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【システム刷新の“ベンダー丸投げ”が危険な理由】業務可視化で交渉力を持つ

【システム刷新の“ベンダー丸投げ”が危険な理由】業務可視化で交渉力を持つ

システム刷新を「ベンダーに任せれば安心」と丸投げすると、気づけば提案を評価できず、使いにくい仕組みや追加費用、運用の外部依存に陥りがちです。本記事では、丸投げが失敗しやすい理由と、業務可視化で交渉力を持ち対等に進める実務ポイントを解説します。

なぜ「ベンダー丸投げ」のシステム刷新は失敗しやすいのか

「システムが古いから入れ替えたい」「担当者が退職して業務が回らない」「統合・再編で仕組みを作り直したい」──こうした状況では、時間がないほどベンダーに任せたくなるものです。

ただ、よく聞くお話として、システム刷新で起きがちな失敗の中心には“ベンダー丸投げ”があります。ここでは、なぜ失敗しやすいのかを3つの観点で整理します。

【失敗パターン】ベンダー主導で“いいように進む”

丸投げが危険なのは、ベンダーが悪意を持つから…という単純な話ではありません。構造的に、ベンダー主導で設計・判断が進みやすいからです。

  • 業務の前提(例:誰が、いつ、何のために、どのデータを使うか)をベンダー側が仮置きして進める
  • 要件の優先順位が、現場の痛みではなく「作りやすさ」「標準機能」「過去案件の型」に寄る
  • 費用・工数の説明が、受注・スコープ調整の都合で最適化されやすい

結果として起きるのが、典型的な「お金はかかったのに使いにくい」「現場が回らない」「結局Excelに戻る」といった状態です。

ポイント】システム刷新は「機能を作る」よりも、業務をどう回すか(プロセス)を決めるプロジェクトです。プロセスの主導権を渡すほど、失敗確率は上がります。

【判断できない問題】自社が業務を把握していないと評価できない

よくある意見としては、「自社で業務を把握していないと、ベンダー提案の良し悪しを判断できない」という点です。

たとえばベンダーから次のような確認が来たとします。

  • 「このフローで問題ありませんか?」
  • 「このデータ項目で足りますか?」
  • 「この承認ルートで運用できますか?」

このとき、発注側が業務を把握できていないと、現場の感覚で「たぶん大丈夫」と返しがちになります。ところが後になって、次のような“詰み”が起きます。

起きることなぜ起きるか典型的な結果
要件の抜け漏れが発覚現状の例外・分岐・帳票・データ連携を把握していない追加開発・追加費用が膨らむ
運用に合わない画面・手順「誰が」「どのタイミングで」使うかが曖昧現場が使わず、Excel/手作業が残る
評価基準がブレる判断基準(何を良しとするか)が言語化されていない会議で決まらない/後戻りが増える

特に刷新案件では、発注側が「業務が分からないから刷新したい」という状態になりやすいです。つまり“分からない状態”のまま判断を迫られるのが丸投げの怖さです。

【依存が続く問題】納品後の更新・整備まで外部依存になる

もう一つの落とし穴は、納品して終わりではなく、その後も業務は変わり続けるという前提です。

刷新後に現場で起こる変化は、例を挙げればきりがありません。

  • 組織改編や担当変更で、承認ルート・役割が変わる
  • 取引先・法制度・監査要求の変化で、帳票や証跡が増える
  • 例外対応が増え、手順やデータ項目が微妙にズレていく

ここで丸投げしていると、次の状態に陥りやすくなります。

  • 「これ、誰が直せるの?」→結局ベンダーに依頼(費用・時間がかかる)
  • 「直すの面倒だから、現場が迂回する」→非公式運用(Excelや口頭ルール)が増える
  • 「最新版が分からない」→仕様・手順・実態がズレ、監査・教育が崩れる

こうした状況を避けるために「自社でも業務を把握して、対等に話せる状態にしておく必要がある」と意見も挙げられます。システム刷新は、導入よりも運用・整備のほうが長期戦です。だからこそ、丸投げは“依存の連鎖”を生みやすいのです。


ここまでの結論】「ベンダー丸投げ」が危険なのは、ベンダーの問題というより、発注側が“業務を把握せずに判断する構造”になってしまうからです。次の章では、この構造を最短でひっくり返す方法として、業務可視化で『交渉できる状態』を作る手順を解説します。

丸投げを防ぐ最短ルート…業務可視化で「交渉できる状態」を作る

ここまでで見てきた通り、丸投げが危険なのは「ベンダーが悪いから」ではなく、発注側が“判断できない状態”のままプロジェクトが進む構造にあります。

この構造をひっくり返す最短ルートが、業務可視化によって「交渉できる状態」を作ることです。言い換えると、ベンダーと議論できるだけの「材料(根拠)」を、発注側が持つということです。

まずやることは「見えないものは管理できない」の解消

よく繰り返しお聞きする「本質」というのが、これです。

見えないものは管理できない。

システム刷新では、次のような「変えたいこと」が必ず出てきます。

  • 入力や承認を減らして、リードタイムを短縮したい
  • 部署ごとの重複やムダをなくして、コストを下げたい
  • 属人化をなくして、退職・異動でも回るようにしたい
  • 統合・再編に合わせて、全体のやり方を作り直したい

ところが、変える対象(現状業務)が見えていないと、結局こうなります。

  • どこを変えるべきか分からない(優先順位が決まらない)
  • 影響範囲が読めない(後から問題が出る)
  • ベンダー提案を評価できない(「たぶんOK」になる)

可視化の第一目的は「綺麗な図を作ること」ではありません。判断できる状態(管理できる状態)にすることです。

現状把握の核はフローチャート…全体・前後・相関を一度に掴む

可視化の手段はいろいろありますが、刷新の現状把握で強いのはフローチャートです。理由はシンプルで、全体・前後関係・相関(つながり)を一度に掴めるからです。

箇条書き(手順の羅列)でも情報は書けますが、刷新の議論で詰まりやすいのは次のポイントです。

  • どこからどこまでが一連の業務なのか(境界)が曖昧
  • 分岐や例外が、文章だと埋もれて見落とす
  • 別部門・別業務との接点(受け渡し)が見えない

一方、フローチャートであれば、

  • 誰→誰に、何が渡るのか
  • どのタイミングで、どんな判断が入るのか
  • どこで滞留するのか(ムダ・ボトルネック)

が、議論の土台として揃います。これが「交渉できる状態」の正体です。

システム刷新で“フローに入れるべき情報”の例(担当/システム/データ)

刷新の可視化でありがちな失敗は、フローが「作業の流れ」だけで終わり、刷新で本当に必要な情報(システムやデータ)が抜けることです。

最低限、次の3点セットは入れるのがおすすめです。

入れるべき情報具体例入れないと起きる問題
担当(役割)申請者/承認者/経理/管理者/営業事務 など誰がやるか不明で、運用設計が崩れる
システム基幹/ワークフロー/Excel/メール/文書管理 など「どこで処理しているか」が不明で、要件が漏れる
データ(帳票・入力・出力)見積/注文書/請求書/マスタ/申請フォーム などデータ移行・連携・権限の話が後出しになる

特に刷新では、業務の流れとデータの流れが混ざって“ぐちゃぐちゃ”になりがちです。フロー上で「どのシステムで」「どのデータを扱うか」を明確にすると、ベンダーとの会話が一気に具体化します。

コツ】まずは「担当レーン(部署/役割)」で分け、次に「システム」や「データ」をアイコン・注記で紐づけると、議論しやすい図になります。

「目的に合わない成果物」を避けるための粒度の決め方

「目的はシステム刷新なのに、成果物フローが目的に合っていない」という話をよく聞きますが、ここで重要なのが、粒度(どこまで細かく書くか)です。

粒度がズレると、次のどちらかに転びます。

  • 粗すぎる…現状が分からない、要件に落ちない、改善点が見えない
  • 細かすぎる…時間がかかる、現場が疲弊する、例外で破綻する

システム刷新でのおすすめは、「手順書レベル」ではなく、まず要件定義に必要なレベルに合わせることです。

目的適した粒度見るべきポイント
システム刷新中粒度(業務単位+主要分岐)担当・承認・システム・データ・例外の“入口”
業務手順書化細粒度(操作手順まで)画面操作・入力項目・判断基準の言語化
業務改善/DX中〜粗粒度(俯瞰重視)ムダ・滞留・重複・分業/統合ポイント

重要】粒度は「綺麗さ」ではなく、目的(今回はシステム刷新)に合っているかで決めます。これができると、ベンダーに「この粒度で、ここまで必要」と要求できるようになります。

業務は変わる前提…運用・更新まで見据えた可視化にする

刷新はゴールではなくスタートです。運用が始まると、業務は確実に変わります。だからこそ可視化も、「作って終わり」ではなく、更新され続ける資産として設計する必要があります。

更新できる可視化にするために、最低限押さえたいポイントをまとめます。

  • 最新版の管理者を決める(誰が更新責任を持つか)
  • 更新トリガーを決める(組織変更/制度変更/システム改修など)
  • 図と関連情報をセットで管理する(帳票・規程・マスタ定義など)
  • 運用ルールを簡易にする(重すぎると続かない)

丸投げの怖さは、納品後に「直せない」「更新できない」状態になり、現場が迂回し始めることです。逆に言えば、更新できる可視化を持てれば、ベンダー依存は大幅に減ります

そして、ここまでの準備ができると、ベンダーに対して次のように言えるようになります。

  • 「現状はこう。課題はここ。新システムではここを変えたい」
  • 「この範囲・粒度で要件を固めたい。提案はこの基準で評価する」
  • 「運用後の変更も見据えて、更新しやすい設計にしてほしい」

これが、まさに「交渉できる状態」です。次章では、この状態を前提に、ベンダーと対等に進めるための実務(要件・体制・進め方)を具体化していきます。

ベンダーと対等に進める実務…要件・体制・進め方のポイント

業務可視化で「交渉できる状態」ができたら、次は実務としてどう進めるかです。ここでつまずくと、せっかく整理した現状も活かせず、再び“丸投げ構造”に戻ってしまいます。

重要な点は、発注側が自社業務を把握し、ベンダーと対等に話せる状態を作ることです。そのための具体的ポイントを3つに分けて解説します。

要件定義の前に合意する…範囲・優先順位・判断基準

要件定義に入ってから揉める原因の多くは、実は要件ではなく「前提(合意事項)が揃っていない」ことです。まずは、ベンダーに見積や提案を依頼する前に、最低限この3点を合意しておくと事故が減ります。

  • 範囲(スコープ)…どこからどこまでを対象にするか
  • 優先順位…何を最優先で解決するか(全部やらない)
  • 判断基準…何をもって「良い提案/良い設計」とするか

特に刷新では「全部変えたい」気持ちになりがちですが、現実には期限・予算・体制の制約があります。そこで、優先順位を決めずに進む=ベンダーが優先順位を決めることになります。これが丸投げの再発ポイントです。

合意のために、以下のような簡易テンプレを作っておくと会話が速くなります。

項目決めること
対象範囲業務・部門・システムの範囲購買〜支払、関係部門は購買/経理/現場
非対象今回はやらない範囲海外拠点、例外処理の自動化は次フェーズ
最優先課題必ず解決したい痛み承認滞留の解消、入力二重化の廃止
判断基準評価軸を明文化運用負荷、変更容易性、監査対応、費用

ポイント…判断基準は「機能の多さ」ではなく、運用と継続性(変化に耐えるか)を入れるのがおすすめです。刷新後に業務は変わるため、ここを見ないと“使いにくいシステム”になりがちです。

また、ベンダーの提案を比較するために、次のような評価表を用意しておくと「対等な交渉」になりやすいです。

  • Must / Should / Could(必須/重要/できれば)で要件を分類する
  • 業務・データ・権限・監査など、観点を固定する
  • 「できる/できない」だけでなく、実現方法・前提条件も書かせる

社内体制…事務局/現場/意思決定者の役割とトップダウン周知

重要な視点としては、現場が反対する・協力しない問題は、コンサルやベンダーでは解決できないという点です。つまり、刷新が進むかどうかは社内体制でほぼ決まると言っても過言ではありません。

最低限、次の3者の役割を分けておくことが重要です。

役割主な責務失敗しやすい状態
事務局(推進)全体設計、進行管理、成果物の統一、ベンダー窓口調整役が不在で、粒度バラバラ・遅延
現場(業務保有者)現状提供、例外・判断の共有、運用レビュー忙しさを理由に情報が出ず、後から炎上
意思決定者(トップ)目的の明確化、優先順位決定、リソース確保、周知「なんでやるの?」が解消されず反発が増える

そして、現場の反対を防ぐ最も効く一手がトップダウン周知です。「会社の業務として必要だと周知しないと成功しない」という声もよくお聞きします。

周知で伝えるべき内容は、シンプルにこの3点で十分です。

  • なぜやるのか(目的:刷新、コスト、納期、統合、監査など)
  • 何をやるのか(可視化→要件→導入→運用の流れ)
  • 現場に何をお願いするのか(ヒアリング、レビュー、テスト協力)

現場が嫌がるのは「追加タスク」そのものよりも、意味が分からないまま時間を取られることです。だからこそ、トップが「これは会社として必要な業務だ」と明言し、協力を前提化することが重要です。

おすすめの運用】キックオフ時に10〜20分でもよいので、目的と進め方を説明する場(社内向けミニセミナー)を入れると、その後の抵抗が大きく減ります。

外部活用の考え方…丸受けより「アドバイザリー」で経験を買う選択肢

「丸投げ」を避けたい一方で、社内に経験者がいない、時間がない、という現実もあります。ここでの考え方の軸は、外部の価値は“作業”ではなく「経験・ノウハウ・知識・時間」を買うことにあります。

つまり、外部活用には大きく2つの型があります。

  • 丸受け(外注)…成果物を作ってもらう。短期では楽だが、社内に残らない。
  • アドバイザリー(伴走)…進め方と判断を支援してもらう。時間はかかるが、社内に残る。

丸投げが怖いなら、基本はアドバイザリー寄りがおすすめです。理由は、刷新後の運用・更新まで含めると、社内に知見が残らないと結局依存が続くからです。

外部活用の選び方を整理すると、次のようになります。

状況おすすめ狙い
とにかく期限が近い/社内工数が取れない丸受け+最小限の引き継ぎ最低限の納期達成(ただし依存は残る)
今後も改善・統合が続く/社内資産化したいアドバイザリー(伴走)進め方と判断軸を社内に残す
一部だけ詰まる(例:粒度統一、要件整理、評価表づくり)スポット支援詰まりどころだけ経験で解消

なお、外部を「作業者」として使うなら、極端に言えば派遣・アルバイトでも回る領域はあります。逆に、外部を使う価値があるのは、

  • 目的に沿った成果物の粒度設計
  • つまずきやすいパターンの先回り
  • 全体統括(意思決定を促す設計)

といった“経験が効く領域”です。ここを外部に任せると、丸投げではなく「対等に進めるための補助輪」として機能します。


この章のまとめ】ベンダーと対等に進めるには、(1)要件定義の前に「範囲・優先順位・判断基準」を合意し、(2)社内で「事務局・現場・トップ」の役割を分け、(3)外部は丸受けではなく「経験を買う」形で使うのが効果的です。これらが揃うと、システム刷新は“丸投げの賭け”ではなく、自社主導で設計できるプロジェクトに変わります。

【まとめ】システム刷新の“ベンダー丸投げ”が危険な理由…業務可視化で交渉力を持つ

システム刷新をベンダーに丸投げすると、前提や優先順位がベンダー側で決まり、発注側は「何が良いのか」を判断できないまま進みがちです。その結果、使いにくい設計・追加費用・納品後の運用依存が発生します。丸投げを防ぐ最短ルートは、業務可視化で現状を押さえ、要件・体制・判断基準を自社で握ったうえで、対等に交渉できる状態を作ることです。

  • 丸投げは「ベンダー主導で前提が決まる」ため失敗しやすい
  • 業務可視化で現状を把握し、提案を評価できる状態にする
  • フローチャートで担当・システム・データまで整理し、要件の土台を作る
  • 範囲・優先順位・判断基準を先に合意し、社内はトップダウン周知で動かす
可視化プロジェクト絶対に失敗させないための7つのステップ
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市橋 憲茂
市橋 憲茂(株式会社サン・プラニング・システムズ)
【業務プロセスの可視化・改善で20年】業務の見える化、業務シミュレーション分析による業務改善を推進。営業、コンサルタントを経て、現在はその価値を発信するマーケティング部門の責任者として、業務可視化の重要性を広く伝えながら、企業の改革を後押ししています。