業務フローを描いても【読みにくい】【更新できない】と現場で使われません。フローチャートなら全体の流れと相関が俯瞰でき、改善や刷新の土台になります。本記事では有効な理由、粒度の決め方、レーン設計と情報紐づけまで、誰が見ても伝わる設計の要点を整理します。
業務フローを「フローチャート」で描くと何が一目で分かるのか
業務フローを可視化するとき、最初にぶつかりやすい壁が「何を書けばよいか分からない」です。多くの現場では、まず箇条書きや文章で手順をまとめようとします。もちろんそれ自体が悪いわけではありません。ただ、業務改善やシステム刷新のように業務全体を把握して変えることが目的になると、文章中心の整理では見落としが起きやすくなります。
その点、フローチャートは全体の流れと関係性を一枚で把握できる形式です。だからこそ、業務の改善、DX、システム刷新、BPOの検討など「まず現状を押さえる」局面で採用されやすくなります。
箇条書き・文章手順では見えない「全体の流れ」と「前後関係」
箇条書きや文章手順は「作業そのもの」を伝えるには向いています。一方で、業務フローとして押さえたい情報、たとえば【どこから始まり、どこで分岐し、どこで戻り、どこで終わるか】は、文章だけだと把握しづらくなります。
たとえば、次のような状態は文章中心だと起きがちです。
- 同じ作業が別の場所でもう一度出てくるが、重複だと気づけない
- 承認や確認の工程が途中で抜けていても見落とす
- 例外処理がどのタイミングで発生するか分からない
- 前工程と後工程のつながりが曖昧になり、読んだ人によって解釈が変わる
こうしたズレが起きると、関係者の間で【この業務はこうだと思っていた】が増えていきます。業務改善では小さなズレでも後で効いてきますし、システム刷新では要件定義の段階で手戻りが増えます。
フローチャートは、作業を点ではなく線として並べます。入口から出口までを線でつなぐので、前後関係が強制的に見えるようになります。結果として、抜け漏れや重複が見つかりやすくなります。
| 整理の形式 | 得意なこと | 苦手になりやすいこと |
|---|---|---|
| 箇条書き・文章 | 作業手順の説明、担当者の教育 | 全体像、分岐・戻り、業務間のつながり |
| フローチャート | 全体の流れ、前後関係、分岐の条件 | 細かなノウハウの言語化、例外を全部盛り込むこと |
ポイントは【どちらが正しいか】ではなく【目的に合うか】です。業務全体を押さえたいなら、フローチャートが優先されます。
フローチャートが強いのは「俯瞰」と「相関(つながり)」
フローチャートの強みは、単に手順を並べるだけではありません。重要なのは俯瞰と相関です。
俯瞰できると、問題点が見つかる
業務改善では【どこが詰まっているか】を見つけることが第一歩になります。フローチャートは、全体を眺めることで次のような箇所が見えやすくなります。
- 確認や承認が多すぎる区間
- 人が止まる待ち時間が発生している区間
- 同じ情報を複数の場所に二重入力している区間
- 例外処理が頻発している区間
文章で読むと気づきにくい「多い」「長い」「戻る」が、図として見えるだけで把握しやすくなります。
相関が見えると、影響範囲が分かる
業務は単体で完結しません。ある部署の入力が別部署の作業の開始条件になり、別のシステムに登録された情報が請求や出荷のトリガーになることもあります。フローチャートは、このつながりを可視化するのが得意です。
相関が見えると、次の判断がしやすくなります。
- この工程を変えると、どの部署に影響が出るか
- このチェックを省略すると、どこで不具合が起きるか
- このシステムを入れ替えると、どのデータ連携が変わるか
特にシステム刷新では、相関を押さえないまま進めると【あとから気づいて作り直す】が起きます。フローチャートはそのリスクを下げます。
「見えないものは管理できない」──改善・刷新の前提としての可視化
業務改善でもDXでもシステム刷新でも、共通して言える前提があります。それが見えないものは管理できないです。
業務を変えたい、効率化したい、システムを入れ替えたい。こうした目的があっても、現状が見えないと次の判断ができません。
- 何を変えるべきか
- どこがボトルネックか
- 何が標準で、何が例外か
- どこまでをシステム化できるか
逆に言うと、可視化は【書類を作るための作業】ではありません。管理し、変えるための準備です。
また、可視化はフローチャートだけを指しません。業務の見える化には、一覧表やデータの整理も含まれます。ただ、業務の流れそのものを扱うなら、フローチャートが最も効きます。
ここまでをまとめると、フローチャートは次の目的に向いています。
- 全体像を揃えるために、関係者の認識差を減らす
- 改善点を見つけるために、詰まりや無駄を可視化する
- 刷新に備えるために、影響範囲と前提条件を押さえる
次の章では、実際にフローチャートを書こうとしたときに迷いやすい【どこまで書くか】【どの粒度で書くか】を整理します。
フローチャートで表現すべき範囲と粒度の決め方
フローチャートを書き始めると、多くの人が次の悩みにぶつかります。
- どこまで書けばいいのか分からない
- 細かく書きすぎて終わらない
- 粗く書きすぎて役に立たない
この悩みは、やり方が間違っているというより目的に対して粒度が決まっていないことが原因です。業務フローは【絵が上手いか】ではなく【使える粒度か】で価値が決まります。
ここでは、実際にプロジェクトを推進された方への取材で語られていた実務感に沿って【書く範囲】と【粒度】の決め方を整理します。
可視化しやすいのは定型業務:まず“書ける業務”から始める
可視化は、いきなり難しい業務から手を付けると止まります。まず狙うべきは定型業務です。定型業務は【いつも同じ手順で流れる】【例外が少ない】ため、フローチャートに落としやすいからです。
たとえば次のような業務は、比較的スムーズに形になります。
- 経理…支払、請求、精算、月次締め
- 総務…申請、承認、備品管理
- 人事…入退社手続き、勤怠、評価
- 管理部門のルーチン…定例報告、集計
最初から全社の業務を網羅しようとすると、時間も関係者調整も膨れます。そこでおすすめはまず一つの定型業務を選び、完成させることです。完成したフローが社内で【これなら分かる】【この形式なら使える】となれば、次の業務に横展開しやすくなります。
定型業務から始めるメリット
- 合意形成が早い…流れが固定されているので認識差が少ない
- 成果が出やすい…無駄な確認、二重入力、待ちが見つかりやすい
- BPO検討にもつながる…切り出せる業務の候補になりやすい
はじめに決めると迷いが減る項目
定型業務でも、書く前に次を決めておくと迷いが減ります。
- 入口と出口…どこから始め、どこで終わるか
- 単位…【1回の処理】なのか【月次】なのか
- 成果物…何を作るためのフローか
イレギュラー業務は無理に細かくしない:例外は“補足”で扱う
次に悩ましいのが、例外や特殊ケースが多い業務です。たとえば【売上計上が特殊】【案件ごとに対応が違う】【判断が人によって変わる】といった業務は、フローチャートに落とす難易度が一気に上がります。
このときの落とし穴が例外を全部フローに盛り込もうとすることです。例外を全部描くと、次のようになります。
- 分岐が増えすぎて読めなくなる
- 担当者の説明がないと理解できない
- 更新のたびに図が壊れて維持できない
そこで、現実的な方針はこうです。
基本フローはシンプルに描き、例外は補足として扱う
例外を補足で扱うやり方
- フロー上は【例外発生】の箱を置く
- 例外の中身は、別ページや注記でまとめる
- 例外が多い場合は【例外パターン一覧】を表で持つ
たとえば、イレギュラーが多い業務は次のように整理すると管理しやすくなります。
| 項目 | 基本フローに入れる | 補足で扱う |
|---|---|---|
| 毎回必ず発生する処理 | 入れる | 不要 |
| 発生頻度が低い例外 | 最小限だけ | 詳細は補足へ |
| 人の判断が大きい対応 | 判断点だけ | 判断基準は補足へ |
| 業界特有で特殊な処理 | 位置づけだけ | 条件と手続きは補足へ |
重要なのは、例外を無視することではありません。図の可読性と維持を優先し、例外は別の形で管理するという判断です。
営業・コンサル業務は「外形(流れ)」まで:手順書レベルは難易度が上がる
営業やコンサルの業務は、可視化ができないと思われがちです。実際には外形の流れであれば十分に可視化できます。
たとえば営業なら、次のような流れは業務として描けます。
- 問い合わせを受ける
- ヒアリングする
- 見積を作る
- 注文を受ける
- 営業事務へ引き継ぐ
- 納品、請求、フォロー
このレベルなら、担当者が違っても大きくは変わりません。だからフローチャートに落ちます。
一方で難しいのは、営業やコンサルの中身です。顧客によって会話が変わり、判断材料も変わります。ここを細かくしすぎると、フローはすぐ破綻します。
粒度を上げすぎると起きること
- 顧客ごとに分岐が増え、図が読めなくなる
- 担当者の個人スキルが前提になり、標準化できなくなる
- 作った瞬間から現実とズレて更新できなくなる
営業・コンサル業務を描くときの現実的な線引き
営業やコンサルは、次の考え方が実務的です。
- 業務フロー…外形の流れを描く
- 手順書…定型化できる部分だけ書く
- ノウハウ…判断基準や事例として補足で持つ
たとえば【ヒアリング】の中身を全てフローにしようとせず、ヒアリング項目をチェックリスト化し、フローからリンクさせる方が運用しやすくなります。
まとめると、フローチャートの粒度は次の順で決めると失敗しにくくなります。
- 目的を決める…改善か、刷新か、BPOか
- まず定型業務で成功体験を作る
- 例外は補足で管理する
- 変動が大きい業務は外形までに留める
次の章では、誰が見ても理解できるフローチャートにするための【基本設計】を扱います。配置、レーン設計、情報の混在を避けるコツなど、実務で効くポイントをまとめます。
誰が見ても伝わる業務フローチャートの基本設計
フローチャートは、描いただけで価値が出るわけではありません。むしろ読めないフローチャートは、ないより厄介です。関係者の解釈が割れ、意思決定が遅れ、結果として【結局よく分からない】のまま改善や刷新が進みます。
この章では、現場で使える形にするための【基本設計】をまとめます。狙いは一つで、初見の人でも迷わず読めることです。
読み手が迷わない「入口→出口」の流れとレイアウト(左→右 など)
フローチャートで最優先すべきは、読み手が【今どこを見ているか】を迷わないことです。そのために効くのが入口と出口が一目で分かる構造です。
まず決めるのは【読む方向】
業務フローは、読む方向が揃うだけで理解が一気に楽になります。たとえば【左から右】【上から下】など、どちらでもよいのですがページ内で一貫させるのが重要です。
- 左から右…横に流れるので俯瞰しやすい
- 上から下…縦に追うので詳細を追いやすい
ありがちな失敗は、途中で流れが折り返して往復することです。図を詰め込むほど起きやすくなりますが、読み手はそこで止まります。スペースを節約するより、読みやすさを優先した方が結果的に速いです。
入口と出口を【ラベル化】する
入口と出口は、言葉として明示すると誤解が減ります。たとえば次のように書きます。
- 入口…【依頼を受ける】【申請が提出される】【注文が確定する】
- 出口…【支払完了】【承認完了】【出荷指示完了】
入口と出口を明確にすると、途中の工程を削るべきか増やすべきかの判断もできるようになります。
フローは【3つの箱】でまず骨格を作る
最初から細部を描くと迷子になりがちです。そこで、まず骨格だけを作る方法が効きます。
| 骨格の箱 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 入口 | 業務が始まる条件 | 申請受付、問い合わせ受領 |
| 主要処理 | 必ず行う中核の流れ | 確認、登録、承認、実行 |
| 出口 | 完了条件と成果 | 完了通知、台帳更新、支払完了 |
この骨格ができた後に、分岐や例外を足していくと、全体の構造が崩れにくくなります。
役割の分担が分かる「レーン設計」:担当(部門)とシステムを分けて混ぜない
誰が見ても伝わるフローチャートには、共通点があります。それは役割分担が一目で分かることです。ここで効くのがレーン設計です。
レーンは【人のレーン】と【システムのレーン】を分ける
業務フローが読みにくくなる大きな原因の一つが、業務の流れとシステムの流れが混ざることです。担当者の作業と、システムへの登録や連携が同じ線で描かれると、何が起きているのか分からなくなります。
おすすめは、次のようにレーンを分けることです。
- 担当レーン…部署、役割、担当者
- システムレーン…利用するシステム、ツール、台帳
こうしておくと、次の判断がしやすくなります。
- どの工程が人の作業か
- どの工程がシステム処理か
- どこで情報が受け渡されるか
レーン設計のよくあるパターン
実務では、次の2パターンが使いやすいです。
| パターン | レーンの切り方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 部門軸 | 総務、経理、現場、管理者など | 引き継ぎや責任分界を押さえたい |
| 役割軸 | 申請者、承認者、実行者、確認者など | 複数部門で同じ役割がある |
レーンが増えすぎると読めなくなる
レーンは増やせば良いわけではありません。レーンが多すぎると、ページが広がり読めなくなります。そこで次の工夫が効きます。
- 最初は主要なレーンだけで描く
- 詳細な担当者の違いは【補足】や別ページで持つ
- 同じ行為をする担当が複数いるなら、役割軸に寄せる
責任の境目が見えると、改善が進む
レーン設計ができると、業務改善でもシステム刷新でも重要な【責任の境目】が見えるようになります。たとえば誰も責任を持っていない工程や、逆に二重にチェックしている工程が見つかります。ここが改善の当たりどころになります。
フロー図だけで終わらせない:関連情報(帳票・規程・URL)を紐づけて“管理できる”形にする
フローチャートを作る目的は、絵を描くことではありません。管理し、改善し、更新できる状態にすることです。だからフロー図だけで終わると、すぐ古くなります。
現場では【フローはあるけど、どこに何があるか分からない】が起きます。たとえば次のような状態です。
- 使っている帳票がどれか分からない
- 関連する規程やルールが見つからない
- システムの操作手順が別資料に散らばっている
- 担当者が変わると運用が揺れる
そこで重要になるのが関連情報の紐づけです。フローの箱に【必要な情報】を結びつけるだけで、運用の質が変わります。
紐づけると効く情報の例
- 帳票…申請書、チェック表、報告書
- 規程…社内ルール、決裁規程、内部統制関連
- 保存場所…共有フォルダ、文書管理、ナレッジ
- URL…システム画面、申請フォーム、マニュアル
フローと情報を結びつけると何が起きるか
紐づけができると、次の状態に近づきます。
- フローを見ると、必要資料にたどり着ける
- 担当が変わっても運用が崩れにくい
- 更新するとき、影響範囲が追える
特にシステム刷新や内部統制の文脈では、フローだけでなく【どの帳票を使い】【どのルールに従い】【どのシステムに入力するか】の整合が重要になります。フローに情報が紐づいていると、整合を取りやすくなります。
まずは【リンク一覧】を作るだけでも効果が出る
いきなり仕組み化が難しい場合でも、最初の一歩として【リンク一覧】を作るだけで効果があります。フローの工程ごとに、参照すべき資料を表でまとめます。
| 工程 | 参照する帳票 | 参照する規程 | 保存場所 |
|---|---|---|---|
| 申請受付 | 申請書 | 決裁規程 | 文書管理 |
| 内容確認 | チェック表 | 運用ルール | 共有フォルダ |
| 承認 | 承認記録 | 承認フロー | ワークフロー |
この表があるだけで、フローが【使える】ものになります。あとは運用に合わせて、リンクの粒度を調整していけばよいです。
ここまでの基本設計を押さえると、フローチャートは【読むための図】から【管理するための資産】に変わります。次にリード文、まとめ、スラッグ、ディスクリプションまで整える段階になったら、狙うキーワードに合わせてタイトル周りも一緒に仕上げられます。
【まとめ】業務フローはなぜフローチャートが有効?俯瞰と相関が“一目で分かる”理由
業務フローをフローチャートで描く最大の価値は【全体の流れ】と【前後関係】そして【つながり】を同時に俯瞰できることです。目的に合う粒度で定型業務から着手し、例外は補足に逃がすと更新しやすい資産になります。入口→出口の流れ、レーン設計、関連情報の紐づけまで整えると、可視化は【描く】から【管理する】へ進みます。
- 箇条書きでは見えない流れと相関を一枚で俯瞰できる
- 粒度を決める…定型業務から始め、例外は補足で扱う
- 入口→出口を統一し、往復しないレイアウトにする
- レーン設計で担当とシステムを分け、混在を防ぐ
- 帳票・規程・URLを紐づけて更新可能な形にする



