システムは作る時代から使う時代へ
前回までで、基幹システム導入を例にとった業務プロセスの可視化についてお話ししました。
連載最終回である今回は、来るべき将来に向けて、業務プロセス可視化の有効性についてお話ししようと思います。
業務改善のために基幹システムの導入を検討し、業務を基幹システムパッケージの機能で置換できるかFit&Gap分析を行う、もしくはパッケージの機能に合わせて業務を変更する。この一連の作業に違和感を覚える人はあまりいないのではないでしょうか。しかしこれは10年ほど前であれば、業務をシステム化するために要件を洗い出し、自社に適合したシステムを構築するという考えのほうが一般的でした。最近では基幹システムに限らず、グループウェアやOffice等のビジネスアプリケーションまで企業の提供するサービスを利用することが主流で、自前でスクラッチ開発したITシステムを持つというケースは減少してきています。
これらは明確に企業活動におけるITが「作る」時代から「使う」時代へと変化したことを意味しているのではないでしょうか。そしてITが「使う」ものとなった今、使うITを適合させるにあたって根幹となる「業務プロセス」を把握する重要性が増してきていると私は考えています。
これからの時代の業務プロセスモデリング
業務プロセスを把握するということは、企業活動を把握することを意味します。すなわち、業務プロセスモデルを構築することは、企業活動をモデル化するということと言い換えられます。企業活動をモデル化する方法として、エンタープライズアーキテクチャ(EA)という記述法があります。
エンタープライズアーキテクチャは事業体の構造と機能、それぞれの関係性と要求事項をモデル化することにより事業体そのものを可視化するアプローチです。
この可視化の視点(ドメイン)は以下の4点に大別できます。
- ビジネスアーキテクチャ(ビジネス層)
- データアーキテクチャ(データ層)
- アプリケーションアーキテクチャ(システムアプリケーション層)
- テクノロジアーキテクチャ(技術基盤層)
第2回、第3回において、入出力帳票に着目して業務プロセスを可視化することについてお話ししました。これはEAに当てはめると、データアーキテクチャに着目してビジネスアーキテクチャ、アプリケーションアーキテクチャを同時に可視化していることになり、事業体のほとんどを可視化していることになります。
(実際にEAを構築する場合は、各層において細かい情報を補完するサブ図表を作成する必要があります)
残されたテクノロジアーキテクチャは、ITが「使う」ものとなった今、必ずしも可視化しなければならないものだとは私は考えません。他の3層の要件に応じて適切なものサービスを調達すればよく、細かい技術仕様はサービスベンダーが管理するものだからです。
業務プロセスとは、事業を行っている皆さんが今まさに実行している業務そのものです。
この業務は一つ一つが事業の構成要素であり、また根幹をなすものです。この業務の運営を支援するためにITが存在しています。また、業務を運営するにあたり適切なリソースを用意する必要があります。
業務プロセスを可視化することで、事業を運営する上で必要なものが把握できます。業務プロセスの変革を求められたとき、これが把握できているのとできていないのとでは大きな差が出てきます。
業務プロセスが可視化できていれば、求められる要求に対して最適な対応が検討できるからです。
これまで6回にわたりお話ししてきた業務プロセスの可視化メソッドは、基幹システム導入に限らず、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)やQMS(品質管理システム)等様々な分野で適用可能なものです。
また、今後発生するであろう様々な環境変化に対応するためにも、根幹となる業務プロセスモデルを構築し把握することの有効性がご理解いただけたら幸いです。
短い間でしたがご愛読ありがとうございました。またお会いしましょう。
バックナンバー(全6回)
私は業務可視化やフローチャートの書き方について無料セミナーでお話しさせていただいていますが、そこでは必ず「フローチャートを書くときには最初に目的を決めるべきである」とお伝えしています。フローチャートは業務プロセスなどの流れを理解するのに適した方法ですが、記述する内容が目的と…
前回のエントリでは、目的に対して適切な粒度のフローチャートを作成するべきであるとお伝えしました。ではシステム導入を目的としたフローチャートには何が記載されているべきか、基幹システム導入のケースを例にとって説明します。
前回のエントリで、基幹システム導入のための業務プロセスフローの記述粒度は「モノ(ヒト)・カネ・サービス」の受け渡しプロセス単位であると説明しました。ではこのモノ(ヒト)・カネ・サービスの受け渡しを、どのようにフローチャートに表したらよいでしょうか。
前回のエントリでは業務プロセスフローを記述する上での概念についてお話ししました。
今回は業務プロセスフローを作成するにあたり最適な記述法についてお話しします。
私は、BPMNが業務プロセスをフローチャートに書き表すために最適な記述法だと考えています。
前回、前々回のエントリでは、業務プロセスフローの作成手法や最適な表記法についてお話ししました。
今回は実際に業務プロセスフローを作成し、改善方法を検討する上で有用なツールについてお話ししようと思います。
株式会社サン・プラニング・システムズ
・業務の棚卸
・業務の可視化
・業務フロー型マニュアル構築
・内部統制文書作成/コンバート
・RPAツール導入支援/シナリオ構築