フローチャートをはじめて書くという方で、このような悩みや疑問を持っていらっしゃる方は少なくないかと思います。
フローチャートには目的・用途に応じて様々な作図方式・様式が存在します。
今回は、代表的な6種類のフローチャートについて、それぞれの特徴およびフローサンプルをご紹介します。
【1】日本工業規格(JIS)
情報処理を表わす流れ図で、JIS(X 0121)で定められたものがあります。業務フロー図として代用する場合、処理、判断(分岐)、定義済み処理の記号が役立つでしょう。ただ、もともと業務の流れではなく情報の流れを追うチャートですから限界はあります。また、図形の用いかたに縛りがないので、割りと好き勝手に書いていることでしょう。
各工程を示すパーツは 『情報処理用流れ図・プログラム網図・システム資源図記号 JIS X 0121 – 1986』で規格化されていて、形や流れる方向などが統一化されています。
その制定は1970年4月1日、最新改正年月日は1986年2月1日と古くからあるものですが、現在でもアルゴリズムの基礎を学習するときに使われる代表的な記法になっているなど、広く普及している記法です。(情報処理技術者試験でも使用されています)
1)フローチャートの書き方
http://www.ced.is.utsunomiya-u.ac.jp/lecture/2005/prog/common/flow_guide.pdf
2)システム資源図 の意味・用法を知る
https://astamuse.com/ja/keyword/61838
3)ざっくりわかる!プログラミングのためのフローチャートの書き方
【2】BPMN形式
BPMN:(Business Process Model & Notation (BPMN))は、業務を実行する際に、関係者が共通に理解しておくべき、仕事の始め方、役割分担、各担当の仕事内容、お客様とのやり取りなどのフローを記述する手法です。国際標準(ISO19510)になっています。
- シンプルでありながら豊かな表現能力
- 実行言語の生成が可能
モデリングについては3つのレベルが想定されており、目的により使い分けることができます。
- レベル1 主な業務(正規系の業務)の流れを表現し、業務フロー図として、俯瞰的な検討を主目的とするレベル
- レベル2 イレギュラーな業務の流れも含め業務を詳細化し、シミュレーションなどによる定量な分析を目的とするレベル
- レベル3 上記レベル2に加え、プロセスデータや外部システムとの連携を考慮し、プロトタイピングや実装を目的とするレベル
1)平成23年度電子経済産業省推進費
業務最適化のための業務モデリングに関する調査研究
(業務モデリング手法の検証と政府情報システムへの示唆の整理)
調査報告書
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2012fy/E002593.pdf
2)今すぐ使える!BPMサンプルフロー 100選(株式会社アプレッソ)
https://www.appresso.com/bpmsample100/
3)BPMN プロセス モデル ルームへようこそ(オープンソースBPM ジャパン株式会社)
http://www.ossbpm-japan.com/processlib.html
4)【サンプルを見て参考にしよう】BPMNフローチャートを公開中のサイト4選 (業務可視化Note)
【3】データフロー図(DFD)
情報システムを通るデータの流れをグラフィカルに表した図です。データを処理するプロセスを丸(バブル)で表すため、バブルチャートとも呼ばれています。1970年代後半に提唱されてから現在まで、その歴史は古いです。
使用用途・目的としては、構造化システム分析・設計などで用いられます。
作図上の特徴としては、下記が挙げられます。
- 対象業務の範囲を点線の楕円で示し、その業務が外部の組織・ひと・もの・システムとどうつながっているかについて明らかにします(楕円の内側が対象業務の範囲となります)。
- データフロー図は「プロセス」(円または角丸の多角形)、「データストア」(2本の平行線)、「ビジネス上(または他のシステム)の外部実体」(四角形・楕円)、それらを結ぶ「データフロー」(矢印線)から構成されます。
- 記法、ルール(例:プロセスは、データに何らかの変更を加え出力しなければならない 等)が存在します。
- システムの入力と出力がどんな情報なのか、データがどこから来てどこに行くのか、どこに格納されるのかを示すものであって処理の順序・タイミングを示すものではありません(互いに影響する関係にない処理の並行性は表現します)。
データフロー図 – Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/データフロー図
DFD(でぃーえふでぃー) – ITmedia エンタープライズ
http://www.itmedia.co.jp/im/articles/0602/14/news089.html
データフロー図 (DFD) の概要
https://www.ogis-ri.co.jp/otc/swec/process/am-res/am/artifacts/dataFlowDiagram.html
1)超上流から攻めるIT化の事例集:要件定義:IPA 独立行政法人 情報処理 …
https://www.ipa.go.jp/sec/softwareengineering/tool/ep/ep2.html
2)データフロー図(DFD) – SE学院
http://itref.fc2web.com/technology/dfd.html
3)業務・システム刷新化の手引き-機能情報関連図(DFD)の例
http://www.soumu.go.jp/denshijiti/system_tebiki/hyouki/gyomu/2a-3-dfd.html
【4】NOMA方式フローチャート
工場の工程分析表をもとに元日本経営協会(NOMA)理事の三枝氏がまとめた作図方式です(したがって、NOMA(方)式と呼ばれます)。フローチャートの知識がない、馴染みがないという方にとって、NOMA方式の簡単な記号と説明文の組み合わせは読み易いと言えるでしょう。
使用用途・目的としては、事務フロー、マニュアル、業務改善、上場申請書類の「Ⅱの部」 の業務フローなどで用いられます。
作図上の特徴としては、下記が挙げられます。
- 縦書きのフローで、工程を“上から下”の流れで表現します。
- 記号の種類が少なく、覚えるのにそれほど時間が掛かりません。(記号が少ない分、説明文の追加が必要となるというデメリットがあります。)
NOMA方式・業務フローチャート[NOMA方式フローチャート]
http://www.internalcontrol-navi.com/impruve/flow_chart/noma.html
フローチャートの種類
1)NOMA方式の書き方[フローチャートの書き方(1)] – 内部統制入門Navi
http://www.internalcontrol-navi.com/impruve/flow_chart/how_to_1.html
2)NOMA式モデリングテンプレート | QPR ProcessDesigner
【5】産能大式
日本で一番歴史があり、一番有名とも言える業務フローの作図方式です。2008年の内部統制制度化以前は、上場申請書類の「Ⅱの部」 の業務フローを作成するのに欠かせない作図方式でした(内部統制制度化後、より簡便な業務フローの作図方式が普及していきました)。記号やルールを覚えるのに苦労しますが、マスターすれば余計なコメントなどを記載せず、記号だけでフローチャート図が書けてしまう点がメリットです。
使用用途・目的としては、事務フロー、マニュアル、業務改善、システム分析等、幅広い目的で活用されています。粒度の細かい事務作業や業務手続を書き表すのに適していると言えるでしょう。
作図上の特徴としては、下記が挙げられます。
- 横書きのフローで、工程・時間経過を“左から右”の流れで表現します。
- 記号(図形)は大きく分けて「工程記号」「帳票記号」「現物記号」の3つ + 「線」(接続線)の区分が存在します。(「工程記号」には4つの基本形があり、基本形に色・マーク・向き・二重化などの特徴を施し、定義づけされた「詳細記号」の形となります。)
- 帳票記号の書き方が特徴的です。はじめてフローにあわられた帳票は“大きな四角”、二度目以降に現れた帳票は両端が丸い“短冊型”で表現。この使い分けによって、どこで新規帳票が作成され、それを使って回付や追記されている流れが明確になります。
1)産能大式フローチャート – 内部統制入門Navi
http://www.internalcontrol-navi.com/impruve/flow_chart/sannou.html
2)業務フロー.産能大式[業務フロー図] – 株式公開入門Navi
【6】業務フローチャート形式
業務フローチャートの特徴としては、どの図形がどんな意味を持つのか覚えなくてもよい、または考え込ませないといった、読み手のスキルに合わせたシンプルな構成になっている点です。
実は業務フローチャートの書式としては、これと言った定められた共通ルール的なものはありません。
一番単純なものは、使用する図形は四角い図形のみで、それらを接続線で結ぶだけのフローチャートで作られていたりしますが、判断図形やシステム図形、他プロセスへの接続図形など数種類の図形を追加した形で作り上げていく記述ルールがよく採用されています。
【まとめ】フローチャートの種類と特徴
以上、フローチャートの代表的な5種類とSPS式のフローチャートの計6種類を紹介して参りました。
振り返って特徴別に分けますと、大体下記のような形になるかと思います。
- 日本工業規格(JIS)
- データフロー図(DFD)
- BPMN形式
- NOMA方式
- 産能大式
- 業務フローチャート(業務可視化・改善、内部統制)
今回ご紹介させていただいた中から、みなさまの目的に沿ったフローチャートが見つかりましたら幸甚です。
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業務可視化NOTE 運営事務局 編集担当
「フローを書けと言われたが、どのように書いて良いのか分からない」
「検索してみたけれどフローチャートと言っても種類が沢山あるみたい」
「どの記法が良いのか分からない」
「何種類のフローがあって、それぞれどのような特徴があるのだろう?」
「各フローはどのような人や目的に適しているのだろう?」