RPA導入 働き方

働き方改革の一環としてRPA導入に注目が集まっています。今回はこのRPAを使った業務自動化がテーマです。業務の効率化に取り組みはじめるにあたってのポイントを本記事にまとめました。

最近、労働人口の減少に伴う人手不足に加え、政府が推し進める働き方改革の中で特に労働生産性の向上や長時間労働の是正対策として、「RPA」と言う言葉を耳にすることが増えているのではないかと思います。

この「RPA」とはいったいどのようなソリューションなのか、改めてここで簡単におさらいします。

RPAとは?

RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーションの略で、一般的にはソフトウェアのロボットにより、人の代わりにパソコン操作などを自動化するものです。例えば、工場で機械式のロボットが製品の組み立てや溶接を行うのと同様に、オフィスにおいてソフトウェアロボット(デジタルレイバー)にパソコン操作などの人手による作業を代行させることで、業務の品質向上、作業時間の短縮、業務変更対応性向上などを実現する「ホワイトカラーの生産性向上」ソリューションの一つです。

なぜ「RPA」が注目されているのか

ではなぜこのRPAが注目されているのかと言いますと、ソフトウェアロボットにより、キーボードやマウスの操作そのものを自動化する方法により、システムに大きな影響を与えず、そのまま活用することが可能であることや、多様なアプリケーションにまたがる業務を自動実行できること。比較的簡単にロボットの設定が行えること(注1)などにより、「現場主導の課題解決」「企画から実稼働までの時間の短さ」や「費用対効果(人件費との比較が比較的しやすい)」、「実現方法の直観的な分かり易さ」などの面において、魅力を感じられているのではないかと思います。

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RPAは古くて新しい発展途上の技術

RPAは古くて新しい発展途上の技術であることも魅力の1つと考えられます。RPA技術は一般的に下記のようなクラスに分類されているようで、クラス1の技術自体は、20年以上前からあります。それなりに確立された技術であるため安心感がありますし、クラス2、3に関しては今後の動向が期待(注2)されています。

クラス1:定型業務の自動化

人間が実施していた定型業務の自動化。(例外処理は人間の対応が必要)

クラス2:一部非定型業務の自動化

例外対応や非定型行の自動化や非構造化情報の対応。

クラス3:高度な自律化

高度な人工知能により、作業の自動化のみならず、プロセスの分析・改善、意思決定まで自動化。さらに、従来では実現できなかった人海戦術的な方法による新たなビジネスへの応用。

注1:多くのツールメーカーは、操作を記録させるだけで簡単に設定が可能と言った趣旨の説明をされていますが、一般的な作業では、判断や繰り返しなどの追加設定を行わないといけませんので、ITの知識が少ない方にはややハードルが高いかもしれません。

注2:クラス2に関しては、ディープラーニングなどによる文字や音声認識などの技術を組み合わせたSNSに対するチャットBOTや自然文による製品の自動Q&A支援、コールセンターオペレータに対する音声認識による関連情報表示などのRPA製品が既に市場に出始めているようです。

RPAの検討の前に具体的な目標と規模感の整理をしておく

働き方改革と言った大きな目標をもってRPAの検討を始められることが多いと思いますが、一言で働き方改革と言っても非常に広い範囲を含んでいます。ですので、まずは当面の目標として下記にあるような具体的な目的を定めるとともに、適応範囲として特定部門から始めるや特定業務から始めるなど、大まかな適応範囲をある程度絞って検討されることをお勧めいたします。

具体的目標のイメージ

  • 労働時間の短縮、リードタイム(作業期間)の短縮
  • 作業コストの削減
  • 時間外作業(労働)の削減、割り込み作業の削減(労働生産性の向上)
  • 作業量の平準化
  • 複雑な業務の自動化(簡易化)、ベテランノウハウの(電子化による)活用
  • 業務品質の向上

RPA導入を検討する上で注意すべきポイント

RPA導入の検討を進めるにあたり当面の規模感が数人月程度で考えられているのか、それとも数十人月規模で進められようとしているのか、によっても適応範囲などが異なりますので注意が必要です。

また、規模感に合わせ当面の目標や範囲を定めたら、併せて「〇〇業務の労働時間を△△%短縮する」や「時間外業務の自動化率を□□%アップする」、「従来経験が浅い人ではできなっかった業務を●●%削減する」など有用性を評価するための、客観的な基準と評価方法の検討も併せて検討することで、より具体的にRPAの検討が進められるのではないかと思います。

業務の可視化によってRPA対象業務を絞り込む

実際のRPA適応には、事前にロボットツールの導入・選定を行い、「現場担当者の気づき」などにより、どの作業を対象としてソフトウェアロボットを利用していくのかを判断して進めていく方法もありますが、私共では、事前に現行業務を整理してRPA適応範囲を見据えた上でソフトウェアロボットツールの導入・選定を進めていく方法をお勧め致します。

ステップ1.業務の可視化(現行業務の棚卸)

RPAの対象となる業務はこれまでシステム化できていなかった業務となるため、業務の棚卸を実施することで作業の手順や作業内容、対象となる情報などを整理することが重要な準備となります。

現行業務の棚卸は、業務棚卸リストなどの一覧表形式で整理してもよいのですが、業務フローチャート形式で整理することにより、一連の作業手順が可視化され、改善ポイントなどがより一層明確にすることが可能となります。

さらに、業務フローチャート上に下図のような定型/非定型などの作業区分、作業の詳細情報、利用システム/ツール、担当者の人数、1回当たりの作業時間などの作業の属性情報を色や文字で表すことで、より一層深い業務整理が行えます。そして、対象業務における部分的/表面的な問題提起と解決案の検討だけではなく、関連する業務を含めた全体的/本質的な問題提起と解決案の検討や他のメンバーとの情報共有などがより進めやすくなると言ったメリットもでてきます。

ステップ2.業務の見直し

実際に業務フローチャートや業務棚卸リストを作成してみると、従来問題があると認識していた業務の問題解決が見えてくるだけではなく、従来問題と認識されていなかった業務に関しても、多くの問題が潜んでいることにお気づきになられるのではないでしょうか。

そういった意味で、あるべき姿を想定した作業手順の見直しや、実施しなくてもよい業務の廃止や統合と言った、本質的な業務の見直しや対応内容、費用、実現スケジュールなどの配慮が必要です。そうすることでシステム改修にて対応すべき問題点やBPOにて対応すべき問題点なども明確になり、RPAを導入にて解決すべき問題点がより明確になってくるのではないでしょうか。

あるべき姿を想定した業務の見直し行い、RPAの導入にて解決すべき問題点を明確にした後でRPA導入を行うことで、より効果の高いRPA導入が実現できるはずです。

RPAによる自動化対象業務の選択

RPAの導入効果を高めるに当たってのRPAによる自動化対象業務の選択には、先に述べた具体的目標や規模に合わせるとともに下記を優先順位を視野に入れて検討されることをお勧めいたします。

RPA対象業務の優先順位:

  1. 絶対作業時間が多い作業
  2. 同様の作業が多い作業
  3. 作業時間が就業時間外の作業
  4. 作業時間が限定的で他作業を中断して行う作業
  5. 作業者が要望する作業

RPA導入当初に考えておくべきこと

RPAの導入当初は、作業内容が単純(手順が少ない)な作業や、対象情報の項目が少ない作業から始めることにより、導入当初のハードルを下げることが可能です。

また、作業者が要望する作業と導入効果が高い作業とは合致しないことも多い(担当者が要望する作業は、作業時間が短時間で作業内容が複雑なものを選ぶ傾向があるので、その作業だけを捉えると必ずしも導入効果が高くない)ですが、作業者のメンタル面にも配慮し、トータルでの作業効率アップを目指すことにより、現場での理解と評価も上がるのではないかと思います。

エラー時の処理など明確なルールを設定しておく

例えば人間であれば、データ設定の一部が未完了の場合、未完了なデータを後回しにして完了しているデータのみを対象に作業を進めるなど、高度な暗黙的なルールにて作業が行われます。しかし、ソフトウェアロボットでは暗黙的なルールと言ったものが存在しないので、データチェックやエラーが発生した場合の処理などを明確なルールとして設定をしておく必要があります。これが不十分であると、データ設定の一部が未完了であってもお構いなく作業を進めてしまい、エラー処理にて作業が止まったり、最悪の場合、無効なデータが大量に発生してしまうなどの事故が発生する場合があります。

そういった意味において、データ精度や手順順守度が高い(暗黙的なルールの適用が少ない)作業を対象にする目的で、業務の川上から川下に向かって順番にRPAの対象するといった考慮も必要となります。

RPA導入は作業品質を担保する仕組みも必要

ソフトウェアロボットによる業務の自動化を行う場合、先に述べたようにデータチェックやエラーが発生した場合の処理などを明確なルールとして設定する必要がありますが、全ての暗黙ルールを事前に明確化することができない場合が多いので、ロボットによる作業品質を担保する仕組みを検討することも重要です。

例えば、導入当初は入力対象データを事前に別のロボットにより検証を行ったり、ロボットによる入力内容を別のロボットによりベリファイを行うことなど、作業品質の担保するような作業を検討。ロボットに同作業を行わせることにより、人間の作業を増やさずにロボットによる作業品質を担保することが可能となります。

RPA導入の効果測定と評価について

実際に導入を行い、先に述べた有用性を評価するための客観的な基準と評価方法により、導入したソフトウェアロボットはどの業務に対してどの部分において適用するとどれくらいの効果が期待できるか否かの勘所が徐々に見えて来るかと思います。

評価方法にもよりますが、小さな範囲で始めるとすぐに大きな効果を生み出すのは難しいと思われますので、小さな範囲でコツコツと積み上げていく場合には、最初からあまり高いハードを設けずに少し長いスケジュールで評価することも必要かもしれません。

いずれにしろ、それらの効果情報を元にさらに適用範囲を広げていくことにより、さらに高い導入効果が得られ、現場での好循環が生まれてくればしめたものです。

その昔、製造業にて現場におけるQC改善活動を通じて「ものづくり日本」を築き上げたようにRPAによりホワイトカラーの現場力を上げることで、よりビジネス変革に強い会社を作る事ができるのではないかと確信しています。

【まとめ】働き方改革には「業務の可視化による業務改善」と「RPAによる業務の自動化」が重要

機械学習・人工知能等のRPA構成要素技術の発達により、近い将来ホワイトカラー業務の効率化・自動化が進み定型作業について人間の介在無しに業務が完結できるだけではなく、人間の判断が必要とされる非定型作業の自動化も実現されると考えられます。

オックスフォード大学の研究によると、今後おそらく10〜20年程度でアメリカの47%の雇用が自動化される潜在的な可能性があると推測されており、RPAが社会に与える影響は大きなものになると予想されているようです。

政府の働き方改革に述べられている「長時間労働の是正」と「成長と配分の好循環」を生み出す仕組みとして「業務の可視化による業務改善」と「RPAによる業務の自動化」によりホワイトカラーの生産性を上げ、強い会社を作ることが企業の取り組むべき重要なテーマの1つといえるのではないでしょうか。

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