エンタープライズ型RPA

弊社では「エンタープライズ型RPAへの展開」と称し、弊社なりにエンタープライズ型RPAはどういったもので、どういったメリットがあり、どのような機能が必要とされるかなどをご紹介させていただく企画として前回は、「エンタープライズ型RPAとは」と題し、対象業務や利用部門などの視点から「自動化業務範囲の拡大」の側面をご紹介されていただきました。

今回は「エンタープライズ型RPAとは」の続きとして自動化対象業務をどのように発見/分析し、開発/利用し、モニタリング/評価を行っていくかなどの「自動化メカニズムの範囲(より広い範囲の自動化ツール活用)」の側面でご紹介させていただきます。

2)自動化メカニズムの範囲(より広い範囲の自動化ツール活用)

世界有数のIT分野調査会社であるガートナー社では、テクノロジが出現したばかりの状態を脱し、幅広く利用され、より大きなインパクトをもたらす状態に入り、大きな破壊的可能性を持つようになったトレンドや、今後5年間で重要な転換点に達する、変動性が高く、急成長しているトレンドを、「戦略的テクノロジ・トレンド」と呼び、昨年10月に「戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10」の2020年版を発表しました。

2020年版の戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10で、一番最初にあげられているのが、「ハイパーオートメーション」と呼ばれる概念で、複数の機械学習 (ML)、パッケージ・ソフトウェア、自動化ツールなどを組み合わせて一連の仕事を実行する概念と実装を表します。

ハイパーオートメーションでは、自動化のあらゆる手順 (発見、分析、設計、自動化、測定、モニタリング、再評価) を考え、自動化メカニズムの範囲や、そうしたメカニズムがどのように相互に関連し、それらをどのように組み合わせて調整できるかを理解することが重要だと述べられています。

また、この技術トレンドは、ロボティック・プロセス・オートメーション (RPA) から始まっていますが、RPAツールだけではなく、人工知能 (AI)、プロセスマイニング、その他さまざまな最先端のツールを加えることで、自動化の機能がさらに拡大され、今までにない知的作業のさらなる自動化を可能にすると説明されています。

今回は、このハイパーオートメーションで述べられている自動化のあらゆる手順 (発見、分析、設計、自動化、測定、モニタリング、再評価)に従って、エンタープライズ型RPAをご紹介させていただきたいと思います。

a)発見、分析、設計フェーズ

まずは、発見、分析、設計フェーズですが、RPAを導入している企業の中で規模の拡大がなかなか思ったように進まない、RPAの導入を試みたがうまくいかなかった理由の中に「対象とする自動化すべき業務が見からない/見けられない」とする割合が高く、RPAの対象とすべき非効率な業務を“発見”することの難しさが、RPAの導入・拡大展開を潜在的に阻んでいる部分があると考えられます。

一般的にRPA対象業務は、まずはRPAの推進組織がRPAの対象となる部門に、RPAとはどのようなものか、どの業務(IT作業)に有効に機能するなどの広報活動を行います。その後、対象部門から上がってきたRPA対象候補業務(IT作業)を収集・分析し、その業務(IT作業)の範囲、有効性、実現性、費用対効果などの観点から簡易的に評価し、発見していることが多いのではないかと思います。

本来は、RPAを推進されている組織の方々が、RPAの対象となる部門の全ての業務を十分把握できれば、対象部門から対象候補業務(IT作業)を上げていただかなくても、対象業務(IT作業)の発見を行うことが可能かと思われます。しかし、多くの企業ではひと昔前とは違い、多くのシステムやツールを活用しIT化されている業務の範囲も広がっているため、現実的にはなかなか難しいと思われます。

また、この方法では、対象部門の方々の多大な協力とRPAの正しい知識が無いと網羅的に全ての対象候補業務(IT作業)を上げていただくことは難しいと思われます。

そういった意味において、対象部門での全てのIT作業を自動的に収集・分析、一連のプロセスとして可視化、問題点を指摘するツールとして近年「プロセスマイニング」が脚光を浴びています。

プロセスマイニングでは、情報収集・分析の方法として大きく2種類に分類されます。1つ目は基幹システムとして利用しているSAPやOracleEBSなどのERPパッケージの操作ログから必要情報を収集・分析する方法と、2つ目は専用ツールを利用PCに導入し、該当操作員のIT作業操作ログから必要情報を収集・分析する方法です。

但し、いずれの方法もそれぞれに欠点があり、ERPパッケージの操作ログによる方法では、ERPパッケージの操作以外のOfficeツールなどで行っている補助的なIT作業を対象と出来ません(特に日本では、ERPパッケージに必要情報を登録する前後にOfficeツールなどで補助的な情報加工を行っている場合がみられる)。また、専用ツールによる操作ログによる方法では、複数の操作員が別々に行っている一連のプロセスの結びつけ(例えば、作業対象データの伝票番号などで一連のプロセスを把握するなど)が難しいとされています。

尚、プロセスマイニングによりIT作業のみを分析・改善を図るのではなく、従来からのBPM手法を活用することにより、IT作業のみならず、人間の作業も含めて業務プロセス全体を可視化することにより、部門間での重複作業や非効率な作業を洗い出し、効率化を図っていくと共に、人とRPAの協働をさらに一歩進めることが可能になるのではないかと思います。

b)自動化フェーズ

自動化のフェーズでは、ロボットの開発・運用管理を担う人材不足である事から、既に導入済みのRPAツールの継続利用のみにこだわらず、ロボットの開発・運用管理を担う人材不足を補うことができる新たなRPAツール導入の再検討を始めている企業も出てきていると聞きます。

特にRPAの継続的な運用管理として、RPA運用中のトラブルとしてよく発生する「ロボットの誤動作・停止」などに関する問題や「個人情報や機密情報の漏洩」「ロボットの不正利用」といった情報セキュリティに関わる問題、さらに利用拡大において「使われないロボット」「野良ロボット」の発生も一定の割合が生じており、ガバナンス/セキュリティに関するきちんとした管理機能を持っているRPAツールの導入が不可欠と思われます。

さらに、前回の「自動化業務の範囲の定型業務から非定型業務への拡大と自立化への期待」でも書かせていただきましたが、RPAの対象とするデータは、デジタル化されたデータのみであるため、先進的な企業では事前にOCRにより紙のデータをデジタル化することにより、さらにRPAの対象範囲を拡大して行くのみではなく、OCR処理自体をRPAに操作させ、紙データを処理する業務もRPAの対象に拡大するなどが始まっています。

また、既に非定型問合せの窓口として活用されているチャットボットと組み合わせることにより、非定型問合せに合わせてRPAを動作させることにより、従来、人がガイダンスすることに行っていた入力内容やデータ選択が分かり辛い業務や専門の作業員がいないと行えなかった業務などを人のガイダンスなしにより簡単に実行させる試みや、AIと組み合わせることにより、業務の中でより条件が複雑で高度な判定が行う業務への適応なども始まっているようです。

c)計測、モニタリング、再評価フェーズ

計測、モニタリング、再評価フェーズでは、「企業内に展開されたRPAがどれくらい有効的に活用されているか」や「RPAがどれくらいの伸び率で展開されているのか」と言った観点などで計測・モニタリング・再評価を行い、実態に応じて随時RPAの改良を行っていく継続的な活動を行うことによりさらに高度で有用なRPAの活用が可能となります。

また、計測、モニタリング、再評価を行う上では、自社の自動化の目的に沿った自動化効果を図るKPIの開発が必要となり、削減工数・コストなどの数値的価値を評価する「定量効果」だけではなく、業務の品質向上・ストレス軽減などの質的価値を評価する「定性効果」を含めた評価を行う仕組み作りが必要となります。

最近では、RPAモニタリング専用ツールや一般的なログ解析ツール/BIツールなどを活用して、シナリオ毎の実行時間や実行ステータスなどの単純なRPA稼働状況項目を表/グラフ化するだけではなく、シナリオ毎の人的作業時間換算率、人的作業換算金額などの属性情報と実際のシナリオ毎の実行時間から計算される論理的な人的作業削減時間や、人的作業削減金額などのRPA有用性項目などの対象項目の所属する部署や業務的な分類などの集計項目に従って、対象期間、時間軸などにより簡単に表/グラフ化することにより定量的な効果のモニタリング評価を行うことができます。
また、最近はやりのWebを利用した簡易アンケート調査ツールを活用し、RPAに関する定性的な効果のアンケート調査を行い(項目に過重点数をつけ数値化して)簡単なモニタリング評価を行う企業も出てきているようです。

今回は、前回に続き「エンタープライズ型RPAとは」と題し、自動化対象業務をどのように発見/分析し、開発/利用し、モニタリング/評価を行っていくかなどの「自動化メカニズムの範囲」の側面でご紹介させていただきましたが、エンタープライズ型RPAに関するご理解は深まりましたでしょうか。

次回は「エンタープライズ型RPAの価値」と題し、RPAの価値の再確認とエンタープライズ型RPAによりRPAの価値の拡大などをご紹介させていただきます。

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