内部統制では【業務の再現性】と【説明責任】が求められ、業務可視化は避けて通れません。ところがExcelで始めると、版管理が回らず最新版が不明になり、粒度も揃わず、監査で必要資料が探せないなど破綻しがちです。内部統制に強い進め方を整理します。
内部統制で業務可視化が必要になる理由
見えないものは管理できないという前提
内部統制の話になると「統制を強化する」「チェックを増やす」といった発想に寄りがちですが、そもそも前提として見えないものは管理できません。 業務を改善するときも、システムを入れ替えるときも同じで、何かを変えようとするなら、まずは現状が見える状態にする必要があります。
内部統制での「見える化」は、単にフローチャートを描くことだけを意味しません。 たとえば、担当者ごとの作業内容を一覧化する、入力するデータや帳票を整理する、承認や確認のルートを棚卸しするなど、業務を管理できる形に整えること全体が「業務可視化」です。
そして、この土台がないまま統制だけを積み上げると、次のような状態になりやすいです。
- 統制の対象となる業務範囲が曖昧で、どこまでやればよいか決まらない
- 監査対応のたびに「結局この業務って誰が何をしているんだっけ」と確認作業が発生する
- ルールはあるが実態と合っていないため、運用が形骸化する
内部統制の運用がうまく回っている会社ほど、実は統制よりも先に業務が見える状態を作っています。
内部統制が求めるのは業務の再現性と説明責任
内部統制で求められるのは、極端に言えば「正しい人が頑張る」ことではなく、誰がやっても同じ結果に到達できる状態です。 つまり、業務の再現性が必要になります。
また、内部統制は社内向けの取り組みに見えて、実際には説明責任の世界です。 監査やレビューの場面では、次のような説明が求められます。
- 業務はどのような流れで処理されるのか
- どこで誤りや不正が起こり得るのか
- それに対して、どの統制が、誰の責任で、どの頻度で実施されるのか
- 統制が実施された証跡はどこに残るのか
このとき、文章だけで説明しようとすると、聞き手の理解は人によってばらつきます。 一方、フローチャートで業務の前後関係を示し、承認や確認のポイントを明確にできると、 同じ情報を同じ構造で共有できるため、説明が格段に通りやすくなります。
| 内部統制で求められること | 業務可視化が提供できること |
|---|---|
| 業務の再現性 | 手順と判断ポイントを流れで定義し、誰でも追える状態を作る |
| 説明責任 | 業務の全体像と統制ポイントを一目で示し、説明のブレを減らす |
| 証跡の提示 | どの帳票・ログ・承認記録が証跡かを紐付けて探せる状態にする |
内部統制の議論が「統制の追加」「チェック表の作成」に偏ると、現場には負担感だけが残ります。 しかし業務可視化を先に整えると、統制の位置づけが明確になり、 必要な統制だけを合理的に配置する方向に進められます。
フローがないと統制の抜け漏れや属人化が起きる
内部統制のトラブルで多いのは「ルールがない」というより、ルールが業務に刺さっていない状態です。 その原因になりやすいのが、業務フローがない、または更新されていないことです。
フローがないまま統制文書を整備すると、次のような問題が起こりやすくなります。
- 統制の抜け漏れ…チェックすべきポイントが業務のどこにあるのか特定できない
- 統制の重複…同じ確認が別々の資料に存在し、運用負荷が増える
- 責任分界が曖昧…誰が確認し、誰が承認するのかが文脈依存になる
- 属人化…「あの人なら分かる」で回り、異動や退職で一気に崩れる
特に属人化は、内部統制の観点ではリスクが大きいです。 担当者が変わった瞬間に手順や判断が変わると、同じ統制を実施しているつもりでも 実態としては統制が機能していないケースが生まれます。
だからこそ、内部統制では業務の流れをフローとして固定し、 その上でどこに統制を置くのかを設計する必要があります。 この順番が逆になると、文書は整っているのに運用が回らない、という状態になりがちです。
まとめると、内部統制における業務可視化は「きれいな図を作る」ことが目的ではありません。 再現性と説明責任と運用可能性を担保するために、 業務を見える形にして、統制が機能する土台を作ることが本質です。
Excel運用が破綻しやすいポイント
更新と版管理が回らず最新が分からなくなる
内部統制の業務可視化をExcelで始める企業は多いです。理由はシンプルで、手元にあって、すぐ始められるからです。 ただし、内部統制は「一度作って終わり」ではありません。業務は日々変わりますし、組織変更やシステム変更があれば手順も承認ルートも変わります。 そこでExcel運用が最初に詰まりやすいのが更新と版管理です。
Excelの運用が進むほど、次のような状況が起きます。
- ファイル名に「最終」「最新版」「最終確定」などが増える
- 共有フォルダに類似ファイルが乱立し、どれが正か分からない
- 修正した人や修正理由が追えず、監査で説明できない
- 更新担当者が固定され、担当者不在で止まる
内部統制では「最新版がどれか分からない」は致命的です。 なぜなら、監査・レビューで問われるのは現時点の業務実態と統制が整合しているかだからです。 最新版が曖昧な状態は、統制の土台が崩れているのと同じです。
| Excel運用で起きがちなこと | 内部統制上の影響 |
|---|---|
| ファイルが乱立し最新版が不明 | 統制が現行運用と一致しているか確認できない |
| 誰がいつ何を直したか追えない | 変更理由を説明できず、改善が属人的になる |
| 更新が面倒で放置される | 形骸化し、実務と文書が乖離する |
結果として、現場は「直すのが面倒だから触らない」、監査対応では「急いで整える」が繰り返されます。 これがExcel運用の破綻パターンです。
粒度が揃わず目的に合わない成果物になりやすい
次に起きやすいのが粒度のばらつきです。 内部統制向けの業務可視化では、目的は「業務の流れを揃えること」だけではなく、 統制ポイントを置ける粒度で、再現性のある形にすることです。
ところがExcelで各部門・各担当がバラバラに作ると、次のようなズレが起きます。
- ある部署は「手順書レベル」まで細かく書く
- ある部署は「箱が数個だけ」の大雑把な流れになる
- 同じ用語でも意味が違う…承認と確認、処理と記録などが混在する
- 統制上重要な分岐や例外処理が、書かれていないか注釈に埋もれる
この状態で統制文書を作ろうとすると、どれだけ時間をかけても成果物が揃いません。 そして「頑張って作ったのに、目的に合わない」となりやすいです。
ここで重要なのは、内部統制の可視化は細かければ良いわけではないことです。 粒度を細かくしすぎると更新できなくなり、粗すぎると統制ポイントが置けません。 つまり、最初にどのレベルの成果物が必要かを決め、粒度の基準を統一する必要があります。
Excel運用は、基準を決めずに走り出しやすい分、粒度ズレが起きやすいのが弱点です。
関係資料が散らばり監査対応で探せないが起きる
内部統制の現場で地味に重いのが探せない問題です。 業務フローだけ作っても、監査で求められるのは「その業務を裏付ける証跡」や「関連する規程・帳票・手順」です。
Excel中心の運用だと、関係資料が次のように散らばりがちです。
- 規程は総務の共有フォルダ、手順は現場のローカル、帳票は別の文書管理
- 証跡の保存先が担当者ごとに違い、引き継ぎで分からなくなる
- フローと帳票が紐付いておらず、どの帳票がどの工程で使われるか追えない
この状態になると、監査対応のたびに「探す時間」が発生します。 そして探す時間が増えるほど、現場には内部統制は面倒という印象が残ります。
内部統制では業務の流れと証跡・規程・帳票がつながっていることが重要です。 つながっていれば、監査で問われても「この工程の証跡はここ」「関連規程はこれ」とすぐ示せます。
逆に、つながっていなければ、いつまでも「どこにあるか知っている人」を頼る運用になり、 結果として属人化と監査対応負荷が増えていきます。
まとめると、Excel運用が破綻しやすいポイントは次の3つです。
- 更新と版管理が回らず、最新版が分からなくなる
- 粒度が揃わないため、目的に合った成果物になりにくい
- 関係資料が散在し、監査対応で探せないが起きる
次章では、これらを踏まえたうえで、内部統制向けに業務可視化をどう進めると現実的かを整理します。
【まとめ】内部統制で業務可視化が必要な理由…Excel運用が破綻しやすいポイント
内部統制では【業務が再現できること】と【説明できること】が求められます。そのためには、業務の前後関係や責任分界をフローチャートで見える化し、統制ポイントや証跡まで含めて一体で管理することが重要です。Excel運用は手軽な反面、版管理や粒度のばらつき、資料の散在で破綻しやすく、監査対応や更新のたびに負荷が膨らみます。定型業務から標準化の土台を作り、運用更新まで設計することで、形骸化を防ぎやすくなります。
- 見えないものは管理できない…内部統制は可視化が前提になる
- Excelは版管理と更新が回りにくい…最新版不明で統制が崩れる
- 粒度が揃わないと目的に合わない…統制ポイントを置けない
- 資料が散らばると監査で探せない…属人化と負荷が増える
- 定型業務から始めて運用更新まで設計…標準化と継続が鍵
内部統制対応で【業務可視化が必要】と感じたら、まずは定型業務をフローチャートで整理し、証跡や規程を紐付けて【業務と統制】をセットで管理できる形を目指しましょう。



