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【業務フローと手順書の違い】粒度を間違えると可視化が止まる

【業務フローと手順書の違い】粒度を間違えると可視化が止まる

業務フローと手順書の違いが曖昧なまま可視化を始めると、粒度が迷子になりプロジェクトが止まりがちです。本記事では両者の役割を整理し、業務改善・システム刷新・BPOの目的別に「どこまで書くべきか」の判断基準と進め方を具体的に解説します。

業務フローと手順書は何が違うのか…役割とゴールを分けて考える

「業務を可視化したい」と言ったとき、実は多くの現場で業務フロー手順書が混同されています。

この2つは似ているようで、役割も、使う場面も、求められる粒度も違います。ここを整理しないまま進めると、可視化が途中で止まったり、出来上がった成果物が目的に合わなくなったりします。

まずは役割とゴールを分けて考えるところから始めましょう。

業務フローは全体像をつかむための地図

業務フローは、業務の流れを俯瞰して理解するための地図です。どこから始まり、何が入力され、どんな処理が行われ、どこへ渡り、何がアウトプットされるのか…を一枚で把握できるようにします。

ポイントは、業務フローが狙うのは「業務の見える化」だということです。見えないものは管理できません。改善・刷新・標準化など、何かを変えようとした瞬間に「今どうなっているか」が見えないと、議論も設計も進みません。

業務フローで表現したい要素を、最低限に絞ると以下のようになります。

  • 登場人物…誰がやるのか(部門・担当・役割)
  • 流れ…何がどの順番で起きるのか
  • 分岐…判断が必要な箇所はどこか
  • 受け渡し…どこで情報・成果物が渡るのか
  • インプットとアウトプット…何を受け取り、何を出すのか

ここで重要なのは、業務フローは「全体を理解するための表現」であり、いきなり細部まで書き尽くすものではない、という点です。

特に、複数部門が関わる業務や、システム刷新のように影響範囲が広いテーマでは、業務フローが共通言語になります。

業務フローが役立つ場面見えるようになること
業務改善手戻りや待ち、ムダが起きる位置
システム刷新現状業務の流れ、システムとの接点、論点
BPO切り出せる定型業務の候補、標準化の必要箇所

手順書は迷わず実行するためのナビ

一方で手順書は、作業者が実行できるようにするためのナビです。業務フローが「地図」なら、手順書は「曲がる場所や操作手順まで教えてくれる道案内」です。

手順書が狙うのは「実行の再現性」です。誰が担当しても同じ品質で業務が回るように、具体的な操作・判断・注意点を落とし込みます。

手順書に含まれやすい内容は、例えば次のようなものです。

  • 画面操作…どの画面で何を入力するか
  • 入力ルール…コード体系、必須項目、形式
  • 判断基準…どの条件でAに進むかBに進むか
  • 例外対応…エラー時、差し戻し時、特殊ケース
  • 参照情報…規程、帳票、テンプレ、保管場所

つまり、手順書は業務を「回す」ための成果物です。属人化を解消したい、教育コストを下げたい、監査対応で手順の一貫性を示したい…といった場面で強い効果があります。

ただし、手順書は書き始めると一気に細かくなり、ボリュームも増えます。だからこそ、最初から手順書を作ろうとすると、現場が疲弊しやすい…という落とし穴があります。

【同じ題材】でもアウトプットが変わる理由

同じ「経費精算」という題材でも、業務フローと手順書ではアウトプットがまったく変わります。

違いを分かりやすくするために、イメージを並べます。

観点業務フロー手順書
目的全体の流れを把握する迷わず実行できるようにする
粒度粗め〜中程度(俯瞰)細かい(操作・判断まで)
対象読者管理者、改善担当、企画、IT、関係部門担当者、引き継ぎ先、新人、外部委託先
更新頻度業務変更・組織変更・システム変更で更新操作変更・例外増加・ルール更新で頻繁に更新
よくある失敗粗すぎて使えない細かすぎて作れない・維持できない

この違いが生まれる理由はシンプルで、業務の可視化には目的があるからです。

業務改善なら、ボトルネックが見える粒度が必要です。システム刷新なら、ベンダーと対等に話すために「現状業務が説明できる」粒度が必要です。BPOなら、切り出し判断と標準化に耐える粒度が必要です。

つまり、成果物の粒度は「どこまで書けるか」ではなく、「何のために使うか」で決めます。

この前提を押さえると、次の判断がしやすくなります。

  • 今つくるべきは業務フローか、手順書か
  • 業務フローをどこまで詳しく書くべきか
  • 手順書はどの範囲を優先して整備すべきか

次の章では、粒度を間違えたことで可視化が止まる…典型的な失敗パターンを整理します。

粒度を間違えると可視化が止まる…よくある失敗パターン

業務可視化の現場でつまずく原因の多くは、ツールの問題ではなく粒度の設計ミスです。

「どこまで書けばいいのか」が曖昧なまま走り出すと、途中で作業が止まり、現場の協力も得にくくなり、成果物も目的に合わないものになります。

ここでは、実際にプロジェクトを推進された方への取材で語られていた実態も踏まえつつ、特に起きやすい失敗を整理します。自社の状況に照らして、当てはまるものがないかチェックしてみてください。

最初から手順書レベルを狙って現場が止まる

最も多いのが、可視化プロジェクトの初手でいきなり手順書レベルを求めてしまうパターンです。

手順書は「迷わず実行できること」がゴールなので、どうしても次の要素が必要になります。

  • 画面操作や入力ルールなどの細かな手順
  • 例外やイレギュラー時の分岐
  • 判断の根拠になる基準や規程
  • 帳票、テンプレ、保管場所などの参照情報

これを初手から全業務に対してやろうとすると、現場はこうなりがちです。

  • ヒアリングの時間が確保できない
  • 忙しくて後回しになり更新が止まる
  • 書く人によって粒度がバラつき成果物が揃わない
  • 細部の議論で揉めて合意形成が進まない

そして最後に起きるのが、プロジェクトの空中分解です。

取材でも「見えないものは管理できない」「まず見える化から」という話が繰り返し出ていました。最初に必要なのは、手順書ではなく業務の全体像が見える状態です。

おすすめは、次の順序で作ることです。

段階作るもの狙い
最初業務フロー全体像と論点を揃える
重点業務の手順書属人化を潰す、品質を揃える
最後運用ルールと更新体制作って終わりを防ぐ

いきなり全件を完璧にするのではなく、段階的に落としていく方が現実的です。

フローが粗すぎて改善にも刷新にも使えない

反対に、業務フローを作ったものの粗すぎて使えないという失敗もあります。

ありがちなのは、次のような状態です。

  • 「受付」「処理」「確認」「完了」のように抽象度が高すぎる
  • 誰がやっているかが分からない
  • どこで判断が発生するかが見えない
  • システムや帳票との接点が分からない

このレベルだと、業務改善にもシステム刷新にも使いづらくなります。特にシステム刷新では、現状業務が分からないままベンダーに依存すると、相手の言い分で設計が進みやすくなり、結果的に「使いにくいシステム」「費用だけ膨らむ」といった失敗につながります。

では、どの程度の粒度が必要か。答えは「目的で変わる」ですが、最低限の目安として改善にも刷新にも使える業務フローは次を満たす必要があります。

  • 担当が分かる…部門や役割のレーンがある
  • 分岐が分かる…判断ポイントが見える
  • 受け渡しが分かる…どこで誰に渡すか
  • インプットとアウトプットが分かる…何を受けて何を出すか

「地図」として役に立つために、最低限迷子にならない情報は必要ということです。

なお、取材で触れられていた「目的はシステム刷新なのに、成果物が見づらくて重要なことが分からない」ケースは、まさにこの失敗の典型です。流れが追えない、システムの関与が見えない、業務の流れとデータの流れが混ざっている…こうなると、目的に合わない成果物になってしまいます。

例外を入れすぎて読み手が迷子になる

業務フローは「全体像の地図」ですが、作る側が丁寧になりすぎると、例外を盛り込みすぎて読めない地図になります。

現場の感覚としては「漏れがあると怖い」「後から指摘されたくない」という心理が働きやすく、結果として例外を詰め込む方向に進みがちです。

ただ、例外をフローの中に混ぜ続けると次の問題が起きます。

  • 本筋の流れが見えなくなる
  • 分岐が増えすぎて理解に時間がかかる
  • 更新のたびに全体が崩れ、メンテができなくなる

ここからは、例外盛り込み型のフローで特に起きやすい3つの落とし穴を見ていきます。

定型とイレギュラーを分けずに混ぜてしまう

可視化しやすいのは定型業務です。決まった手順で同じ流れを回す業務は、フローに落としやすく、標準化もしやすい。

一方で、イレギュラーが多い業務や特殊業務は、分岐が増え、パターン化が難しくなります。取材でも、広告業界のように特殊性が強い業務はシステム化や可視化が難しいという話が出ていました。

ここでやりがちなのが、定型の流れにイレギュラーを混ぜ込み、一本のフローで全部を表現しようとすることです。

おすすめは、分けることです。

  • 定型の基本ルートをフローの主線にする
  • イレギュラーは補足として別に逃がす
  • 頻出の例外だけをとして最小限入れる

こうすることで、フローは「地図」としての役割を保ったまま、例外にも対応できます。

判断基準が曖昧で人によって解釈が変わる

例外や分岐が増えるほど重要になるのが判断基準です。

フロー上で「確認する」「判断する」と書いてあるだけでは、人によって解釈が変わります。結果として、同じケースでも担当者によって処理が違い、品質が揃わなくなります。

判断基準が曖昧なままだと、可視化は次のどちらかに崩れます。

  • フローを詳細化して無理やり書き足し、複雑になって読めなくなる
  • フローを諦めて、結局口頭の暗黙知に戻る

判断基準を明確にするコツは、フローの中に全部書かないことです。フローは流れを表現し、判断基準はリンク別紙に逃がす設計が向いています。

こうした「フローに情報を紐づけて管理する」考え方は、ツールを使う場合にも効きます。フローだけで抱えず、参照情報を関連付けしておくことで、解釈の揺れを減らせます。

更新の責任者が決まらず古くなる

最後に、意外と多いのが作った後に古くなる問題です。

業務は変化します。組織変更、ルール変更、システム変更、例外の追加…放っておくとフローも手順書も現場の実態とズレます。

特に、ベンダーや外部に丸投げした場合は「更新できない」「更新するたびに依頼が必要」という構造になりやすく、可視化が資産になりません。

更新が止まる原因は、だいたいこれです。

  • 誰が更新するかが決まっていない
  • いつ更新するかが決まっていない
  • 何を更新対象にするかが決まっていない

最低限、次の3点は決めておくと、可視化が形骸化しにくくなります。

決めること
責任者業務ごとのオーナー、事務局、部門代表
更新トリガールール変更、システム改修、監査指摘、月次レビュー
更新範囲フロー、手順書、関連資料リンク、帳票テンプレ

粒度は「書き方の問題」に見えますが、本質は目的と運用の設計です。目的に対して必要な粒度を決め、例外の扱いを分け、更新できる体制にする…これができると可視化は止まりにくくなります。

次の章では「どこまで書くべきか」を目的別に整理し、業務フローから手順書へ段階的に落とす実務ガイドを紹介します。

どこまで書くべきか…目的別に粒度を決める実務ガイド

「どこまで書けばいいのか」という悩みは、可視化プロジェクトのあるあるです。

結論はシンプルで、粒度は目的で決めます。逆に言えば、目的が曖昧なまま粒度を決めようとすると、手順書レベルまで掘り過ぎたり、粗すぎて使えなかったりします。

ここでは、取材で出てきた代表的な目的の型…業務改善システム刷新BPO…の3つに絞り、実務で困らない「粒度の決め方」を整理します。

【業務改善】ボトルネックと手戻りが見える粒度

業務改善の目的は、コスト削減、効率化、納期短縮など「改善したい結果」が先にあります。だから業務フローは、手順の細部よりもどこでムダが起きているかが見える粒度が最優先です。

改善で見えるようにしたい典型ポイントは次の通りです。

  • 待ち…承認待ち、確認待ち、差し戻し待ち
  • 手戻り…不備→修正→再提出の繰り返し
  • 二重入力…同じ情報を複数の帳票やシステムへ入力
  • 属人化…特定の人だけが判断・処理できる
  • 例外発生…定型ルート外が頻発している

この目的では、業務フローの中に「クリック手順」まで書く必要はありません。むしろ細かすぎると議論が止まります。

粒度の目安としては、次が揃うレベルを狙うと改善が進めやすくなります。

見えるようにする要素粒度の目安
担当部門・役割単位でレーンを分ける
分岐承認や判断が必要な箇所を明示する
受け渡しどこで誰に渡るかが追える
滞留ポイント待ちや差し戻しが起きる箇所を見える化する

業務改善では、まずこの粒度で「地図」を作り、次に改善対象の箇所だけを手順書レベルへ落としていくのが現実的です。

【システム刷新】要件定義とベンダー交渉に耐える粒度

システム刷新で可視化が重要になる理由は、取材でも強く語られていました。

現状業務を把握できていないと、ベンダーと対等に話せない。すると、ベンダー主導で話が進み、結果として「使いにくいシステム」「費用だけ増える」といった失敗が起きやすくなります。

刷新の可視化で重要なのは「業務の流れ」だけでは足りません。要件定義に効く粒度にするためには、システムとの接点が見える必要があります。

具体的には、次が見える粒度を狙うと、要件定義がやりやすくなります。

  • どの工程でシステムを使うのか
  • 何を入力し何が出力されるのか
  • どこで承認や判断が入るのか
  • どの帳票やデータが関わるのか
  • 例外がどれくらいの頻度で起きるのか

この目的の失敗例として、目的は刷新なのに「流れが追えない」「システムのレーンがない」「業務の流れとデータの流れが混ざっている」ような成果物が出てくる話がありました。これは刷新の目的に合っていない粒度と表現の典型です。

刷新用の粒度の目安を、実務向けにまとめるとこうです。

要件定義で必要になる要素粒度の目安
業務の主線開始から終了まで途切れず追える
システム接点入力・参照・出力のタイミングが分かる
判断ポイント承認条件や判断の分岐が分かる
帳票・データ最低限「何を扱っているか」が分かる

ここまで揃っていれば、ベンダーが出してくる案に対して「それで現場は回るのか」「例外はどうするのか」といった議論ができます。つまり、可視化が交渉力になります。

【BPO】切り出しと標準化ができる粒度

BPOでは、結論として可視化と標準化が事前にできていないと始まらない、という強い主張がありました。

なぜかというと、外に出すには次の判断が必要だからです。

  • どの業務を切り出すのか…現状把握がないと判断できない
  • 切り出した業務は定型か…判断を伴う業務は外に出しにくい
  • パターンは何個あるか…多すぎるとコストが膨らむ

つまりBPOの粒度は「実行できるか」より先に、切り出し判断と標準化に耐えることが重要です。

この目的に向いた粒度の目安は次の通りです。

BPOで必要になる要素粒度の目安
定型ルート「いつも通り」の流れが一本で示されている
分岐の整理分岐は「頻出」と「例外」に分けて扱う
入力・成果物委託先に渡すもの、受け取るものが分かる
パターン数の把握10パターン問題にならないように分類できる

ここから先は、BPO対象の業務だけを手順書化していく、という段階的な設計が効きます。

まずは定型業務から着手する

可視化が進む会社ほど、最初から難しい領域に突っ込まずに、定型業務から着手します。

理由は明確で、定型業務は

  • 流れが安定していてフロー化しやすい
  • 標準化しやすく、BPOにもつなげやすい
  • 成果が出るのが早く、社内の納得も得やすい

経理や管理系の業務が取り組みやすいと言われるのは、この構造があるからです。

例外は別紙や補足に逃がす

BPOは特に、例外を全部フローに詰め込むと「外に出せない業務」に見えてしまいます。

そこでおすすめなのが、例外を混ぜない設計です。

  • フロー本体は定型の主線を太くする
  • 頻出する例外だけを最小限入れる
  • 残りは別紙補足へ逃がす

この分け方をすると、委託先への説明もしやすくなり、コスト試算も現実的になります。

フローから手順書へ段階的に落とす

「業務フローと手順書の違い」を踏まえると、実務は次の流れが最も崩れにくいです。

  1. 業務フローで全体像と切り出し候補を固める
  2. 対象業務を標準化して、定型ルートを確定する
  3. 必要な範囲だけ手順書へ落とす
  4. 更新の責任者と運用ルールを決める

ここまでできると、可視化が「作って終わり」ではなく運用できる資産になります。

粒度設計は、可視化の成否を決める中核です。目的を先に固定し、その目的に必要な粒度だけを選ぶ…この順番で進めると、現場も進行も止まりにくくなります。

【まとめ】業務フローと手順書の違い…粒度を間違えると可視化が止まる

業務フローは全体像を俯瞰して課題や論点を見つけるための地図で、手順書は迷わず実行するためのナビです。どこまで書くべきかは目的で決まり、改善・刷新・BPOで必要な粒度は変わります。最初から手順書レベルを狙うと現場が止まり、逆に粗すぎると使えません。定型を主線にし、例外は補足へ逃がし、段階的に手順書へ落とすと可視化が継続します。

  • 粒度は目的で決める…改善・刷新・BPOで必要情報が違う
  • 定型を主線にする…まず回る流れを一本で作る
  • 例外は混ぜすぎない…別紙や補足に逃がして迷子を防ぐ
  • フロー→手順書は段階的…必要な範囲だけ細分化する
  • 更新運用まで決める…責任者とルールがないとすぐ古くなる
可視化プロジェクト絶対に失敗させないための7つのステップ
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市橋 憲茂
市橋 憲茂(株式会社サン・プラニング・システムズ)
【業務プロセスの可視化・改善で20年】業務の見える化、業務シミュレーション分析による業務改善を推進。営業、コンサルタントを経て、現在はその価値を発信するマーケティング部門の責任者として、業務可視化の重要性を広く伝えながら、企業の改革を後押ししています。