業務フローの作り方が分からない人向けに、はじめてでも迷わない手順を整理しました。目的と粒度を決め、範囲設定からフローチャート化、スイムレーン、リンク付け、レビューまで【7ステップ】で解説します。
業務フロー作成の全体像【まず「目的」と「粒度」を決める】
業務フローを書き始めると、多くの人が最初に迷います。
「どこから手を付ければいいのか」「どこまで書けば正解なのか」「誰に何を聞けばいいのか」…。
この迷いの正体はシンプルです。
【目的】と【粒度】が決まっていないまま描き始めていることが原因です。
業務フローは「絵をきれいに描く」作業ではありません。
見えないものは管理できないので、変えたい、整えたい、引き継ぎたい対象を「管理できる形」にするための道具です。
まずは、全体像を整えるところから始めましょう。
業務フローは“何のため”に作るのか【目的の型】
業務フローの目的は会社ごとに違うようで、実はよく出てくる「型」があります。
ここを最初に決めると、何を描くべきかが一気に明確になります。
| 目的の型 | よくある状況 | フローで重視する観点 | 仕上げのイメージ |
|---|---|---|---|
| 業務改善・効率化 | コスト削減、工数削減、納期短縮をしたい | ムダ・重複・手戻り・待ち時間 | 改善ポイントが見つかる俯瞰図 |
| システム刷新 | 現状業務が分からず要件定義ができない | 担当とシステムの関与点、入力・出力、例外 | ベンダーと対等に話せる業務像 |
| DX推進 | 新しいやり方を作りたい、運用を変えたい | 現状と理想の差分、変えるべき手順 | To-Beを作るための土台 |
| BPO・外部委託 | 外に出す業務を切り出したい | 標準化できるか、パターン数、判断業務の有無 | 委託可能範囲が判断できる資料 |
| 品質管理・内部統制 | 手順を守らせたい、証跡を整えたい | 統制ポイント、ルール、帳票、責任分界 | 整合性の取れた管理資料 |
ここで重要なのは、「目的が違えば、正しいフローも違う」という点です。
たとえばシステム刷新が目的なら、システムの関与点が見えないフローは役に立ちません。
一方、改善が目的なら、細かな操作手順よりも、どこで手戻りが起きるかが分かる構造が優先されます。
もし迷ったら、最初にこの一文を決めてください。
【この業務フローは、誰が、何を判断するために作るのか】
これが決まると、必要な情報の範囲が自然に決まります。
どこまで書く?【粒度の決め方】
業務フローが止まる最大の原因のひとつが、粒度の迷子です。
「細かく書きすぎて終わらない」「粗すぎて使えない」…どちらもよく起こります。
まずは、フローと手順書の役割を分けて考えるのがコツです。
- 業務フロー…業務の流れと責任分界を俯瞰して理解するための図
- 手順書…その業務を誰でも同じ品質で実行するための具体手順
粒度を決めるために、次の3段階で考えるとスムーズです。
| 粒度レベル | 書くもの | 向いている目的 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| レベル1【全体像】 | 開始から終了までの主要工程 | 改善、DX検討の入口 | 例外や条件は最小限 |
| レベル2【責任分界】 | 担当・部署・システムの関与点 | システム刷新、統制 | 責任が曖昧な箇所が露呈する |
| レベル3【手順書レベル】 | 画面操作、入力項目、判断基準 | 品質管理、教育、BPO移管 | イレギュラーが多い業務は破綻しやすい |
ポイントは、いきなりレベル3に行かないことです。
はじめての業務フロー作成なら、まずはレベル1からレベル2を狙うのが現実的です。
「使える形」に到達してから、必要な部分だけを手順書化するほうが速く、失敗しにくいです。
迷ったら次の基準を使ってください。
【読む人が「次に何をすればいいか」を迷わない粒度】
これが業務フローとしての最低ラインです。
対象業務の選び方【まずは「定型業務」から始める】
最初の対象を間違えると、業務フロー作成は高確率で止まります。
おすすめは、定型業務から始めることです。
定型業務とは、ざっくり言うと毎回ほぼ同じ流れで回る業務です。
たとえば経理や総務などの管理系業務は、定型の割合が高いことが多いです。
- 定型業務が向いている理由…手順が安定しており、例外が少なく、合意が取りやすい
- 成果が出やすい理由…改善点やムダが見つかりやすく、完成までが速い
- 次につながる理由…BPO検討やシステム刷新の土台になりやすい
反対に、次のような業務は最初の題材に向きません。
- イレギュラーが多すぎて、例外が無限に出る業務
- 担当者のノウハウ依存が強く、説明が言語化されていない業務
- 顧客対応など、相手次第で流れが変わる業務を細かく書こうとするケース
もちろん、これらの業務も可視化はできます。
ただし最初は、外形の流れを粗めに整理し、必要になったら深掘りするのがコツです。
対象選びで悩む場合は、次のチェックで決めると失敗しにくいです。
| チェック項目 | Yesなら候補 | Noなら注意 |
|---|---|---|
| 同じ手順で繰り返しているか | 定型度が高く進めやすい | 例外整理が先に必要 |
| 担当者が複数いるか | 合意形成がしやすい | 属人化が強い可能性 |
| 帳票・入力・承認があるか | 見える化で効果が出やすい | 改善ポイントが見えにくい |
| 関係者が協力できるか | 短期間で完成しやすい | プロジェクト停止リスク |
つまずきポイント先回り【現場協力・時間確保・トップダウン周知】
業務フロー作成は「描く技術」より、進め方で止まりやすいです。
特に多いのが、次の3つです。
- 現場が忙しくて時間が取れない
- 作る意味が伝わらず協力が得られない
- 誰の業務として進めるのかが曖昧
ここで大事なのは、現場の反対は「性格」ではなく構造で起きることです。
ヒアリングにも作図にも時間が必要なので、現場から見れば「仕事が増える」に見えます。
したがって対策はシンプルです。
会社の業務として必要だと周知し、時間を確保することが必要です。
実務で使える対策を、最小セットでまとめます。
- 周知する【なぜやるか】【何のためか】を先に説明する
- やる範囲を切る【対象業務】【期間】【完成定義】を宣言する
- 時間を確保するヒアリング枠を先に押さえる
- 役割を決める事務局、現場協力者、レビュー者を決める
特に最初の一歩として効くのは、次の一文です。
【これは追加作業ではなく、会社として必要な業務である】
これがないと、どれだけ外部が支援しても前に進みにくくなります。
また、業務フロー作成が進まない企業では、現場の問題に見えて実は目的が共有されていないケースが多いです。
作る前に5分でもいいので、関係者に対して「目的」と「使い方」を揃える時間を取るだけで、プロジェクトの停滞リスクは大きく下がります。
業務フローの作り方【はじめてでも迷わない7ステップ】
ここからは、実際に【業務フロー 作り方】を手順に落として説明します。
最初に意識してほしいのは、いきなりフローチャートを書かないことです。
フローの品質は「描画」よりも、準備と整理で決まります。
この7ステップは、業務改善・システム刷新・BPO・内部統制など、目的が違っても使える汎用の型です。
ただし、目的によって強調点が変わります。迷ったら、前章の【目的の型】に立ち返ってください。
Step1【範囲を切る】
最初にやるべきは【範囲を切る】ことです。
範囲が曖昧だと、ヒアリングが広がり、例外が増え、いつまでも終わりません。
- 開始と終了…どこからどこまでを1本のフローにするか
- 対象部門…関係する部署や外部をどこまで含めるか
- 対象業務…何の業務を描くのか
範囲を切るコツは、【トリガー】と【成果物】で決めることです。
たとえば、次のように決めるとブレません。
| 決めるもの | 例 |
|---|---|
| トリガー【始まり】 | 依頼メールが届く/注文書を受領する/申請が起票される |
| 成果物【終わり】 | 請求書を送付する/支払が完了する/システム登録が完了する |
範囲を切るだけで完成率が一気に上がります。
「今はこの範囲だけ」と宣言できる状態を作りましょう。
Step2【登場人物と役割を出す】
業務フローは「作業の流れ」だけでは足りません。
誰がやるかが曖昧だと、改善もシステム化も進みません。
ここでやることはシンプルです。
登場人物を洗い出し、役割を1行で定義するだけです。
- 担当者【起票する人、処理する人】
- 承認者【判断する人】
- 確認者【チェックする人】
- 外部【取引先、委託先、顧客】
- システム【入力・参照・出力する対象】
この時点でおすすめなのは、次のような【役割表】を作ることです。
フローを書く前に、この表を作っておくと後が楽になります。
| 登場人物 | 役割【この業務で何をするか】 | 主なやり取り |
|---|---|---|
| 営業担当 | 見積を作成し、顧客と合意する | 見積書、注文書 |
| 営業事務 | 受注処理と社内手配を行う | 受注データ、手配依頼 |
| 経理 | 請求書発行と入金消込を行う | 請求書、入金情報 |
| 基幹システム | 受注・請求・入金の情報を管理する | 入力、参照、出力 |
ここでの狙いは、責任分界のズレを早めに見つけることです。
「誰がやるのか分からない作業」は、改善でも刷新でも必ずボトルネックになります。
Step3【業務を時系列に並べる】
次に、業務を時系列に並べます。
この段階では絵にしなくてOKです。まずは箇条書きで十分です。
ポイントは、動詞でそろえることです。
たとえば「見積書」ではなく「見積書を作成する」のように書きます。
- 依頼を受け取る
- 見積書を作成する
- 見積を送付する
- 注文書を受け取る
- 受注登録する
- 手配する
- 請求書を発行する
- 入金を確認する
この時に一緒にメモしておくと後で助かるのが、次の3つです。
- 分岐…条件によって流れが変わるところ
- 例外…通常と違う処理が入るところ
- 待ち…誰かの返答待ち、承認待ちになっているところ
Step3が雑だと、Step4で必ず詰まります。
時系列の箇条書きが完成したら、半分できたと思って大丈夫です。
Step4【フローチャート化する】
ここで初めて、箇条書きをフローチャートにします。
大事なのは、見た目ではなく読みやすい構造です。
最低限、次の3つだけ守ればフローは読める形になります。
- 流れは一定方向【左→右】または【上→下】で統一する
- 分岐は条件で書く【Yes】【No】の出口を持たせる
- 戻りは最小限往復が増えるほど理解しづらくなる
判断【分岐】を「条件」で書く
フローが分かりにくくなる原因の多くが、判断の書き方です。
判断は「作業」ではなく条件で書きます。
| NG例 | OK例 |
|---|---|
| 承認する | 承認されているか |
| 確認する | 不備があるか |
| 判断する | 条件を満たすか |
条件で書くと、分岐後の流れが自然に整理されます。
分岐は「Yes/Noで答えられる形」にするのがコツです。
例外・イレギュラーは“別ルール”として扱う
フローが崩れる最大要因が、例外を本流に混ぜることです。
例外が多い業務でも、整理の仕方は同じです。
- 本流…8割以上のケースで起こる流れ
- 例外…特定条件のときだけ起こる流れ
例外を全部本流に入れると、矢印が増え、戻りが増え、読めない図になります。
おすすめは次のどちらかです。
- 例外は注記にする【この場合は別フロー参照】のように切り出す
- 例外用のサブフローを作る【例外フローA】として別ページに分ける
フローは「読めること」が価値です。
例外が多い業務ほど、切り分けが重要になります。
往復フローを減らす【読み順を左→右にそろえる】
読みづらいフローの典型が、矢印が往復している図です。
情報を詰め込みすぎると、1枚に収めるために縦に折り返しが発生しがちです。
対策はシンプルです。
【読み順】を決めて、その方向に流れるように配置することです。
- 左→右で統一し、途中で縦方向に折り返さない
- 1枚に収まらないなら、潔く分割する
- 戻りが出る場合は、戻り先を近くに置く
「1ページに収めること」が目的になると、読みやすさが犠牲になります。
分割は悪ではなく、読みやすさのための設計です。
Step5【スイムレーンで責任分界を見える化する】
フローチャートができたら、次は【責任分界】を見える化します。
ここで使うのがスイムレーンです。
スイムレーンは、誰がどこまで担当するかを一目で理解するための枠です。
担当×システムで作ると、システム刷新や改善に強いフローになります。
- レーン例【営業】【営業事務】【経理】【顧客】
- レーン例【人】【システムA】【システムB】
「業務の流れ」と「データの流れ」を混ぜない
フローが分かりにくい原因として多いのが、業務の流れとデータの流れが混ざることです。
やることと情報の動きは別物です。
- 業務の流れ…誰が何をするか
- データの流れ…何の情報がどこへ渡るか
まずは業務の流れを整理し、その上で必要ならデータの動きを補足します。
最初から全部を一枚に載せないのがコツです。
システム関与点【入力・出力・参照】を明確にする
特にシステム刷新を意識するなら、ここが重要です。
システムがどこで関与しているかが見えないと、要件が固まりません。
- 入力…誰が何を入力しているか
- 参照…どの情報を見て判断しているか
- 出力…何が出て、誰に渡るか
この3つが整理されると、ベンダーに丸投げせずに済みます。
自社で業務を把握し、対等に話すための材料が揃うからです。
Step6【帳票・規程・手順を紐付ける】
業務フローが「絵」で終わると、現場では使われなくなります。
そこで効果が出るのが、関連情報の紐付けです。
紐付ける対象は、次のようなものです。
- 帳票【申請書、注文書、請求書】
- 規程【ルール、承認基準】
- 手順【操作手順、チェックリスト】
- 保管場所【フォルダ、文書管理、URL】
ここでのポイントは、全部を完璧にやろうとしないことです。
まずは、フローを読む人が迷いやすい箇所だけ紐付けると効果が出ます。
| よく迷う場面 | 紐付けると効く情報 |
|---|---|
| 承認条件が分からない | 承認基準、規程リンク |
| どの帳票を使うか分からない | 帳票テンプレ、格納場所 |
| 入力方法が分からない | 操作手順、チェックリスト |
フローと情報がつながると、管理しやすさが一段上がります。
運用できる業務フローに近づきます。
Step7【レビューして整える】
最後はレビューです。ここを省くと、使われないフローになります。
レビューで見るべき観点は【抜け漏れ】だけではありません。
- 抜け漏れ…必要な作業が落ちていないか
- 粒度…細かすぎ、粗すぎになっていないか
- 用語…部署ごとに言い方が違って混乱しないか
- 例外…例外が本流に混ざって読みにくくなっていないか
レビューは、可能なら次の順で行うと効果的です。
- 現場レビュー【実際にやっている人】が見て違和感を潰す
- 管理者レビュー【責任分界】と【ルール】を確認する
- 関係部門レビュー【受け渡し】のズレを確認する
最後に、完成の合図を決めてください。
【このフローで新人が迷わず動ける】が一つの目安です。
完璧を目指して終わらないより、使える形で出して回すほうが成功に近づきます。
【まとめ】業務フローの作り方…はじめてでも迷わない手順とコツ
業務フローは、いきなり図を描くよりも【目的】と【粒度】を先に決めると迷いません。範囲を切り、登場人物と作業を洗い出してからフローチャート化し、担当とシステムの関与点を整理します。さらに帳票や規程を紐付け、レビューと更新ルールまで整えると、システム刷新やBPOでも使える【運用できる成果物】になります。
- 目的と粒度を最初に決めるとブレない
- 作業は箇条書き→フローチャートの順で作ると早い
- 担当とシステムを分けて見える化すると刷新で効く
- 例外は本流に混ぜず別ルールで扱う
- 更新ルールと版管理がないとすぐ使えなくなる



