業務フローの書き方を正しく理解することは、業務改善・標準化・属人化防止の第一歩です。本記事では、業務フローの基本概念から、作成手順、図形ルール、テンプレート活用、運用管理までを体系的に解説します。初心者でもすぐに実務へ活かせる「見やすく・使える業務フロー図」の作り方を学べます。
業務フローとは何か(基礎理解編)|業務フロー 書き方の基礎

① 業務フロー/業務フロー図とは(業務フロー 書き方の前提)
業務フローは、組織で行われる一連の仕事の流れ(開始条件→処理→判断→終了条件)を論理的に並べ、誰が・何を・いつ・どの順で・どの情報を使って・どの成果物を出すかを明確にしたものです。
業務フロー図は、その流れを視覚化する図解表現です。代表的には以下の要素で構成します。
- 開始・終了 … プロセスの入り口と出口(契機・完了条件)
- 処理(アクティビティ) … 人やシステムが行う作業
- 判断(条件分岐) … Yes/No・複数条件で分岐
- 入出力 … 入力データ、帳票、画面、ファイル、APIなど
- スイムレーン … 担当部署・役割・システムごとの区画
- フロー線(矢印) … 手順の順序・方向
「業務フロー 書き方」を考える際は、読み手が最短で理解できる最小限の記号と統一ルールに絞ることが重要です。
② 業務フローの目的・効果(業務フロー 書き方の目的整理)
- 可視化と合意形成 … 関係者が同じ絵を見て議論でき、前提の食い違いを減らせます。
- 抜け漏れ・重複の発見 … 手戻りや二重入力、不要承認などのムダが見えます。
- 標準化・教育 … 新人・異動者へのオンボーディング資料として機能します。
- 改善・自動化の設計図 … RPA/ワークフロー/ERP連携などの要件定義の土台になります。
- 内部統制・品質保証 … 証跡、職務分掌、承認統制を設計・点検しやすくなります。
③ 業務プロセス・手順書・業務マニュアルとの違い(業務フロー 書き方の用語整理)
業務フロー図=全体俯瞰の地図、手順書=現場の操作ガイドという役割分担が基本です。
比較表 … 業務フロー vs 手順書 vs プロセス図(業務フロー 書き方の観点)
項目 | 業務フロー図 | 手順書 | プロセス図(プロセスアーキテクチャ) |
---|---|---|---|
目的 | 業務の流れを俯瞰し、関係者の共通理解と改善の土台を作る | 具体作業のやり方を誰でも再現できるようにする | 事業全体のプロセス体系・階層・関係性を定義する |
対象範囲 | 1つの業務〜サブプロセス単位 | タスク単位(画面操作・帳票記入など) | 企業全体〜部門横断の上位構造 |
粒度 | 中粒度(処理・判断・入出力) | 細粒度(クリック、入力項目、注意点) | 粗粒度(プロセス名、関係、KPI) |
利用者 | 業務担当、管理者、IT、監査 | 現場オペレーター、新人 | 経営層、業務設計者、BPR担当 |
更新頻度 | 変更時に随時(版管理が重要) | 手順変更のたびに頻繁 | 組織・事業変化時に見直し |
成果物の例 | スイムレーン図、フローチャート | 操作手順書、チェックリスト | プロセス階層図、プロセスマップ |
④ 用途別に見る業務フロー活用ケース(引継ぎ・改善・システム導入 など|業務フロー 書き方の活かし方)
- 引継ぎ・教育 … スイムレーンで役割を明示し、関連帳票や画面をリンク。
- 改善・標準化 … 重複作業・手戻り・待ちを特定し、削除・統合・自動化を検討。
- システム導入・要件定義 … As-Is/To-Beの差分を機能要件・業務ルールへ。
- 内部統制・監査対応 … 承認経路・職務分掌・証跡を明文化。
- ナレッジ共有 … 部署間のインターフェースを明確化し認識差を縮小。
書き始める前の準備フェーズ|業務フロー 書き方の下準備

① 目的・対象範囲を明確にする(業務フロー 書き方の出発点)
- 目的 … 属人化解消、教育、改善、要件定義、監査対応 など
- 評価指標 … 指摘件数減、引継ぎ期間短縮 など
- 対象範囲 … 例)見積~受注の「受注処理」まで 等
- 前提・除外 … 障害手順は除外 等
完成定義(DoD)の例 … 「レビュー2回完了し、Aランク指摘0件・Bランク3件以内でv1.0」
② 関係者・部署を洗い出す(業務フロー 書き方のステークホルダー整理)
- 人の役割 … 営業、受注、経理、物流、品質保証、CS 等
- システム … 受注、在庫、会計、WF、CRM 等
- 外部 … 仕入先、物流、顧客、監査人 等
関係者 | 責任(R/A/C/I) | 主な入力 | 主な出力 | レビュー観点 |
---|---|---|---|---|
営業部 | R | 見積依頼、顧客情報 | 受注申請、契約情報 | 承認条件、必要書類 |
受注管理 | A | 受注申請 | 受注確定、在庫引当指示 | 重複防止、マスタ整合 |
会計 | C | 請求条件 | 請求書、債権計上 | 計上タイミング、証憑 |
監査 | I | 統制設計 | 改善指摘 | 承認統制、追跡性 |
図はシンプル、詳細は台帳。例外が出たら台帳に追記し、図の肥大化を防ぐ。
③ 業務構成要素を分類・整理する(業務フロー 書き方の材料集め)
- 業務・作業 … 受注登録、契約確認、在庫引当、承認、請求発行
- 入力 … 申請フォーム、顧客マスタ、契約書、見積データ
- 出力 … 受注番号、引当結果、請求書、通知メール
- 判断条件 … 金額閾値、取引区分、在庫可否、信用限度
- 例外 … 在庫不足、与信停止、入力不備、返品
ワークシート例 … 業務分解シート・構成要素表(業務フロー 書き方の台帳化)
No | 作業名 | 実行主体 | 主な入力 | 主な出力 | 判断条件 | 注意点/例外 |
---|---|---|---|---|---|---|
01 | 受注申請の起票 | 営業 | 見積書、顧客情報 | 受注申請 | 見積有効期限内 | 添付漏れ注意 |
02 | 承認判定 | 上長 | 受注申請 | 承認/差戻し | 金額閾値 | 特価は追加承認 |
03 | 受注登録 | 受注管理 | 承認済申請 | 受注番号、在庫引当指示 | 顧客マスタ存在 | 二重登録防止 |
④ 粒度感の決定と分割基準(業務フロー 書き方のスコープ設計)
- 1アクティビティ=1~2文で説明できる単位
- 主体変更/入出力変更/判断挿入で工程を区切る
- レーン数は先に固定、例外は別図や注記に退避
⑤ 事前レビュー案出・仮設フロー試案(業務フロー 書き方の初期レビュー)
- 開始・終了・主経路のみの骨格図を共有
- レビュー観点(開始条件/承認/入出力/例外/KPI)を配布
- ドラフトはver0.x、本番は1.xで管理
チェック項目 | 判定 | コメント |
---|---|---|
開始/終了条件は明確か | OK/要修正 | 例 … 「受注申請承認」を終了条件に追加 |
例外処理は過不足ないか | OK/要修正 | 在庫不足時の振る舞いを追記 |
承認経路と権限が妥当か | OK/要修正 | 特価の追加承認者を定義 |
入出力の整合が取れているか | OK/要修正 | 受注番号の採番タイミングを明確化 |
図形・記号・ルールの基礎|業務フロー 書き方の共通ルール

① 基本図形・記号一覧(開始/処理/判断/入出力 他)
図形 | 名称 | 用途 | 例 |
---|---|---|---|
● | 端子(開始・終了) | プロセスの開始・終了 | 「受注開始」「請求完了」 |
■ | 処理(アクティビティ) | 人やシステムの作業 | 「見積作成」「受注登録」 |
◆ | 判断(条件分岐) | Yes/No・多岐分岐 | 「在庫あり?」「閾値超過?」 |
⌑ | 入出力 | データ・帳票・画面・ファイル | 「顧客情報入力」「CSV出力」 |
▭ | ドキュメント | 申請書・契約書など | 「受注申請書」「承認記録」 |
⬟ | 接続子(リンク) | 別ページ・他フローへの接続 | 「→受注処理フローへ」 |
② フロー線・矢印ルール(方向性・交差回避・矢印文字)
- 進行方向を統一(左→右 or 上→下)
- 交差回避 … ブリッジ or 図の分割
- 矢印文字 … Yes/No・承認/却下を明記
- 接続点の整列 … 中央/ポートに揃える
③ スイムレーン(担当・組織区分を表現する方法)
- 水平レーン(一般的)/垂直レーン(複雑向け)
- 人とシステムを分けてIT依存を可視化
- 原則4~6本以内に抑える
営業部 | 受注管理部 | 会計部 |
---|---|---|
受注申請を作成 | 承認フローを回付 | 請求書を発行 |
顧客情報入力 | 在庫確認 | 入金確認 |
④ 複雑構造 … 分岐/ループ/結合子の扱い方(業務フロー 書き方の応用)
- 分岐 … ◆にYes/Noなどラベルを明記
- ループ … 戻り条件を注記(例 … 添付不備→再申請)
- 結合子 … 結合A/Bなど番号で往復を対応付け
⑤ デザイン・視覚ルール(余白・配置・グルーピング)
- 余白=図形高さの1/2を確保
- 整列 … 左端・中央を揃える
- グルーピング … フェーズ単位で枠線・背景
- テキスト … 中央揃え・折返し最小
- 凡例 … 右下に記号の意味をまとめる
⑥ 書くときの4原則(シンプル・統一・目線・可変性)
- シンプル … 1フロー=1目的
- 統一 … 図形・色・方向を統一
- 目線 … 左上→右下へ自然誘導
- 可変性 … 将来変更に備えスペース確保
実践ステップ … 業務フロー図の作成手順|業務フロー 書き方の実践

① 全体仮案をざっと描く(業務フロー 書き方のスタート)
- 開始条件・終了条件・主要フェーズ(3〜5)を箱で配置
- 主経路のみ左→右で一本通す
- フェーズ名は動詞+名詞(例 … 申請受付/承認判定)
② 各業務ステップの記入(業務フロー 書き方の肉付け)
- 基本は処理→判断→入出力の順
- 1ステップ=1アクション、主体が変わる所で区切る
- 例外や注意は脚注・別表へ退避
③ 分岐・条件を表現(業務フロー 書き方の分岐設計)
- ◆にYes/Noなど分岐ラベルを明記
- ルール文は短く(例 … 金額>100万円?)
- 1判断の分岐数は2〜3までを原則
④ 繰返し・例外処理の組み込み(業務フロー 書き方の例外設計)
- 戻り線(ループ)は短く単純に
- 例外が多い場合は例外専用の小フローへ分離
⑤ 拡張可能性を考慮した構造設計(業務フロー 書き方の将来拡張)
- 別図へ分割し接続子で関連付け
- リンクは結合A/Bなど番号で往復対応
- 共通処理は共通フロー化して冗長性を防止
⑥ レビュー・抜け漏れチェック(業務フロー 書き方の品質確保)
- 開始/終了の明確さ
- 入出力の整合
- 承認・職務分掌
- 例外処理
- システム境界
- 読みやすさ
抜け漏れチェックリスト(テンプレート)|業務フロー 書き方の品質基準
チェック項目 | 判定 | コメント |
---|---|---|
開始/終了条件が明記 | OK/要修正 | 開始=申請起票、終了=承認記録 等 |
入出力が全処理に紐づく | OK/要修正 | 入力=申請、出力=承認/差戻し |
判断条件が文章で明示 | OK/要修正 | 金額>100万円? 等 |
例外/ループが簡潔 | OK/要修正 | 添付不備→再申請 等 |
承認・職務分掌が表現 | OK/要修正 | 特価時の追加承認 等 |
線の交差最小化 | OK/要修正 | 必要なら別図・接続子へ |
凡例/注記の付与 | OK/要修正 | 記号意味、略語、データ項目 |
⑦ 最終整理・調整・整形(業務フロー 書き方の仕上げ)
- 視覚整形 … 整列・等間隔・1画面収まり・凡例/版数明記
- 文言統一 … 時制・略語・表記ゆれの統一
- 版管理 … コード_業務名_v1.0_YYYYMMDD+変更履歴
よくある疑問・FAQ|業務フロー 書き方でつまずくポイント
Q1: どこまで細かく書くべきか?
目的に合わせて粒度を変えます。すべて詳細に描くと肥大化し、読まれません。
- 改善・分析 … 1〜2分で完了する単位まで分割
- 教育・共有 … 「誰が・何を・なぜ」を明示、操作は手順書へ
- 要件定義 … データ項目・入出力・判断条件を詳細化
Q2: 分岐が複雑すぎて見通せないときはどうすれば?
- 方法① … 主経路のみ本流に、例外は別図/注記
- 方法② … サブルーチン化+接続子
- 方法③ … 分岐表(デシジョンテーブル)で条件管理
Q3: フローと業務マニュアルの使い分けは?
項目 | 業務フロー | 業務マニュアル |
---|---|---|
目的 | 業務構造の理解・改善・標準化 | 具体的操作の再現 |
内容 | 処理・判断・入出力の関係 | 画面、入力項目、注意点 |
対象者 | 管理者・改善担当・関係部門 | 実務担当者・教育担当 |
形式 | 図(スイムレーン) | テキスト+スクショ |
Q4: フロー図が古くなる・更新できないという問題への対応
- 更新ルールの文書化 … 改訂トリガーを定義
- 担当者の明確化 … 部門ごとにプロセスオーナー
- 改訂プロセス … 改訂申請→レビュー→承認→公開
- 更新サイクル … 半年/年1回の棚卸し
前回版との比較表を残すとトレーサビリティ確保に有効。
Q5: 複数パターン(例外・オプション対応)をどう整理すべきか?
- 方法① … 通常版と例外版を分けて2枚
- 方法② … 共通部分のみ描き、特例は別図
- 方法③ … 条件を表形式で管理
パターン | 条件 | 承認ルート |
---|---|---|
通常案件 | 金額100万円未満 | 営業 → 上長 → 承認 |
特価案件 | 金額100万円以上 | 営業 → 上長 → 部長 → 経理 |
OEM案件 | 顧客指定仕様あり | 営業 → 技術 → 品質保証 → 部長 |
【まとめ】業務フローの書き方のポイント総整理
いかがでしたでしょうか。本記事「業務フロー 書き方 完全ガイド」では、業務フロー図の基本構成から、作成手順、図形ルール、テンプレート活用、運用管理までを一貫して解説しました。業務フローは単なる図ではなく、組織の生産性・品質・共有文化を高める設計図です。まずは小さな業務から着手し、見える化→改善→定着のサイクルを実践してください。業務を“描ける化”することが、可視化の第一歩です。
- ポイント① … 目的と範囲を明確にし、粒度を統一して描く
- ポイント② … 図形・記号・レーンを最小限にして読みやすさを優先
- ポイント③ … 骨格→肉付け→整形の3段階で効率化
- ポイント④ … テンプレート・チェックリストで品質担保
- ポイント⑤ … 定期更新と運用設計で価値を維持