業務可視化を内製化すべきか、外部に任せるべきかで迷う企業は多いです。内製化はノウハウが残る反面、知識不足だと目的ズレや粒度不統一で止まりがちです。本記事では、内製化のメリット・デメリットと、スケジュール・予算・人で判断する現実的な軸、内製×外部の使い分けを整理します。
内製化か外部活用か迷う前に押さえる前提
業務可視化はなぜ必要になるのか…よくある目的
業務可視化は「やりたいからやる」というより、やらないと前に進めない状況で必要になります。 なぜなら、業務は目に見えないままだと、管理も改善もできないからです。実際に取材をしてみて良く出てきたキーワードが、見えないものは管理できないでした。
現場で多い目的は、大きく4つに整理できます。どれが目的かで、求める成果物の粒度や進め方が変わります。
| 目的の型【よくある】 | 何を実現したいか | 可視化で必要になるもの |
|---|---|---|
| 業務改善・効率化 | コスト削減、作業時間短縮、納期短縮など | 現状の流れとムダ・滞留の把握 |
| システム刷新【現状把握】 | 入替前に業務が分からない状態を解消する | 業務とシステムの関係を含む業務フロー |
| DX推進【プロセス改革】 | 新しいやり方を作り直す | 現状と理想のギャップ整理、あるべきプロセス像 |
| 品質管理【業務品質の担保】 | 手順・工程を明確にして品質を維持する | 標準化できる手順、判断点の明確化 |
ここで重要なのは、目的が曖昧だと成果物がブレることです。 「システム刷新のため」と言いながら、肝心のシステムのレーンがないフローを作ってしまうと、目的に合わず意味が薄くなります。 まずは何のために可視化するのかを、内製化か外部活用かの検討より先に決めておくのが前提になります。
内製化を検討し始める典型パターン【必要に迫られる】
内製化を検討する会社の多くは、最初から「内製で行こう」と決めているわけではありません。 多くは、次のような必要に迫られるきっかけから始まります。
- システムの老朽化で入替が決まり、業務整理が間に合わない
- DXやビジネスモデルの変化で新しい運用を作る必要が出た
- 俗人化と退職リスクで業務が回らなくなる不安が顕在化した
- 組織再編・M&A・経営統合で業務統合と重複整理が発生した
- 業績悪化の立て直しで業務を棚卸して見直す必要が出た
そして、ほぼ必ず出てくるのが「まずExcelでやってみた」問題です。 Excelでフローを書こうとして、途中で作業効率の悪さや更新の大変さに詰まり、 「専用ツールを検討する」または「外部に相談する」という流れになりがちです。
さらにもう一つ大きい壁が、そもそもフローチャートを書いた経験がないことです。 研修や書籍で学んで着手しても、目的・粒度・書き方の揃え方が分からず、内製化が止まる要因になります。
内製化と外部活用の違いは何か【成果物と運用の責任範囲】
内製化か外部活用かの違いは、単に「誰が作業するか」ではありません。 本質は、成果物の品質を担保する責任と、運用し続ける責任をどこが持つかです。
| 観点 | 内製化 | 外部活用【コンサル・支援】 |
|---|---|---|
| 主導権 | 自社が主導し、自社の判断で進める | 外部が推進支援するが、判断は基本的に自社が持つ |
| 成果物の品質 | 自社で基準を作り、揃える必要がある | 経験・型により品質を揃えやすい |
| 運用・更新 | 自社で更新できる体制を作れる | 丸投げすると依存が残る【更新が外注前提になる】 |
| 得られるもの | ノウハウ蓄積、継続改善の自走力 | 知識・ノウハウ・時間・推進力を買える |
| つまずきやすい点 | 目的ズレ、粒度不統一、抜け漏れ、工数疲弊 | 目的に合わない成果物になるリスク【依頼設計が弱いと起きる】 |
よくある誤解として、外部活用は「作業を全部やってくれる」になりがちです。 しかし、コンサルを作業者として使うなら価値が薄いという話も出ています。 外部を使う意味は、経験がある人が全体を統括し、型を当て、失敗を避けることにあります。
一方で、外部に任せきりにすると、システム刷新の場面で典型的なベンダー丸投げと同じ構造が起きます。 自社が業務を理解していないと、提案を評価できず、目的に合わないアウトプットでも止められません。 さらに業務は変化するため、更新できない状態だと依存が固定化します。
つまり、内製化か外部活用かを決める前に押さえるべき前提は次の3つです。
- 目的を一言で言える状態にする【業務改善・システム刷新・DX・品質管理のどれか】
- 成果物の粒度を決める【俯瞰なのか、手順書レベルまで必要か】
- 運用と更新を誰が持つかを決める【作って終わりにしない】
この前提が固まると、次の章で扱う「内製化のメリット・デメリット」が、自社の状況に合わせて判断できるようになります。
業務可視化を内製化するメリットとデメリット
メリット…ノウハウが社内に残り自走できる
業務可視化を内製化する最大の価値は、成果物そのものよりも、可視化の考え方と進め方が社内に残ることです。 外部に「作ってもらう」だけだと、完成した瞬間はきれいでも、業務が変わったときに更新できず、結局また外部に依頼する流れになりやすいです。 内製化は遠回りに見えても、長期で見ると資産化しやすい選択です。
業務が変わっても更新できる【依存が減る】
業務は、システム刷新や組織改編だけでなく、日々少しずつ変化します。 この「変化」を前提にすると、可視化は一度作ったら終わりではなく、更新し続けるものになります。
内製化が効くのはここです。自社で更新できるようになると、次の依存が減ります。
- 外部に頼まないと更新できない
- 修正のたびに費用と時間がかかる
- 外部に説明し直す手間が毎回発生する
特にシステム刷新の文脈では、業務を自社で把握していないと、ベンダー提案の良し悪しを判断できません。 内製化で「業務を自分たちの言葉で説明できる」状態になると、対等に交渉できるようになります。
改善活動が回りやすくなる【継続運用】
業務改善は、可視化が終点ではなく、可視化は改善のスタート地点です。先述の通り、見えないものは管理できないので、改善の入口として可視化が必要になります。
内製化が進むと、改善のサイクルが回りやすくなります。
| 段階 | 内製化で起きやすい良い変化 |
|---|---|
| 現状把握 | 現場から情報を集める力が育つ【ヒアリング設計が上手くなる】 |
| 課題特定 | ムダ・滞留・二度手間が見える【改善対象が共有される】 |
| 改善案 | あるべき姿を描ける【DXのプロセス改革にもつながる】 |
| 運用 | 変化に合わせて更新できる【改善が一過性で終わらない】 |
この「回りやすさ」は、外部に丸投げして完成品だけを受け取る形だと得にくい部分です。 だからこそ、内製化は改善文化を根付かせたい会社と相性が良いです。
関係者の理解が進む【現場を巻き込める】
業務可視化は、どうしても現場の協力が必要になります。 ヒアリング時間やフロー作成時間が発生するため、現場から見れば「なぜそんなことをやるのか」と反発が起きやすいテーマです。
内製化で進めると、現場にとっても「外から突然やらされる」より、自分たちの業務を自分たちで整える感覚になりやすく、 結果として理解と協力を得やすいことがあります。
- 業務の前後関係が共有され、部門間の誤解が減る
- 属人化していた暗黙知が言語化される
- 新任者の立ち上がりが早くなる【引き継ぎの品質が上がる】
ただし、現場を巻き込むには、内製化でも外部活用でも、トップダウンで会社の業務として必要という周知が欠かせません。 ここが曖昧だと、内製化ほど現場負担が先に見えるため、むしろ抵抗が強く出ます。
デメリット…知識不足で止まる【目的ズレと成果物ズレ】
内製化の最大のリスクは、やる気や工数ではなく、知識不足のまま走ることです。 すると、成果物の品質が揃わず、目的に合わない可視化になり、疲弊して止まります。
典型的には次の3つがセットで起きます。
- 目的ズレ【何のために可視化するかが曖昧】
- 成果物ズレ【欲しい粒度と違うものが出来る】
- 運用ズレ【作ったあと更新できず形骸化】
粒度が揃わない【粗すぎる・細かすぎる】
内製化で最も多い失敗は、粒度がバラバラになることです。 同じプロジェクト内で、ある担当は手順書レベルまで細かく書き、別の担当は俯瞰図だけ、という状態が起きます。
粒度が揃わないと、次の問題が起きます。
- 比較できないので改善ポイントが抽出できない
- 統合して全体像を作れない
- レビューができない【良い悪いの判断基準がない】
特に注意が必要なのは、営業やコンサルなど「中身が変動する業務」です。 流れの外形は可視化できても、細かくしすぎると現実に追いつけず、メンテ不能になります。 どこまで書くかを最初に決めないと、内製化は迷子になります。
抜け漏れが出る【現状が見えないまま進む】
内製化では、現場ヒアリングの設計が弱いと、そもそも現状が見えていない状態でフローを書き始めてしまいます。 結果として抜け漏れが出て、完成しても使えない成果物になります。
よくある兆候は次の通りです。
- 例外処理があとから大量に出てくる
- 部署間の受け渡し【誰が何を渡すか】が曖昧
- システム刷新目的なのに、システムとの関係が書かれていない
この状態で進むと、あとから修正が膨らみ、内製化が「終わらないプロジェクト」になります。
作るほど負担が増える【維持更新で疲弊】
可視化は、作ることよりも、その後の維持と更新が負担になります。 Excelで始めた企業が詰まるのも、作業効率と更新の大変さが理由でした。 内製化でも同じで、運用設計がないと次の状態に陥ります。
- 更新が追いつかず、現場が見なくなる
- 最新版が分からず、信用されなくなる
- 担当者が疲弊し、引き継ぎができず止まる
だから内製化は、作る体制より維持する体制を先に考えると成功率が上がります。
内製化が失敗しやすい落とし穴【よくあるつまずき】
ここまでの内容を踏まえて、内製化のつまずきは「努力不足」ではなく、構造的に起きるものです。 良く語られてきた失敗例も、ほぼ次の型に収まります。
| つまずきの型【よくある】 | 起きること | 背景にある原因 |
|---|---|---|
| 目的が曖昧 | 成果物がブレて何の役にも立たない | 可視化のゴール設定がない |
| 粒度が不統一 | 統合できない、レビューできない | 書き方ルールと基準がない |
| 現場が協力しない | 情報が集まらず抜け漏れが増える | トップダウン周知がない |
| 作って終わる | 更新されず形骸化する | 維持更新の役割と頻度が決まっていない |
| ツール選定が後回し | Excelで疲弊し、途中で止まる | 作業効率と管理の設計がない |
ここまで読んで「内製化は難しそう」と感じたとしても、それは自然です。 ただし、内製化の価値は大きいので、次の章では現実的な判断軸と、内製と外部をどう組み合わせるかのおすすめパターンを整理します。
現実的な判断軸とおすすめの進め方【内製×外部の使い分け】
判断軸…目的と期限と体制【スケジュール・予算・人】
内製化か外部活用かで迷ったとき、最も実務で効くのは「気合」ではなく、目的と期限と体制で判断することです。 外部活用を選択される場合の共通項として、スケジュール、予算、人のアサインが重要だと語られていました。 これは可視化プロジェクトでもそのまま当てはまります。
まずは、判断を早くするために、3つの軸で自社の状況を整理します。
| 判断軸 | 確認ポイント【質問例】 | 内製が向く状態 | 外部活用が向く状態 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 何のために可視化するか【改善・刷新・DX・品質】 | 目的が明確で、社内で基準を作れる | 目的はあるが、成果物の型や粒度が定まっていない |
| 期限【スケジュール】 | いつまでに何が必要か【決まっているか】 | 期限に余裕があり、学びながら進められる | 期限が硬い【システム刷新など】 |
| 体制【予算・人】 | 専任・兼任の割合、現場協力、レビュー役はいるか | 推進役とレビュー役が確保できる | 人が足りない、経験者がいない、現場調整が難しい |
ここでのポイントは、内製化は人が必要ということです。 「人がいないけど内製で何とか」は、ほぼ確実に維持更新で詰まります。 逆に、目的が明確で体制が作れるなら、内製化は資産化しやすい選択になります。
また、BPOを絡める場合は前提がさらに厳しくなります。 外部委託する業務を切り出すには、可視化と標準化がないと判断できないため、BPO前提なら可視化は必須になります。
おすすめの型…最初は外部で伴走し途中から内製へ
結論として最も現実的で失敗しにくいのは、最初だけ外部の伴走を入れて、途中から内製へ移す型です。 これまでも「最初はアドバイザリー契約のように支援を受け、後は自社で回す会社がある」という話を度々お聞きします。
この型が強い理由は2つあります。
- 最初に型と基準を作れるので、粒度や書き方が揃う
- 運用前提で設計できるので、作って終わりになりにくい
イメージとしては、次のような分担です。
| フェーズ | 外部【支援】 | 内製【自社】 | 成果 |
|---|---|---|---|
| 立ち上げ | 目的整理、粒度設計、テンプレ化、教育 | 体制づくり、対象業務選定、関係者調整 | プロジェクトの土台が固まる |
| 初期作成 | レビュー、品質チェック、改善アドバイス | フロー作成、ヒアリング、初期運用 | 揃った成果物が溜まり始める |
| 運用 | 必要時のみ相談【点の支援】 | 更新・追加・改善を自走 | 可視化が資産として残る |
外部の役割は作業者ではなく統括とアドバイス
外部を使うときに最も注意したいのが、外部を作業者として扱うことです。 実際にプロジェクトを推進された方の意見からも「単なる作業者なら派遣やアルバイトでもよい」という言い方がありました。 外部の価値は、経験とノウハウと時間を買うことです。
具体的に外部に期待すべき役割は、次のようなものです。
- 全体の統括【どこから着手し、どこまで作るかを決める】
- 成果物の品質基準づくり【粒度、記号、例外の扱い】
- レビューと改善【抜け漏れや目的ズレを早期に潰す】
- 現場を動かす設計【ヒアリングの進め方、周知の打ち手】
逆に「全部任せればきれいに納品される」は危険です。 目的に合わない成果物が出てきても、自社が業務を理解していないと判断できず、丸投げ構造が固定化します。
内製側は定型業務から始める【可視化しやすい領域】
内製化を成功させるコツは、最初から難しい業務に手を出さないことです。 可視化しやすいのは定型業務だと言われていました。
定型業務は、流れが一定で、例外が少なく、標準化しやすいので、内製の初期に向きます。
- 経理・総務など管理系の定型業務
- 申請・承認・支払いなどルールが決まっている業務
- BPOを検討している単純作業【判断が少ない】
逆に、営業やコンサルのような「中身が変動する業務」は、外形だけを粗めに可視化する方が現実的です。 手順書レベルまで落とすと、更新が追いつかず、運用が破綻しやすくなります。
内製化の立ち上げは、できる領域で成功体験を作るのが一番の近道です。
作って終わりにしない【維持更新の運用設計】
内製化でも外部活用でも、最後に詰まるのは維持更新です。 可視化は「管理のために見える化する」ものなので、更新されない可視化は、管理の役に立ちません。
作って終わりを防ぐには、最低限次の運用を決めておくと強いです。
- 更新のトリガー【いつ更新するか】…ルール変更、システム変更、組織変更
- 更新の責任者【誰が持つか】…業務主管、事務局、プロセスオーナー
- レビューの仕組み【誰が確認するか】…粒度と抜け漏れのチェック
- 保管と共有【最新版の置き場】…最新版が分からない状態をなくす
特に重要なのは、更新が「誰かの善意」にならないことです。 会社の業務として必要というトップダウンの位置づけがないと、現場は忙しさの中で後回しになり、形骸化します。
外部活用を選ぶべきケース【丸投げが危険な理由も含む】
外部活用は「内製ができないから仕方なく」ではなく、状況によっては合理的な選択です。 特に次のケースでは、外部活用を前提に設計した方が失敗しにくいです。
- 期限が硬い【システム刷新、統合、監査対応など】
- 初めてで型が分からない【目的整理と粒度設計ができない】
- 社内の推進役が不在【兼任で回らない、レビューできない】
- 部門横断で揉めやすい【現場調整が難しい】
- 成果物品質が重要【刷新の要件定義、統制文書など】
ただし外部活用でも、丸投げは危険です。 システム刷新でよくある「ベンダー丸投げ」と同じで、業務を分かっていないと、出来上がった成果物が目的に合っているか判断できません。
外部活用を選ぶなら、最低限ここは自社で押さえるのが安全です。
- 目的を一言で定義する【何のための可視化か】
- 成果物のゴール像を決める【誰が見て何に使うか】
- 更新をどうするかを決める【納品後の体制】
この3つを押さえておけば、外部の力を借りながらも、内製化へ移行する道を残せます。 内製か外部かで悩むときは、二者択一にせず、内製×外部の使い分けで設計するのが最も現実的です。
【まとめ】業務可視化は内製化すべき?メリット・デメリットと現実的な判断軸
業務可視化の内製化は、ノウハウが社内に残り、業務変更にも追随できる一方で、目的や粒度が揃わないと成果物が使えず止まりやすいのが現実です。迷ったら、目的と期限と体制【スケジュール・予算・人】で判断し、最初は外部の伴走で型と基準を作り、定型業務から内製で広げる進め方が失敗しにくいです。
- 内製化の価値は成果物よりもノウハウが社内に残り自走できること
- 失敗の原因は努力不足ではなく目的ズレと粒度不統一と維持更新の欠如
- 判断軸は目的と期限と体制【スケジュール・予算・人】で整理する
- おすすめは外部が統括と助言を担い、途中から内製へ移す伴走型
- 内製の着手は定型業務から始め、運用設計で作って終わりを防ぐ


