業務フローを書くことに慣れていない方は、作業図形の使い方に迷ったり、なんとなく配置したりしているのではないでしょうか。しかし、しっかりとした方針を持たずに業務フローの作成をしてしまうと、作成する人によってすごく粒度の粗い(図形が少ない)業務フローになってしまったり、逆に粒度が細かすぎる(図形が多すぎる)業務フローになってしまいます。
今回は、一般的な業務フローにおける作業図形の粒度の揃え方について解説します。
作業図形(アクティビティ)の粒度が「粗い」、「細かい」とは
まずは、作業図形の粒度が「粗い」、「細かい」とは具体的にどういう状態なのかを説明します。イメージとしては下図のようになります。
粒度が「粗い」状態
1つの作業図形に複数の作業担当者、複数の媒体(システム、帳票等)が含まれる状態です。
例えば、「データ入力」→「出力(印刷)」→「確認(ダブルチェック)」という一連の作業を一つの作業図形にしてしまっているような状態です。「確認(ダブルチェック)」は必然的に入力を行った担当者とは異なる担当者が実施するので、1つの作業図形に複数の作業担当者が含まれた状態になってしまいます。
この例における問題は、全ての作業担当者が可視化されないことです。実際には2人で行われている一連の作業が1人で行われているように見えてしまい、正確な現状業務の把握ができません。また、ダブルチェックは重要だからこそ異なる担当者が実施するものなので、それが業務フロー上に表現されなければ、その作業(チェック作業を含む一覧の作業)の重要度やリスクが業務フローの読み手には伝わりません。
※ここで言う作業担当者とは作業者個人ではなく、この業務に関係する人的リソースの種類のことです。
粒度が「細かい」状態
担当者も取り扱い媒体も同じで「行為(どうする)」だけが異なる作業図形が連続して並んでいる状態です。
例えば、「システムログイン」→「画面Aでデータ入力」→「画面Bでデータ入力」→「システムを閉じる」という一連の行為をそれぞれ別の作業図形にして並べている状態です。
この例における問題は、まず、作業図形の数が多くなりすぎて業務フローの見通しが悪くなることです。また、媒体を扱う目的が分かりにくくなります。例えばシステムを扱う作業では基本的に、入力(消去)なのか、出力なのか、参照なのかが分かるように書いてあれば十分です。帳票についても同様で基本的に、起票、保管、廃棄等が分かれば十分です。それ以上細かく書いてある場合は業務フローの可読性を下げることにつながります。
作業図形(アクティビティ)の粒度を揃える為の2つの軸
考え方としては非常にシンプルです。基本的に以下の2つの軸で考えることで、作業図形の粒度を揃えることができます。
1.担当者が異なれば作業図形を分ける
作業の担当者が異なる場合は、作業図形を分けて作図します。
2.媒体が同じなら1つの作業図形にまとめる
媒体(システム、帳票等、その作業で使用するモノや手段)が同じなら、1つの作業図形にまとめます。
※帳票出力の作業では新たな媒体(帳票)が発生しているので、この作業図形はまとめません。
上記2つの軸で考えることで、各作業図形を「誰が何をどうするのか」の単位で粒度を揃えることができます。簡易的に図で表すと以下のようになります。
作業名を分かりやすく記述する為の5つの注意点
適切に作業図形の粒度を分けたら、それが業務フローの読み手に正確に伝わるように作業名を記述しましょう。以下の5つの注意点を意識して記述することで、「誰が何をどうする」を正しく表現でき、一つ一つの作業図形が意味しているものが明確になります。
時刻・日付の表記
作業が定められた時刻で行われる場合には、その時刻を業務フロー上に明記します。
例:毎営業日9時、毎月20日
実施条件の表記
作業開始が時刻・日付以外の条件を満たした時に行われる場合には、その条件を業務フロー上に明記します。
例:依頼書10枚集まったら
他部門との連携
他部門との連携がある場合にはそれに関する情報を記述します。
- 連携方法、連携するもの(書類、ファイル等)、連携タイミングをコメント等で明記。
- 授受簿、受付簿等での授受管理がある場合には、業務フロー上に明記。
書類の動き
書類の動きは、明確にわかるように記述をします。
- 書類作成・起票する場合は明記。
- 他部門からの受け取り、他部門への送付は、それぞれ明記。
- 複写する場合は明記し、その後原本、複写それぞれの書類の流れがわかるように記述。
- 書類を保管または廃棄する場合は明記。
精査・検印・承認など
業務上、精査、検印、承認などがある場合はアクティビティとして必ず記入します。またその際、誰が実施しているのかも明記するようにします。
業務フローを読む上では、「分かりやすさ(見やすさ)」だけでなく「正確性」も重要です。「分かりやすさ(見やすさ)」は作業図形の粒度を揃えることである程度向上します。「正確性」とは誰が読んでも同じように理解できるという意味です。「正確性」を高める為には、適切な作業名を記述する必要があります。ここで紹介した記述方法を是非参考にしてください。
【まとめ】2つの軸で考えることで、作業図形の粒度が揃う
一般的に、業務上の一連の作業で担当者が変わるところというのは、それぞれの担当者の役割が大きく異なるところです。言い換えれば、業務上、その作業に求められる役割が異なるので、適切な役割を与えられた人が担当者になるということです。取り扱い媒体についても同様です。
例えば、「伝票を起票する」→「その伝票をチェックする」という一連の作業で、一人の担当者で実施するケースと、「起票」と「チェック」を異なる担当者が実施するケースでは「チェック」の役割が大きく異なります。後者の「チェック」には”ダブルチェック”の役割が求められますが、前者ではその役割は有りません。一人で実施するケースでは、この一連の作業を「起票」という1つの作業図形にし、「チェック」についてはその作業の詳細内容として扱うべきです。
作業に求められる役割について触れましたが、決して難しく考える必要は有りません。作業図形の粒度を2つの軸で考える背景には上記のような視点があるということです。実際に業務フローを書く際には、前述の「担当者が異なれば作業図形を分ける」と「媒体が同じなら1つの作業図形にまとめる」の2つの軸で考えることで、「作業に求められる役割」という単位で、作業図形の粒度が揃います。
これから業務フローを作成される方は、2つの軸と作業名の記述方法を意識して作成されることをおすすめします。
業務可視化NOTE 運営事務局 編集担当