第4回「問題をどう整理するか(前編)」

第4回「問題をどう整理するか(前編)」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止として、皆さんの会社においては在宅勤務をされている方が多いかと思います。そのような中、経済活動の平常化を見越して、今は中断しているかもしれない業務改善活動や、これから改善に取り組む企業が活動をすんなりと離陸させるために、今から予備知識として蓄積できることを考えたいものです。

「問題出し」そのものが問題!

よく業務改善の場面で、「付箋紙に問題を書き出してください」とか、皆さんの会社でも行うことはありませんか? その後、だいたいやることとしては、「1)貼り出す(共有)、2)グルーピング」の流れです。

これは、第3回の冒頭の書き出し部分です。「現象」から「解決」まで因果関係を見据えながら掘下げることで、きちんと整理をしましょうという内容でした。今回は前回のお約束のとおり、少し具体的に例を挙げて一緒に考えてみましょう。

さて、前出の書き出し部分を実際に進めている様子をイメージしてみましょう。図1をご覧ください。

図1 問題出しと共有

以下のような流れです。

①付箋紙に書き出す
②模造紙に貼り付ける
③グルーピングをしてラベルを付ける
④全体共有と称して発表する(させられる) ※:③,④が逆の場合も有り。

模造紙の左上部分から付箋紙が貼られ始め、分類できないものには「その他」のラベルを付けて、模造紙の右下部分に遠慮がちに貼られる――こんな感じではないでしょうか。

それで、次にやることは、ラベルが付いてグルーピングされた各項目について、「○と●は同じことを言っているから、こちらのグループに移動」してみたり、「具体的にはどういうことなんだろう?」と、付箋紙に書かれた言葉や文字数の少ない問題と称されるものについて、言及し始めたり…と、進め方は様々です。問題のグルーピングができた段階で、気が抜ける人もいます。なんとなく「出来ちゃった感」があるのでしょうね…実際には何も始まっていないのですが…

具体例:(1)問題を付箋紙に書き出してみた

例えば、業務改善プロジェクトにおいて、図2のようなものが問題として出てきたとしましょう。あなた以外にプロジェクトメンバーが複数いる場面をイメージしてみてください。

図2 例えばこんなものが問題として出てきた

これをご覧になって、前回にお伝えした「現象、問題、原因、解決策などがごちゃ混ぜになっている」とすぐにお気づきになる人もいるでしょうが、まずはそこは一旦置いておいて、業務改善初期段階で見られる「“あるある”の問題出しのプロジェクトの一場面」だと思ってください。
皆さんならどのように整理をするでしょうか。

具体例:(2)グルーピングしてラベルを付けてみた

整理1:「なんとなくのグルーピング」で生じる問題

「似たようなことを言っている」――いわゆる“同類項”でグルーピングをした例が図3になります。

3 こんなふうに整理をしてみた(その1)

個々人によって、ラベル名は変わるのでメンバー間でコンセンサスをとる必要がありますが、例えば、「電子化の遅れ」を「ペーパーレスの問題」とするかもしれません。
「開発効率」は「ツール」となるかもしれません。仮に、前者の「電子化の遅れ」を「ペーパーレスの推進が進まない」というラベルにすると、「人材育成、研修の問題」のグループ内にある付箋紙(ペーパーレスが進まないのは…)を移動したくなるでしょう。また、後者の「開発効率」を「ツール」のラベルにすると、同様に「人材育成、研修の問題」から2つの付箋紙(ツールの習熟度は…、システムの使い方を…)を貼り替えたくなるでしょう。

そして、あなたがまさに付箋紙を貼り替えようとしている時に、他の人からは「開発効率の“ツールが使いにくい”って具体的に何なの? 大雑把すぎてわかんないよ」という声が出てきます。そうなると、付箋紙を持ったあなたの手は止まり、「確かにそうだよなぁ。じゃあ、もう1回、この付箋を書いた人から詳しく説明をしてもらおう」となってしまう――このような堂々巡りを繰り返し、時間切れで終了を迎える。後日、改めて整理をする場面になると、「前回から時間が経ったので共有からやろう。では、もう一度付箋紙の説明からお願いします」とやってしまう。そうして、改めて説明を聞くと、はたしてこういうグルーピングで良かったのかと自信がぐらつき、再度、グルーピングを始めたり、より適切であろうと思われるラベル付けに注力してしまう……。

極端な例を述べましたが、問題出しの現場ではごく普通に見られる光景でもあります。

整理:「別の観点からグルーピング」

次に、図4をご覧ください。別の観点からグルーピングしたものです。

図4 こんなふうに整理をしてみた(その2)

・左の列:ペーパーレスのグルーピング:モバイルや管理職のことを加えてみた
・真ん中の列:「開発効率」を「ツール」の観点でくくった
・右の列:とりあえず「まとめにくいもの」を寄せておいた

ここで着目してほしいことが2つあります。

一旦、右側の列は置いておき、左と真ん中の列だけで構いません。

①左の列:(ペーパーレスの観点は良いが)…「現象・問題・原因が混在」している

②真ん中の列:(ツールの観点は良いが)…ツールそのもの、社員のスキル、理解不足など
「見ている視点がバラバラ」である。

果たしてこの業務改善プロジェクトのメンバーはうまく問題が整理できるでしょうか?

本シリーズ(シリーズ業務改善④)のテーマは「業務改善のための業務分析」ですが、問題そのものをきちんと発見することはもちろんのこと、問題を正しく認識し、整理をしなければ、これから行う業務分析が誤ったものになります。

意味のある、効果が出る業務改善にするために業務分析はとても重要です。そして、その上流に位置づけられる「問題の定義とそのための整理」は、もっと重要で手を抜いてはなりません。
「問題出しが後になってから問題となる」ことが少なくないのです。

次回は、「問題をどう整理するか(後編)」としてお伝えします。
1日も早い新型コロナウイルス感染症の収束を願いつつ、また次回お会いしましょう。