海外生産の作業品質に関する課題と背景
これまで日本の多くの企業が生産拠点を海外に移設してきましたが、日本と同じ仕組みであるのにもかかわらず、海外の工場ではどうしても「作業品質」に大きな差が生まれてしまいます。
それでは何故品質に差が出てしまうのでしょうか。それには2つの要因が関与していることが多いようです。
1.不良品の発生や工程の手戻りが多い
「日本の工場と同じやり方をしているのに、明らかに不良品の発生や工程の手戻りが多く発生してしまう」この様な声がよく聞かれます。
これは、日本の作業者と海外の作業者の根本的な意識の違いなどが原因となっている場合があります。
何か違和感などを感じた時にも作業者自身がそれに気づいて知らせてくれる、実はこの意識がとても重要で、作業者のちょっとした気付きによって問題の早期発見ができ、ことが大きくならないうちに問題を収束させたり、先回りして対策を打つことができます。
違和感に気付けず、報告が遅れ、対策が遅れ、気づいた頃には大きな損害となる。これが日本と比べて不良品の発生や工程の手戻りが多くなってしまう要因です。
2.誤発注や納入元のミス
海外の生産拠点では、日本と比べて部材の発注ミス(誤発注)もよく起こります。特に、計画とは異なるものを発注してしまった場合や、予定数量よりも少なく発注してしまった場合に大きな問題に発展しやすくなります。
これには現場担当者の確認不足が原因となっている場合もありますが、そもそも現地スタッフの感覚で勝手に発注できる仕組みになってしまっていることが原因となっている場合があります。
部材の欠品は時にラインの停止、最悪の場合は工場の停止にもなりかねません。
さらに発注側のミスだけでなく、納入業者(納入元)のミスが原因となる場合もあります。この場合、納入業者の担当者までは統制をかけることはできませんので、納入業者の選定レベルで統制をかける必要があります。
現在取られている対策とリスク
これらの海外生産におけるリスクに対して、日本の各企業は大きな人的リソース/コストをかけて対策をしています。その対策方法の一例とリスクについて解説します。
1.不良品の発生や手戻りの対策
人的要因による品質低下というリスクに対しては、各工程ごとのチェックを増やすという対策が取られています。日本であれば最終工程で1回チェックするだけで十分なものも、海外工場では各工程ごとにチェックを入れます。単純にチェック担当を大量に増やすことによって品質低下を防ぐという、シンプルな対策です。
気になる人件費についても、これまでの海外拠点の人件費レベルであれば、日本の人件費よりも低かったので、この対策は実行可能でした。
しかし、近年中国を始めとした海外拠点の人件費高騰も問題化してきており、この対策も新たなリスクとなってきています。
2.誤発注などによる部材の欠品対策
欠品の対策としては、部材を予め大量に発注・在庫しておく方法が挙げられます。量を確保しておけば生産には影響がないだろうという考えです。
しかし、この対策は大きな問題を抱えています。
大量に在庫を抱えるということはそれ相応の倉庫も投資も必要になります。さらに、せっかく大量に在庫とした部材にも使用期限があり、いつまでも使えるものとは限りません。
保存限界の到来や部材変更などが起こり「一斉廃棄」となる可能性もありますので、逆にコスト高となる大きなリスクを含んでいます。
海外生産における作業品質の問題の解決策
その鍵は海外生産拠点の可視化(現状把握)とモニタリング(監視)にあります。
産業の成長を振り返ってみると、これまですべて人が行っていたことを機械を使って自動化を図ってきた歴史があります。
海外生産の作業品質の問題も同様に、まずはこれまで人間が行ってきた作業を可視化(現状把握)し、チェック作業についてはシステムを使ってモニタリング(監視)することで、解決策の1つとなるのではないでしょうか。