第4回「プロが教える業務の棚卸(前編)」

株式会社カレンコンサルティング 代表取締役 世古 雅人 氏

株式会社カレンコンサルティング 代表取締役 世古 雅人 氏

第3回では、『業務棚卸の前に行うべきこと』と題して、一言で言えば、「業務フローだけではなく、あれこれ調べよう!」という内容でした。

今回は、「業務の棚卸」のお話をします。本コラムを読まれる皆さんも、業務やプロジェクト等において、業務の棚卸の経験があることでしょう。うまく棚卸ができて、業務の構造も把握でき、階層的に整理できましたか?

実際にやってみるとわかりますが、意外と難しいところがあります。今回は前編・後編の2回にわたって、「業務の棚卸」について、我々プロの視点で皆さんにヒントをお伝えします。

 

業務の棚卸の失敗例

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業務の棚卸が正しくできれば、業務フローの作成などはたいしたことありません。実に簡単に短時間で出来上がってしまいます。言い換えれば、業務フローの作成で「トラぶっている・何度もやり直しをしている・なかなか正しいものができない…」場合の原因は、業務の棚卸がきちんとできていないからです。

 

下記をご覧ください。

我々がこれまでに実際に見てきた「業務の棚卸の失敗例」です

《業務の棚卸の失敗例》
  1. 単にやっていることの箇条書き
  2. 粒度が揃わない(大きな業務と小さい業務の混在)
  3. 業務名称、ドキュメント/システム名称等に整合性がない
  4. 部門名称ではなく、Aさんに渡すなど表現形式が統一されていない
  5. 複数の業務があたかも1つの業務のように表現される
  6. 担当業務ごとに固有名詞がつく(Aさんの仕事、Bさんの仕事 等)
  7. 業務単位でない項目が挙げられる

どうです?心当たりありませんか?

職場の部課長クラスが、メンバーに向かって、「みんなが何やっているか、紙に書いてみろ」とか、実際には表計算ソフト等を使ってまとめることになるでしょうが、特に棚卸について指示を出さずに行うと、1.のように、書いてあることが箇条書きで出てくるだけってことも少なくありません。

構造的でもないし、時系列でもない。大きな仕事も小さな仕事もまざっている。日々の仕事を思い出しながら、書き出していくと、だいたい箇条書きで、ただ単に「書いただけ」というものが提出されることがほとんどです。本人は多少、仕事の整理ができたかもしれませんが、業務改善を行うにはこれっぽっちも役に立たないものです。

今回は、後半にアンダーラインを付けた2項目(3.と7.)に付いて述べます。

 

業務の棚卸のステップ

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図1に業務の棚卸のステップを示します。

 

 

図1 業務の棚卸のステップ

図1 業務の棚卸のステップ

ずいぶんとシンプルですが、細かいことはともかく、大きな項目はせいぜいこの4つのステップです。

通常、皆さんがイメージされるのは、業務を洗い出して一覧表にしてみるという場合が多いことでしょう。この場合は、図1中の2つ目・3つ目のステップがきちんと含まれる場合と、そうでない場合(忘れているかやっていない)があります。実はこの2つのステップが一番手間がかかります。しかしもっとも重要なステップでもあります(後述)。

 

業務の棚卸の目的

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さて、ここで業務の棚卸の目的について考えてみましょう。

 

 

  • 業務効率の向上と改善:業務量・負荷バランスの算出と平滑化、
    マニュアル・規程の見直し、KPI設定と改善 等
  • 業務標準の構築:属人業務の見極めとナレッジ化 等
  • 情報システム導入と見直し
  • アウトソーシングにおける適正業務切出し:コア業務特定、
    業務量見積、最適化 等
  • 組織変更、人事異動に伴う業務内容の変更
  • 業務プロセスの変更

等など…。

いくつか代表的な目的例を示しましたが、いかがでしょうか?

その他には、「人事評価制度の目標管理のため」に、人事評価の直前の時期を見越して、課長さんが課員に書かせて提出をさせるところも少なくありません。この場合は、「業務の棚卸」よりも、「個人(僕の仕事、私の仕事)の棚卸」のイメージが強いですね。

本コラムの目的は「業務改善」ですが、業務の棚卸のプロセスそのものは、目的に依存せず、大きく変わるものではありません。

 

最初が肝心!!…「共通言語化」

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さて、最初(棚卸の失敗例)にお伝えしましたが、

3.業務名称、ドキュメント/システム名称等に整合性がない

の場面をイメージしてみましょう。

下記のような会話が社内で耳にすることはありますか?

  • 「うちの会社は独自用語が多いのよね」
  • 「共通言語って概念、うちの会社(職場)にはないんです」
  • 「ドキュメントやデータの名前の付け方が職場ごとにバラバラなんです」

これらは、業務の棚卸においては、たかが名称・名前なのですが、棚卸そのものが全部やり直しになる事態を招く大きな要因の1つです。既に、業務フローまで完成して、さらにシステム化にする。この段階でトラぶる原因にもなっています。

図2をご覧ください。

図2 名称の共通言語化

図2 名称の共通言語化

一例として、「仕様書」を見ましょう。“●”が付いていますが、「ソフトウェア仕様書」であったり、オフィス移転のための「レイアウト仕様書」だったり、仕様書の前に何が付くかが大事です。仕様書ということがわかっても、何の仕様書なのかわからないとNGです。

業務の棚卸で、Aさんは「レイアウト仕様書を受領する」と書きましたが、同じ仕事においてもBさんは「仕様書受領」としか書いていません。したがって、「何の仕様書かわからないけど、仕様書を受け取ったことは正しそうだ」ということとなり、曖昧さが残ったままになります。また、請求書以下も同じ事が言え、何に関する請求書なのか、何のため・何をチェックするためのリストなのか、報告書とあるが何の報告書(クレーム、出張、調査 等)なのか、集計表も何の集計なのか…などなど、ごく普通に何も意識せずに使ってしまう文書・帳票類(送料してドキュメント)ほどこそ、業務フロー上で必ずやり取りが発生する(=部門間を行き来するドキュメント)であることがほとんどで、ミスの要因となりがちです。

同様に、データやデータを吐き出す・加工するシステムの名称も重要です。

我々はコンサルティング等で支援を行う場合は、まず最初に、ドキュメントやデータを全て書き出し、一覧表のようにまとめます。次に、まとめたものを部門内で共通認識し、共有します。書いていると単純ですが、同じドキュメントがA部門はAと呼んでいる、A部門の後工程であるB部門は前工程のAというドキュメントを、A’と呼ぶ人もいれば、B、Cと好き勝手に名前を付けて、かつ、そのままファイル名称も同様にして、サーバに保存している。

このような状況が存在する中で、A部門とB部門の両方で納期短縮の業務改善を行う場合、問題となることは言うまでもありません。

たかがドキュメントの名称ですが、どちらかに揃える場合、お客様への提出物の名前まで変わってしまう、社内文書の変更通知が必要などの問題が発生し、A部門とB部門の間でもめることもあります。

A部門とB部門できちんと共通言語化しておかなければなりません。

 

「…業務」と名付けて違和感があるか・ないかがポイント!

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もぅ1つ、下記のような場合も少なくありません。

7.業務単位でない項目が挙げられる

 

具体的には、「半期業務」 「入社前業務」など、時期・季節要因が含まれる場合です。

前者であれば、「四半期決算書作成業務」とあれば、誰しもがイメージできることでしょう。後者であれば、「内定者研修実施業務」 「内定者フォローアップ業務」であれば、またイメージも変わって見えますし、より具体的です。

より具体的な話は次回(第5回)でお話しますが、1つだけヒントを挙げると、「名前に業務をつけてみる」ことです。この時に、違和感があるか・ないかがポイントです。

先ほど、半期業務、入社前業務と無理やり書きましたが、一般的でしょうか? どこか、しっくりとこない・引っかかるというような違和感を感じると思われます。

このような場合は、業務の棚卸の際の「名前の付け方がおかしい」ことと、「業務の棚卸の区分が間違っている」ことに他なりません。同時に、このような業務棚卸を提出する人は、日常的に自らがどんな業務を行っているかまったく意識をしていない裏返しでもあるので、少し注意が必要です。業務フローを書く段階になって苦労するのが、このタイプの人たちです。

 

次回は今回の続きとなります。お楽しみに・・。

 

→ 第5回「プロが教える業務の棚卸(後編)」

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本記事の執筆者
株式会社カレンコンサルティング 代表取締役 世古 雅人 氏

株式会社カレンコンサルティング

カレンコンサルティングはPlanだけでなく、未来永劫に企業組織が自走できる自立的な組織構築を目指しています。 社員間、社員と経営者の関係性、信頼関係等も重視し、継続的に成長し続ける企業や組織であるためにハード/ソフトの両側面からPDCAの全ての工程に責任を持って関わっていきます。 理論的な知識情報だけに終わらせることなく、実存的な経験情報に基づきご支援をいたします。しかし、そこには明確なアカデミックな原理原則と根拠、方法論を示しながら、組織の学習サイクルにフィードバックしていき定着をはかります。


株式会社カレンコンサルティング
代表取締役 世古雅人(せこ まさひと)


【プロフィール】
  • 武蔵工業大学(現 東京都市大学)工学部電子通信工学科卒業
  • 1987年:アンリツ株式会社(東証一部上場)入社。電子計測器のハードウェア設計に従事。
  • 1988~1990年:通産省(現 経済産業省)管轄の半導体中央研究所に出向。光デバイスの基礎研究に従事。その後10年間、アンリツにて開発業務を経て、経営企画部門に異動、全社組織活性化と現場改革の率先と仕組みづくりに注力。
  • 2003年:株式会社スコラ・コンサルト入社。組織風土改革、業務プロセスコンサルティングに従事。
  • 2004年:株式会社ピーエイ(東証二部上場)入社。経営企画室長/管理部長。業務改革プロジェクト、新規事業の立上げに従事。(株)UML教育研究所執行役員兼任。OMG(USA)とソフトウェア組込み資格試験の開発に従事。
  • 2009年:株式会社カレンコンサルティング設立、同社代表取締役。企業の経営・業務コンサルティング、製造業の開発・マーケティング支援、人材育成等に携わる。
【著書】
【連載記事】