に続けて似たような話になりました。くどいようですが、考えることを疎かにしないことです。今回は「時間」を題材に業務プロセスの側面から考えましたが、次回は現象から原因へ掘り下げていくことについてお話します。

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本記事の執筆者

株式会社カレンコンサルティング

株式会社カレンコンサルティング 代表取締役 世古 雅人 氏

カレンコンサルティングはPlanだけでなく、未来永劫に企業組織が自走できる自立的な組織構築を目指しています。 社員間、社員と経営者の関係性、信頼関係等も重視し、継続的に成長し続ける企業や組織であるためにハード/ソフトの両側面からPDCAの全ての工程に責任を持って関わっていきます。 理論的な知識情報だけに終わらせることなく、実存的な経験情報に基づきご支援をいたします。しかし、そこには明確なアカデミックな原理原則と根拠、方法論を示しながら、組織の学習サイクルにフィードバックしていき定着をはかります。


株式会社カレンコンサルティング
代表取締役 世古雅人(せこ まさひと)


【経歴】

【1964年】
三重県生まれの横浜育ち。神奈川県在住。

【1987年】
武蔵工業大学(現 東京都市大学)工学部電子通信工学科卒業。アンリツ株式会社入社
通商産業省(現 経済産業省)管轄の半導体基礎研究所の出向期間を含め、約13年間を設計と研究開発の現場で過ごす。
その後、社内選抜にて経営企画室に異動し中期経営計画策定、情報戦略、組織風土改革等に従事。

【2003年】
株式会社スコラ・コンサルト入社。企業風土改革、組織・業務コンサルティングに関わる。

【2004年】
株式会社ピーエイ入社。経営企画室室長・管理部部長。
事業計画策定・IR・各種制度設計と構築を行う。子会社である株式会社UML教育研究所の執行役員/営業本部長を兼任。社内コンサルティングと並行して、社外への経営・組織・業務・プロセスコンサルティングに従事。

【2009年】
株式会社カレンコンサルティングを設立、同社代表取締役。
コンサルティング・教育研修・アウトソーシング事業を展開。現場と経営を巻き込んだ新しい『プロセス共有型』のコンサルティングスタイルを提唱している。
特にハード面の「業務プロセス」と、ソフト面の「風土改革」の2軸を大切に、大手上場企業から中小ベンチャー企業まで、業界・業種を問わず、現場における業務改善・組織風土改革の変革支援を行う。技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善や変革コンサルティングなどに従事。

【著書】