BPMN図を理解する近道は、記号を暗記することではなく、実際の業務フローのサンプルを見て「誰が」「何を」「どの順序で」行うのかを読み取ることです。
この記事では、現在も確認できるBPMN図のサンプルサイト6件を、日本語・ダウンロード可否・向いている用途で比較します。あわせて、BPMN図の基本的な読み方と、自社業務へ転用するときの手順も解説します。
BPMN図のサンプル6選・比較一覧
※各リンクと掲載内容は2026年7月14日に確認しました。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
| サンプルサイト | 日本語 | 主な内容 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| bpmn.org | 英語 | BPMN図の描画例 | まず図の形を見たい人 |
| Camunda BPMN Examples | 英語 | 請求、エスカレーション、並列処理など | 実務的な記述パターンを学びたい人 |
| HEFLO BPMN Examples | 英語ほか | 購買、売掛、オンボーディングなど | 業務別の事例を探したい人 |
| 厚生労働省 人口動態調査事務システム業務フロー | 日本語 | 凡例付きの行政業務フロー | 部門・システムをまたぐ日本語例を見たい人 |
| Edraw BPMN図サンプル | 日本語 | 編集可能なテンプレート例 | 図を作り始めたい人 |
| Questetra ワークフローサンプル | 日本語 | 業務別のワークフロー事例(更新終了) | 日本企業の業務例を探したい人 |
BPMN図とは
BPMNは「Business Process Model and Notation」の略で、業務プロセスを共通の記号で表すための国際標準の記法です。OMGが公開している正式仕様の現行版はBPMN 2.0.2です。
BPMN図では、主に次の4つを読み取ります。
- イベント:業務の開始・途中で起きること・終了
- アクティビティ:人やシステムが行う作業
- ゲートウェイ:条件分岐や並列処理
- プール/レーン:企業、部門、担当者、システムなどの役割
フローチャートとの大きな違いは、処理順だけでなく、役割分担と組織間のメッセージのやり取りまで標準的なルールで表せることです。
参考:OMG「Business Process Model and Notation Version 2.0.2」
目的別に見るBPMN図のサンプル
1. 単純な申請・承認フロー
最初に見るべきなのは、申請→確認→承認または差し戻し、という小さなプロセスです。開始イベント、タスク、排他ゲートウェイ、終了イベントの関係を理解できます。初心者は、要素を増やす前にこの最小構成を自分で描けるようにすると理解が早まります。
2. 部門をまたぐ受注・出荷フロー
営業、在庫管理、倉庫、経理など複数部門が関わる例では、レーンを使って担当を分けます。単に作業順を追うだけでなく、どこで情報や責任が引き渡されるかを確認してください。引き継ぎ箇所は、遅延や手戻りが発生しやすい改善ポイントです。
3. 例外・期限・エスカレーションを含むフロー
実際の業務では、正常系だけを描いても運用には使えません。未回答、在庫切れ、審査否決、期限超過などが起きたときに、誰へ通知し、どの処理へ戻るのかを表した例が参考になります。Camundaのサンプルには、タイマーやエスカレーションを含む実務的な記述例があります。
4. 人とシステムが混在する行政業務フロー
厚生労働省の「人口動態調査事務システム業務フロー」は、手作業、システム操作、帳票、データベース、条件分岐などの凡例があり、日本語で複雑な業務を読む練習に向いています。標準BPMNをそのまま使う部分と、組織独自の凡例を追加する部分を分けて考える参考にもなります。
BPMNサンプルサイト6選
1. bpmn.org:まずBPMN図の形を確認する
bpmn.orgのExamplesでは、ブラウザ上でBPMN図の描画例を確認できます。説明は英語ですが、標準的な見た目を短時間でつかみたい場合に向いています。
2. Camunda:実務的なモデリングパターンを学ぶ
CamundaのBPMN Examplesには、請求処理、複数人承認、月次処理、期限超過、タスクの再割り当てなど、実務で遭遇しやすいテーマが掲載されています。正しい例だけでなく、避けるべき描き方も示されている点が有用です。
3. HEFLO:業務別のBPMN図を探す
HEFLOは、買掛金、売掛金、商品・サービス調達、顧客対応、入社手続きなど、業務テーマ別にBPMN図を探せます。自社と近い業務の全体像を見つけ、たたき台にしたい場合に向いています。
4. 厚生労働省:日本語の複雑な業務フローを読む
人口動態調査事務システムの業務フローは、複数ページにわたる実務的な例です。凡例が最初に示されているため、読み手に独自記号をどう説明するかという点でも参考になります。
厚生労働省「人口動態調査事務システム 業務フロー」PDFを見る
5. Edraw:日本語のテンプレートから作り始める
Edrawのページでは、日本語で複数のBPMN図サンプルを確認できます。閲覧だけでなく、テンプレートをベースに編集を始めたい場合の候補です。ただし、ツール固有の機能や利用条件は確認してから使ってください。
6. Questetra:日本企業の業務サンプルを探す

Questetraの旧ブログには、マーケティング、販売、製造、問い合わせ、請求、人材開発など、業務別のワークフロー事例が蓄積されています。ブログ更新は2018年に終了していますが、記事と図は現在も閲覧できます。最新製品の仕様確認ではなく、業務の切り分け方を見る資料として使うのが適切です。
BPMN図のサンプルを選ぶ3つの基準
1. 自社と同じ業務名ではなく、同じ構造を探す
業界や部門が違っても、「申請と承認」「受付と審査」「注文と出荷」のように構造が同じプロセスはあります。完全一致するテンプレートを探し続けるより、分岐、並列処理、例外処理の構造が近い例を選ぶ方が効率的です。
2. 読み手に合う粒度を選ぶ
経営層への説明では主要工程だけ、現場の改善では担当と受け渡し、システム要件では例外やデータまで必要になります。目的の異なるサンプルをそのまま流用すると、細かすぎる図または役に立たない粗い図になります。
3. 正常系だけでなく例外系があるか確認する
承認されなかった場合、必要書類が不足した場合、期限を過ぎた場合などが描かれているサンプルは、実運用へ転用しやすくなります。見た目が整っていても正常系しかない図は、業務改善や要件定義には不十分です。
BPMNサンプルを自社業務へ転用する5ステップ
- 目的を決める:共有、改善、標準化、システム化のどれかを明確にする
- 開始と終了を決める:どの依頼や出来事から始まり、何が完了したら終わるかを決める
- 登場者をレーンに分ける:顧客、部署、担当者、システムを混在させない
- 正常系を描く:主要タスクと判断だけで、まず端から端までつなぐ
- 例外と改善情報を足す:差し戻し、期限、手戻り、待ち時間、必要なデータを追加する
サンプルは完成品ではなく、構造を借りるための素材です。組織名だけを置き換えるのではなく、実際の担当者へのヒアリングで工程と例外を検証してください。
BPMN図でよくある失敗
- 一つの図に経営説明と作業手順の両方を詰め込む
- 部門名とシステム名を同じレベルのレーンに置く
- 分岐条件を書かず、どちらへ進むか判断できない
- 正常系だけを描き、差し戻しや期限超過を省く
- 記号の正確さを優先しすぎ、現場が読めない図にする
BPMN図のサンプルについてよくある質問
BPMN図のサンプルは無料で使えますか?
閲覧は無料でも、図の転載、テンプレートのダウンロード、商用利用の条件はサイトごとに異なります。実際に再利用する前に、各サイトの利用規約やライセンスを確認してください。
BPMN図と普通のフローチャートは何が違いますか?
一般的なフローチャートは処理順を柔軟に表せます。BPMNは、イベント、タスク、ゲートウェイ、プール、レーン、メッセージフローなどの意味が標準化されており、組織をまたぐ業務プロセスを共通ルールで表すことに向いています。
初心者はどのサンプルから見るべきですか?
まず、開始、2〜5個のタスク、1個の分岐、終了だけで構成された申請・承認フローを見てください。次にレーンを使った部門間フロー、最後にタイマーや例外処理を含む図へ進むと理解しやすくなります。
BPMN図をPowerPointやExcelで作ってもよいですか?
共有用の簡単な図であれば作成できます。ただし、記号の検証、修正履歴、XMLでの再利用、実行エンジンとの連携が必要なら、BPMN対応の専用ツールを使う方が安全です。
【まとめ】BPMN図はサンプルの構造を読み、自社向けに検証する
BPMN図のサンプルを見るときは、図の見た目だけでなく、開始と終了、担当者、分岐、例外処理に注目してください。自社と同じ業務名の例がなくても、同じ構造を持つサンプルは転用できます。
ただし、サンプルをそのまま正解と考えるのは危険です。実際の担当者に確認し、現場で起きる差し戻し、待ち、手戻りまで反映して初めて、改善や標準化に使える業務フローになります。
BPMN以外の表記法も含めて比較したい方は、フローチャート(フロー図)の種類一覧もご覧ください。
旧版(2018年)で紹介していたBPMNサンプルサイトの記録
旧版では、オープンソースBPMジャパン、ITmedia、TDFソリューションズのページも紹介していました。現在は到達できないページや更新状況を確認できないページが含まれるため、主要なおすすめ一覧から外しました。以下の画像は、当時の記事記録として残しています。








