【業務可視化の重要性】フロー型マニュアルで実現できる業務の標準化

【業務可視化の重要性】フロー型マニュアルで実現できる業務の標準化

業務のやり方がバラバラで標準化されていない状態では、提供するサービスや商品の質を不安定にさせるなど、企業にさまざまな悪影響を与えます。特定の担当者しか業務を把握できない「属人化」につながるのも、業務のやり方にバラツキがあるからです。

この記事では、業務のやり方にバラツキがある場合の事例やリスク、「業務の標準化」という考え方を解説します。また、具体的な方法としてフロー型マニュアルによる業務の可視化を紹介します。

 

職場が混乱! 業務のやり方にバラツキがある事例を紹介

小さな部署においてもAさん流・Bさん流など、人によってバラバラな方法で業務が進められることはよくあります。また、業務の進め方が上司によって変わる職場では部下も困惑してしまいがちです。ここでは業務のやり方のバラツキによって悪影響が出た事例を紹介します。

【1】業務のやり方にバラツキがある事例(営業部門)

ある企業では営業部員それぞれが顧客を囲い込むのが慣例であったため、担当者以外の社員はまったく状況が把握できない状態でした。そのため、担当者の休暇中にクレームが入ったときには誰も対応ができず、大切な顧客を失ってしまいました。

営業部門では活動報告、日報などのフォーマットが厳密に決められていないことも多くあり、こうした職場では連絡方法だけでも個人差が出やすくなります。昨今、SFAなどの導入が進んでいる背景のひとつには、ツールによってフォーマットが統一されることで、業務のやり方のバラツキが抑えられるメリットもあるからなのです。

【2】業務のやり方にバラツキがある事例(技術部門)

また、ある技術部門では、職人気質のエンジニアの退職とともに技術やノウハウが失われてしまいました。慌てた企業はそのエンジニアを再雇用しましたが、もともとマニュアル類を作成していなかったこともあり、後継者の育成につなげられませんでした。

普段から業務を可視化する習慣がないと、技術を持った本人ですら、業務内容を正確に把握できていない可能性があるのです。たとえ職人的な業務であったとしても、可能な限り業務内容をマニュアルや業務フローなどに落とし込む必要があります。

 

なぜ業務のやり方にバラツキが起きるのか?

ここでは業務のやり方にバラツキが発生する主な原因を紹介します。

【1】マニュアル化されていない/マニュアルが分かりにくい

最もよくある原因は、マニュアル類が整備されていないことです。企業の活動におけるマニュアルとは、仕事の手順やルール、対処方法などを伝えるための書類です。

手順書や処理要綱などの名称が付く文書などがマニュアルにあたります。これらが整備されていないと、表記や記入の仕方などの基本的な手順ですらバラツキが出てしまうのです。

また、マニュアルはあるのに業務のやり方のバラツキが大きい会社があります。この場合、マニュアル自体が理解しづらいものであることが疑われます。文書で長々と手順や対処法が記述されていても、なかなか理解しにくい面があります。

特に若手の教育においてこの問題がよく発生します。まだ業務のイメージもついていない状態で、文章中心のマニュアルを眺めてもなかなかスムーズに理解できないのです。ストレスばかりが溜まり、そしてその文章型のマニュアルは使われなくなります。

せっかくベテラン社員がマニュアルを作っても、若手従業員が活用できないのであればまったく意味がありません。

【2】業務が忙しすぎる/自動化・システム化が不十分

仕事の「ムリ」や「ムラ」は忙しさが原因であることも考えられます。仕事の発生量に対して、その消化量が追いつかないといった場面がその典型です。何とか消化をしようとして「ムリ」や「ムラ」が発生してしまいます。

業務が忙しすぎる原因はさまざまですが、業務システムが古かったり、システムの不備が原因となっているケースがよくあります。ペーパーレスの流れは徐々に浸透してきましたが、歴史のある企業ほど依然として紙文化が残っています。顧客からの手書きのFAXなどをパソコンで再入力するなどの作業が、ほかの業務を圧迫しているようなこともあります。

こうした場合でも、まずは業務状況の把握や業務フローなどのマニュアル作成が必要ですが、最終的にはRPAの導入やシステム更新も検討すべきといえるでしょう。

【3】人間的な側面/負の自己防衛

業務のやり方のバラツキを発生させる原因としては、「他人にできない仕事をしたい」「他人に仕事を奪われたくない」といった人間的な側面もあります。

特に、専門的な知識やノウハウで仕事をしているベテラン社員によく見られますが、安易に部下にその知識やノウハウを教えない人がいます。こうしたことは、一概に悪いと断定できないのが難しいところで、それを解消させる代わりにベテラン社員の個性やモチベーションを奪ってしまえば、かえって業績が下がるケースもあるでしょう。事前に職場の実情もリサーチしておくことが重要です。

 

業務のやり方にバラツキがある場合のデメリットやリスク

業務のバラツキによるデメリットやリスクには次のようなものがあります。

【1】トラブルに対応できない

業務にバラツキが出て「属人化」が進むと、何かトラブルがあったときにその担当者しか対処できないケースが増えてしまいます。属人化とは、特定の業務を特定の個人がすることで、違う人が業務状況を把握できなくなったり、業務を代行できなくなったりする状態です。

たとえば、担当者が離職した場合や連絡が取れないときにトラブルが発生すると、ほかの従業員ではどうしようもなくなってしまいます。それによって企業や顧客に損害が出ることもありますし、速やかにトラブルに対処できないリスクを常に抱えていることも、企業にとっては大きな問題です。

【2】業務を効率化できない

ノウハウを蓄積できないのも、業務のやり方のバラツキによるデメリットのひとつです。同じ方法やアプローチを取っていれば、成功事例と失敗事例を比較検討したり、共通の要因を分析したりすることが可能です。

しかし、業務のやり方がバラバラであれば、このように過去から学ぶことができません。そのため、現状認識や売上げ予測、経営戦略の構築なども難しくなってしまいます。

【3】品質を保証できない

業務のやり方のバラツキがあると、一定レベル以上の品質を保証することが難しくなります。この問題は工場の比較的単純な生産現場でも問題になるほどで、個人のスキルに関係する範囲が広い業務ではさらに深刻になります。

商品やサービスを提供する場合、上ではなく下のレベルに合わせて品質を保証するしかありません。そうなると企業の価値や競争力が下がってしまうことは間違いありません。

【4】多様な働き方に対応できない

働き方改革によって、多様な働き方が推進されています。今後、リモートワークやテレワーク、短時間労働など多様な働き方が拡大するでしょう。出産・育児のための長期休暇や育休明けの復職など、仕事環境への配慮も必要です。

転職もより一般的になり、従来のように長い時間をかけて社員を教育していくのも難しくなることが予想されます。業務のやり方にバラツキがあり、さらに手順や対処方法が一定でない状況下では、こうした多様な働き方や従業員の入れ替わりに対応しにくくなってしまいます。

 

業務のバラツキを改善する「業務の標準化」とは?

業務を可視化すればRPAのスムーズな導入が可能

業務効率や業務品質、安全性などを総合的に考えて、企業に合った標準的な業務手順を定めることを「業務の標準化」といいます。業務の標準化の目的は一般的に「人による業務のやり方のバラツキを抑えること」「業務効率を向上させること」「業務品質の向上および安定性を高めること」の3つです。

業務の標準化のためのプロジェクトでは、通常、最終的なアウトプットとして新たな業務マニュアルが作成されます。しかしながら、これはゴールではありません。マニュアルを作成した後に業務の実態に合わせて修正する必要も出てきます。また、業務マニュアルが浸透しない場合もあります。

従業員が業務マニュアルを順守できるような環境やシステムの整備、継続的に教育活動やマネジメントをすることも、業務の標準化を推進する担当者の重要な仕事です。

 

業務の標準化にはフローチャートでの可視化が効果的

業務を標準化する際に効果的なのは、業務内容をフローチャートで作成して可視化をすることです。このような方法で作成されたフロー型マニュアルを導入するメリットは次のとおりです。

【1】業務フローチャートなら視覚的にわかりやすい

フローチャートで業務内容を記述するメリットの1つ目は、文章に比べて明確で視覚的にわかりやすいことです。業務の流れが直感的に把握でき、記憶にも定着しやすいのがフローチャートです。

意思決定や判断に悩むような場面でも、フローチャート上で「Yes」か「No」の選択をしていけば、正しい手順や対処を取れるようになります。そのため、新人社員や業務経験の少ない派遣社員に任せられる業務が増えます。高度な業務になるほどプロセスの分割や分岐なども複雑になるでしょう。

しかし、フローチャートを作成しておけば、ほかの従業員が代行できる範囲は広がりますし、ノウハウを蓄積することにもつながります。業務フローチャートを作成することは、仕事の属人化を防ぐ手段でもあるのです。

【2】業務フローチャートなら階層化しやすい

フローチャートの2つ目のメリットは階層化しやすいことです。あるフローチャートにおいて記述された一部分を、ほかのフローチャートに詳しく記述することができます。こうすることで、上流工程と下流工程を階層化したり、組織の命令系統や部署の配置に合わせて階層化したりすることができます。

大きな企業になるほど組織が多層化される傾向がありますが、こうした関係も含めて業務内容を落とし込みやすいのもフローチャートです。たとえば、経営者や役員で構成されるトップマネジメント層は、企業活動の大枠を記したフローチャートを参照すれば全体的な流れを俯瞰できます。

部長や課長などのミドルマネジメント層は、部内の業務の流れを確認することができ、主任やリーダーなどのローマネジメント層では、現場における業務手順などの具体的な内容をフローチャートで確認しながら業務を行うことが可能です。このように組織の形態に合わせて階層化し、必要に応じて拡張していけるのも、フローチャートによる業務の標準化のメリットといえます。

 

業務フローチャートを作成する際のポイント

ポイントは熟練者に負荷をかけず効率的に伝承する仕組みづくり

ヒアリングでフローチャートを書いたり、継続的なメンテナンスを考えている場合は、専門のツール(ソフト)を導入すべき

実際に現場の業務をヒアリングして、フローチャートに落とし込んでみると分かるのですが、フローチャートの追記、削除、修正などが度々発生します。

ヒアリングした内容をフローチャートで作成した後、現場担当者に確認してもらうと、あれが違う、これが違うなどの意見が沢山出てきます。さらに初回のヒアリングでは気づけなかった業務や分岐が追加で発生し、ときに全体的なレイアウトまで変えなければならないような場面が出てきます。

これらのメンテナンス性を考えると、有償でもフローチャート作成の専用ツール(ソフト)を採用した方が、人的コストを大きく削減できますし、何度もやり直しを迫られる作成者の心理的な負担も軽減することができます。

使い捨てのフローチャートで良ければオフィスツールで十分

フローチャート自体はWordやExcelなどの図形描画ツールなどでも簡単に作成できます。確かにメンテナンス性を考えると負荷はかかりますが、一度だけ使うフローチャートであれば、たとえ修正に時間がかかっても作成者も割り切って作業ができるでしょう。無料のフリーソフトなども同様で、メンテナンス性においては力不足です。

フローチャートの書き方、ルールは事前に整備

複数人でフローチャートを書く場合は、フローチャートの書き方や作成のノウハウについて専門的な知識がある人から学んだほうがよいでしょう。

業務の分割のポイントや階層化の方法、使用する記号や粒度の揃え方などは、既存の洗練されたノウハウやルールブックを活用するほうがずっと効率的です。実はこのノウハウやルールブック自体が業務の標準化を実現しているマニュアルといえるものなので、ステップに沿って作業すれば、ある程度質の高い業務フローを作成できます。

知識なしの状態からトライアンドエラーで進める方法もありますが、後で度々記述ルールが変わった際の手戻りを考えると、それは大きなコストと心理的な負担となります。

 

業務のバラツキをなくすにはフロー型マニュアルが効果的

程度の差こそあれ、業務のやり方のバラツキに悩む企業は少なくありません。業務の効率化やノウハウの蓄積、品質の安定などのために、業務のやり方のバラツキを抑える仕組み作りは、企業にとって重要といえます。

業務のやり方のバラツキを減らすには、業務の標準化という考え方が重要です。フロー型マニュアルを活用して業務を可視化することで、標準化を推進していきましょう。

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本記事の執筆者

業務可視化NOTE 運営事務局 編集担当

業務可視化NOTE 運営事務局 編集担当 市橋