【はじめてのDX推進~社内プロセス改善者の奮闘記~】

第7回:改善案の検討~経営層への提案


第6回はこちら:
効率的な課題の設定方法とは? ECRSの原則とTo-Beフロー
https://kashika.biz/bpmconsulting-blog-6/


 

塚田
ようやく、課題の整理まで終わってついに業務改善策の検討に移れますね。
ここまで長い道のりでした。振り返ると…涙が出てきます。
コンサルタント 山口
うんうん。振り返るのは無事業務改善が成功してからにしようね。まだ終わった気になるのは少し早いと思うよ。
塚田
そんな…あとは課題に合わせて必要なシステム導入や新プロセス(フロー)に変えていくだけなんじゃないですか?
コンサルタント 山口
確かに塚田君の今言ったことはある意味正しい。ただ、現状の課題が分かったから新システム・新プロセスを取り入れておしまい、とはならないんだ。
塚田
どうしてですか? せっかくかなり時間をかけて課題の整理まで行ったのに。
コンサルタント 山口
まずは新システムの場合、導入はもちろん運用していく上でコストが必ずかかるよね? だからそのコストに見合うだけの効果が望めない限り、課題が解決できるとしても導入することは難しいだろうね。
塚田
なるほど。確かにそうですね。
コンサルタント 山口
そして新プロセスなんだけど、これはいくら課題が解決できるからといっても、ビジネスルール上の制約や企業のビジョン、部署間の連携や影響度を度外視することはできない。
塚田
えっと、企業のビジョンや部署間の連携はなんとなく分かるんですが、ビジネスルール上の制約って何でしょう?
コンサルタント 山口
例えばだけど、親会社から決められている守ってほしいルールや、監督省庁から出されている規則なんかも該当するね。
塚田
なるほど。それは確かに守るべきですね。
コンサルタント 山口
そうなんだ。だから、これから業務改善案を策定するにあたって一般的に必要とされることを説明していくね。
塚田
是非、よろしくお願いします!
コンサルタント 山口
まずは基本に立ち返って、「DX推進の目的」を確認しよう。

コンサルタント 山口
その際に
・自社の企業理念やビジョンに則しているか
・ビジネスモデルやロードマップから外れていないか
という観点で確認するといいよ。

 

ポイント①
改善案を検討する際に、DX推進の目的を再度確認することが大切。部分最適にならないよう、会社全体を俯瞰して検討するようにすると良い。
塚田
そうか!今回、DX推進に至った理由をしっかり考えることが大切なんですね。
コンサルタント 山口
その通り!今回のケースで言うなら業績が上がったんだけど、その反動で業務量が増加。そのためミスが増加していたから、抜本的な業務改革の早急な推進が目的だったんだよね。
コンサルタント 山口
そして、もうひとつ。
この目的を踏まえた上で、改善案は複数出す必要があるね。
塚田
改善案を複数ですか。最適なものを一つではダメなんでしょうか?
コンサルタント 山口
塚田君が経営者で、色んな改善案をすべて勘案したうえで一つだけ出すんだったらいいのかもしれないね。
コンサルタント 山口
でも塚田君は経営者でないから決定権はないよね。だから決定権も持っている経営層に案として出して最終的な判断をしてもらわなければいけないんだよ。
塚田
なるほど。でも改善案ってそんなに複数でてくるものでしょうか?なんだかそんなに思いつかない気がするんですが…
コンサルタント 山口
改善と一口で言ってもいろんな方向性で検討できるんだ。例えばボトルネックになっているところを外注に出してしまうとか、その部分にシステムを充てて内製で効率化を図る、とかね。
塚田
確かに。そうやって考えると課題に対していろんな切り口から改善案を考えられますね。・・あれ?でも今度は色んな切り口から考えると案が逆に纏まらないかも、、
コンサルタント 山口
そうだね、課題によってはそういうこともあるかもしれないね。だから改善案を検討するときには第6回で考えたTo-beフロー(あるべき姿)をベースに考えることが重要なんだ。
塚田
そうか!
改善先のベースになるものがあると方向性がある程度まとまってきますね。
コンサルタント 山口
そういうことだね。ただTo-beフローに合わせるだけだと現実的に厳しい改善案ばかりになってしまうこともあるから、そこからAs-is(現在の姿)に段階的に寄せた実現可能な案(Can-be)を検討していくと良いだろうね。
塚田
分かりました。
そういうことならある程度同じ方向性の改善案が複数作れそうです!
ポイント②
改善案は、To-Beフローを基にして複数作成することが大切。図のように軸を設定して整理・検討すると、案を出しやすい。
コンサルタント 山口
最後に大事なことがあるね。 施策を実施する前に、経営層の合意をとらなければいけない。
塚田
そうですよね。決定権を持っている経営層がやっていいと判断してくれなければ、改善策を進めることはできませんね。
コンサルタント 山口
そうだよ。経営層は会社やその従業員、株主を守る必要があるから利益を追求しなくてはならない。だから新しいシステム・フローを取り入れた際の費用に対して効果が大きいことを示さないと経営層から合意は得られないんだ。
塚田
効果・・あ、そうか。ここで、第4回で洗い出した定量情報が役に立つんですね!
コンサルタント 山口
そういうことだね。定量情報を基に試算すれば、それに対してそれぞれの改善案の費用対効果や投資対効果が見えてくるよね。
コンサルタント 山口
そして費用対効果(投資対効果)が見えてくると、その改善案のインパクトが分かるよね。そうした情報を基に経営者から改善案の合意を得ていくんだ。
コンサルタント 山口
あと、改善案を実施するにあたってリードタイム(スケジュール)も改善案毎に違うからその点も説明が必要だよ。
コンサルタント 山口
問題によっては緊急性の高いものもあるから、止血案と解決案のように改善案を用意することも必要になるかもしれないね。
塚田
分かりました!簡単にまとめると、課題に対し企業のビジョンやロードマップに沿った改善案を複数出して、それぞれの案に、経営層が判断するための必要情報を肉付けをするような感じですね。
コンサルタント 山口
纏めるとそうなるね。そして肉付けの材料となるものが今まで洗い出してきた「業務フロー」「定量情報」「問題」「課題」ということなんだ。
コンサルタント 山口
これらを整理していくとこれまで漠然としていた問題が「どこに(誰に)」問題があって、「どう」改善することによって「どの程度」効果が見込めるかという改善案の資料になるね。
塚田
よーし、それでは教えてもらったことをもとに、早速改善案の資料を作ってみます!
コンサルタント 山口
うんうん。すぐ行動に移すのはとても良いことだ。頑張ってね。
ポイント③
経営層に合意を求める際には、実現性、コスト、リードタイムという観点を持って、費用対効果と施策が経営に与えるインパクトを提示する必要がある。
塚田
ようやく出来ました!
コンサルタント 山口
お疲れさま。どれどれ。 うん!しっかり現状の訴えたいこと、費用対効果、他にも経営層が知りたそうな情報がしっかり纏まってていいんじゃないかな。
塚田
ありがとうございます!早速上司に見せてきます。
河合部長
資料作成ご苦労さま。なかなかいい資料だったよ。これで経営会議の議題にあげてみよう。ありがとう!

 


次回更新日は、2021年1月10日を予定しています。